ミドリマン!新しい眼鏡よ!
などとほざきながら@@がさくっと緑間の顔に眼鏡を装着した。ようやくまともになった視界。数回まばたきをして、ピントを合わせると不可解なものが鮮明に緑間の視界に入った。



「…何をしているのだよ、青峰は」
「待て待て緑間、呪符…イダダダ!噛むな!青峰!ゴラ!!!」
「………離れろ青峰」

今の青峰は、縁日とかでよく売っている腕と足が輪っかになっているビニールの玩具のよう。
その玩具よろしく、青峰は上機嫌で@@の背中に飛び乗り耳をかじったり襟を噛んでひっぱっている。
こちらの言い分に耳を貸そうともしない青峰にかちんときた緑間が無理やり引き剥がそうとしたのだが

ガブッ

「痛ーーーーッ!!」
「ゥヴーーー!!」
「今言葉通じないと思うから呪符」
「初めに言え!どういうことなのだよ!」

どういうこと、と聞かれたら……@@はここにくるまでの経緯を緑間に話す。
青峰の嗅覚を使い、緑間を探しに来たまではいいもののあのデカイ女に出くわしてしまったこと。それに襲われちょっとしたピンチに陥ったが、青峰が自身の血を解放したことでなんとかなり…そこへ緑間が来た。
まるで主人の危機に底力を出す狂犬のようだったと@@は頷きながら語った。



「暴走したってには、妙に大人しいとこあったから変だとは思ったんだけど」



血が活性化したにしては殺意を以て@@に襲いかかってくる素振りはなかった。
噛みつかれた手を振りながら緑間が続ける。


「まだ満月ではないからな、恐らく不完全な状態で力を解放した反動なのだよ」
「前は犬になったじゃん!俺あっちがいい!」
「お前の好みでどうにかなるものではない。前は力を使いきったからああなったのであって…今は余力を残しているから人の形を保っているんじゃないか」
「はー…全然わかんねえけどわかった」
「適当に返すんじゃねーのだよ!」
「いいから!呪符!!」
「………今使ったので最後なのだよ」


ストックは鞄の中だ。
緑間と@@は両者がっくりと肩を落とした。青峰だけが憎たらしいほどにご機嫌であった。





どんなに引き剥がそうとしても@@にしがみついて離れないので青峰をおんぶちゃんしたまま二人は教室に目指す他なかった。
紫原の次は青峰。今日は悉く重たいやつばかり乗っかってくる日である。

「重い。緑間代わって」
「断る。噛みつかれるのは嫌なのだよ」
「俺もさっきから噛まれてるけど!?」
「甘噛みの領域だ」

何が楽しいのか、青峰は主人にじゃれる犬のように@@をあちこちあぐあぐ噛みまくっている。流血するほどではないがちくちくして痛いので出来たら遠慮してほしい。
@@が大きくため息をついたそのときだ。
青峰が@@のシャツの襟に歯を突き立てた。

ビリィッ

「あ゙ーー!!服破いたァァ!!」
「なっ…!あ、青峰!やめろ!」
「ガゥゥ」

引っ張れば引っ張るほど破けていく服が面白いのか青峰は更に強く@@の襟を引っ張る。
それを止めようと緑間が青峰をまた引っ張って…結果は誰にでもわかることだった。

ビビィッ バリッ

「あーーーーっ!ちょ、あーーー!」
「お、おお……」

結果的に、青峰を引き剥がすことには成功した。
しかし青峰が離さないまま無理に引き続けたことによって@@の制服の背中は完璧に裂けた。前から見ればなんともないが、背中はむき出しの丸出しというどこの貧乏人かと見紛うクールビズ。
今日に限ってアンダーシャツも着ていない。

「お、おい!どうなってるこれ!背中どうなってる!?」
「完全に破けているのだよ」
「なんつーことしやがるアホ峰!」


ボタンを開けてもいないのに後ろ見頃がなくなってしまったシャツは@@の肩からずり落ちる。袖のついた布となってしまったシャツを目の前に翻し、@@はあーあ…と再びため息をついた。

「何故脱ぐ!」
「いや着ててもしょうがないじゃんこんなの……」
「か、風邪を引くのだよ!!」
「引かねえよ。蒸し暑ィし丁度いいことにするわクソ…」

気が気でなくなってしまったのは緑間だ。
まさか合法的に@@の裸体が拝めるなどとは思っても見なかった。
体育の着替えのときなんかに盗み見ることはしばしばあったが自分より黄瀬が身を乗り出していくのでこんな至近距離で見ることはなく、ましてや緑間だ。むっつりじゃあるまいし!そんなもの興味はない!と自分に言い聞かせ続けていた。


「(相手は男……@@…男の…**@@…!!その裸体など微塵も興味は…!!)」

ない、そう思いたくても彼の目は心より素直だった。
10代にしてはかなりいい身体をしている。率直な意見はそれ。スポーツをしていて、かつ紫原を抱えられる筋力を持てるほどに鍛えているのだ。バッキバキ…とはいわないが均整の取れた引き締まった肉体美。
緑間の瞳が、本人の意思とは裏腹にうっそりと細まった。


「かなり……作り込んでいるな……」
「まじまじ見ないでくんない」
「見てないのだよ!!!!」
「イヤー緑間さんのエッチー」
「だから!見てなど…!お前が無防備に裸体など晒すからだ!この公然猥褻物め!」
「わいせつぶつぅ!?」
「俺の気持ちも考えるのだよ!!」
「知るかボケ!!」


@@と緑間だけがなんだか楽しそう。
緑間に抑えられたままの青峰の目にはそう映っていて、@@が取られたようで気にくわない。
ご主人の注意が別にそれていたとき、狂犬が取った行動とは。

バビィッ

「あ」
「!?」


緑間のシャツも破くことだった。



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