「おっそいッスねぇ…@@っち大丈夫かなぁ…」
「@@だし、平気じゃね。そのうち峰ちんとみどちん両脇に抱えて帰ってくるっしょ」
「非常に想像しやすいですね」


一方その頃、居残り組は緑間が置いていったウノに興じていた。これを忘れたから緑間は災難に見舞われたのでは?ウノの外箱を眺めながら赤司はおは朝を自分も視聴しようかと思考しながら自分の順番を待った。自分の前の黒子が赤の4を出す。

青の4を出す。あと一枚。


「赤司っちウノって言ってないー!!はいお手つきー!!」
「いや今から言おうとしていた」
「もう遅いですよ」
「赤ちんざんねーん」
「……いいだろう。その挑発に乗ってやる。全員覚えておけよ」
「「「(やべ)」」」


赤司はおとなしくお手つき分の札を山札から引いた。顔は笑っているが、額から赤い角が見えている。


「……青峰っちと@@っち、なんもないッスよね」

青の7。


「はぁ〜?どういう意味それ〜えーと…緑」

ワイルド。


「青峰くんにそんな度胸ありませんよ」

緑ドローツー。


「しかし大輝の爆発力は時々予想外だからね。…赤だ」

ワイルドドローフォー。からの赤。


「げっ」
「さあ涼太。6枚引け」
「あぅぅ…どんどん増えてっちゃうじゃないスか…」


どんどん手札富豪になっていく黄瀬。誂えたように赤司は自分の持っていない色ばかり指定してくる。

「張り合いがないな。優勝者には賞品でもつけようか。例えば…テツヤが持っている@@の隠し撮り写真とかね」
「ハァァ!?黒子っちそんなの持ってるの!?写真は俺通してほしいッス!」
「黄瀬ちん通す必要ねーし」
「そういったものは持っていません」
「敦が@@の幼少期の写真を所持していることも、涼太が体操着の写真を持っていることも知っているよ」

黄瀬と紫原が自分の携帯機器を服越しにぎゅっと握った。誰にもいっていないはずなのになんで知ってるんだこのチート野郎。

「何、とはいわないが僕もまあ持っている。……優勝者は問答無用でそれを総取りだ」

「「「乗った」」」






「おおおおおおああああ!!!」
「青峰うるせーよ!黙って走れねーのか!」

居残り組がアホらしいことでウノで白熱していることなど露知らず。@@と青峰は長い長い廊下を全力で走っていた。


「なんでこんな廊下なげーんだよ!おかしいだろ!」
「あいつらが地形変えてんだよ!察しろ!」
「察せるかんなことぉぉああ!!」


ようやく出てきた角を曲がったところで問題は起きた。なんと、曲がってすぐに壁がある。完全な行き止まりだ。
ビタビタビタ!!と天井を蜘蛛のように這いずってくる音が、もうすぐそこまで来ているというのに。


「うっそだろおい!!」
「下がれ!青峰!!」


@@が青峰の襟を背後に引っ張り自分が前へ躍り出る。猛スピードで迫ってきたそれが天井から飛びかかってくるタイミングでそれは見事なローリングソバットをかました@@だが、相手が重すぎたか大したダメージは通っていないように見受けられた。


「青峰、俺があいつなんとかするから脇通り抜けて来た道戻れ」
「あぁ!?バカ言ってんじゃねーよ!お前どうすんだよ!」
「わかんねーやつだな!俺が止めるんだからここに残らなきゃ…っぉおう!?」
「あだっ!」


女が関節がいくつもある長く奇妙な腕を伸ばしてきた。鞭のようにしなるそれを咄嗟に青峰を突き飛ばして避けさせたが@@の首が捕まれている。女の人差し指と中指だけで@@の首が覆われていた。


「行けよ…!俺もすぐ行くから!!」
「それ死亡フラグだろうが!!」
「俺……この戦いが終わったら結婚するんだ…」
「誰と!!じゃねえ!だから立てんな!フラグを!!」
「いいから!!!」



