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@@の怒りのバロメーターは大体表情で把握できる。
レベル1唇を真一文字に結びじとりとした目で睨み付けてくる。レベル2は眉間にシワを寄せ「ああ!?」だの「なんだおら」だのとドスの利いた声で八重歯を剥き出しにして威嚇してくる。
ちなみにレベル3が最も高い、一番触れてはならない@@の逆鱗なのだが、

青峰はそのレベル3の@@の怒りようが殊更好きだった。




「なあ。なあってば」
「……」

@@はこちらを振り向かない。もうかれこれ30分はこのままだ。

日曜日。今日は部活が休みだ。適当にストリートバスケにでも誰か誘って繰り出すか、と携帯を開いて発信履歴を見たところ一番上から三行ほどを占める名前を見て青峰の予定は急変更された。

善は急げだ、と向かった先は@@の家。まさかの突撃お宅訪問。寝癖のついた頭によれよれのジャージで迎えた@@の青峰を見ての第一声はもちろん「帰れ」だった。
帰れ、入れろ、帰れ、入れろの押し問答がしばらく続いたのだが青峰が家入れろや!!!と近所中に響く大声で怒鳴ったためヤクザか借金取りかと勘違いしたご近所さんがなんだなんだと出てきてしまった。仕方なく@@は青峰の胸ぐらを掴んで家に引っ張り入れた。そして殴った。



「勝手にいれば。でも俺相手にしねえからな」


ギロリと青峰を睨み付ける@@は寝起きだった。青峰のインターホン連発攻撃で無理くり起こされたのだ。母が在宅であればこうはならなかっただろうが、生憎の不在。
部屋に渋々招き入れ@@はもう寝る気にならないと寝転んで雑誌を読み始める。
最初は@@の部屋を物色していた青峰だったがすぐに飽きてうつ伏せ状態の@@の腰にのし掛かって、冒頭に至る。



「おい聞いてんのかよ」
「いや全然」
「聞いてんじゃねえか!構えよおい」
「俺相手にしねえからなって言っただろ!」
「俺は客だぞ」
「勝手にきたやつがほざいてんじゃねえよ」


@@は青峰の背中目掛けて膝を折って思いきりその背を蹴った。中々に痛くて青峰は床に転がってのたうち回る。
何すんだと涙目でにらめば@@は鼻で笑って

「嫌なら帰れ」

とだけ言うとまた読書に没頭しだした。

帰る気もないし、何としてでも構ってもらう。
やる気がなくなるどころか小バカにした@@の態度に青峰は俄然やる気が出ていた。



「(触り心地だけならマイちゃんの乳に匹敵するな)」


不躾に青峰は@@の臀部を鷲掴みにしている。
揉んだり寄せたり。

バンッ!


「……」


雑誌を叩いて@@がこちらを睨んでくる。
見つめあった後へらりと青峰は笑ってまたくそ真面目な顔で尻を撫で回した。@@の蹴りが飛んでくる。


「あぶねえな!邪魔すんなよ!」
「ああ!?人のケツ触って楽しいか!?」
「めっちゃ楽しい」
「殺すぞてめえ」


あ、レベル2きたなこれ。

上半身を捻った@@は鬼のような形相で青峰を見ている。
威嚇する犬のように八重歯をむき出しにしている様から怒りレベルが2に到達したことが伺えて青峰は内心ほくそ笑む。


「次やったら絶対殺す絶対だからな」
「へーへー」
「返事は一回!!」
「へーい」
「はいだろうが!!」
「いちいちこまけえな。禿げ上がるぞ」


蹴られた。


確かな手応えに満足したのか@@は鼻を鳴らしてまた本の世界へ。
もちろん青峰が諦めるはずもない。目指すはレベル3


なぜ青峰が@@の怒りに固執するのか。それは一週間前まで遡る。


理由がなんであったかは知らないが、一週間前黄瀬が@@の逆鱗に触れた場面を青峰は見た。へたりこんだ黄瀬の肩を足で押さえ見たことのない顔で見下ろしていて青峰は戦慄した。

あの視線に見つめられたいと思ったのだ。
鋭い眼力の矛先が自分に向かったときどんな気分になるのか、青峰は身を持って知ってみたいと心底思った。
あの視線を思い出すだけで局部が熱くなる。


押さえきれない興奮を口許に浮かべながら青峰はおもむろに@@のジャージの腰部分を掴み思いきり引き下げた。あらわになった臀部に笑みが深くなる。


ガスッ!!


「あだぁ!」

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