「早く行け!!!!」

@@があらん限りの声で叫んだ。
いくつもフラグを立てておいて、飄々としているがこの場で置いていったら本当に@@は死んでしまうんじゃないのか。
今この場で迷っているのはただの足手まといにしかならないんだろう。でも、情けないじゃないか。毎度毎度守られてばかりなんて。


赤司だったら眼光1つで相手を退けただろうか、緑間だったらあの紙っぺらで撃退したのか、黄瀬も、黒子も戦える。紫原だって…………


いいや他の誰でもない。自分が、@@を助けたい。





「………あいつらに出来て、

俺に出来ねえことなんかねえよ!」


その時青峰の瞳がゾーンに入ったときと同じく青い光が尾を引いて現れた。
いつかの感覚がすべて甦る。歯が痒い、指先が燃えるように熱い。血が沸騰するようだ。
でも、今なら何でも出来る気がする。
ぶっ殺してやる、そう呟いた喉の奥から唸り声がした。

ズドン!!


一瞬で、女の巨体が横に吹っ飛んだ。
拘束を逃れた@@は、すぐに体制を立て直し女を見る。

「青峰…!?」


獰猛な色で瞳を輝かせる青峰が、牙をむき出しにして女に襲いかかり、殴って切り裂いてを繰り返している。
女は長い腕で青峰を弾き飛ばそうとしたが、逆に青峰がその腕に噛みつきいとも簡単に噛み千切ってしまった。
青峰が唸ると、女は捻れた首をかくかく動かしながら後退りする。

「ぺっ」

もぎ取られてなおじたばた動く腕を吐き捨て、青峰が尖った牙を見せつけながらねっとりと笑っている。返り血をめちゃめちゃに浴びているのに拭うことすらしない。人の理性をほぼ失っているのは目に見えてわかった。

とんでもなく強いのは助かるが、@@の脳裏にはいつかの悪夢がリフレインし、大きく舌を打った。


「青峰落ち着け!今度こそ戻ってこれなくなる!!」
「グルルルル……!!」
「待て!ステイ!!おすわり!ちんちん!!」
「ガルルルルル!!!!」
「あーうそうそ!ふざけないから待っ……お、おぉう…」


自然と言葉の勢いが失われる。
青峰が両手で女を頭上に持ち上げているではないか。
@@は青ざめる。え…?それどうすんの?どう考えてもそれ投げる気だよね?どこに?こっち見ないでほしい。

大きく青峰が腕を振りかぶり、女を@@の後ろの壁にぶん投げた。女の巨体が強かにぶつかり、壁が音を立てて崩落した。破片が四散し頭上に降り注ぐ。



「あぶねーなぁぁぁ!!てめー!助けてやった恩も忘れやがって!!」
「………」
「聞いてんのか!!!」

青峰は何故か突然静かになった。目を見開いて、唇を引き結びじっと@@を見ている。
不気味だ。@@は何故か、寒気を覚える。



「何をしているのだよ」


@@が自分の腕を抱いたとき、背後から明かりもないもに光が迸り巨大な風船が破裂するような音が廊下に響いた。


「あ、緑間」
「巨大な妖気があると思えば…何だこれは」



崩壊した壁の向こう側に緑間が左手を構えた状態で立っていた。女の姿がない。
十中八九、その構えた手で放った呪符でお陀仏にさせられたのだろう。ちょっと手こずったのに…緑間はワンタッチとは。@@は少し自身をなくしそうであった。


「はあ……おめーのせいで散々だよ…」
「む。何故俺のせいなのだよ。こっちこそ置いてかれて散々な目に遭った」
「おい誰に話してんだそりゃ壁だ。あーそうだ眼鏡……」

拾った眼鏡をポケットから取り出そうと中をまさぐる。このまま壁とお友達になられてまたいなくなられてはたまらない。
少し体を捻ったとき、斜め後ろに 影があった。


「あ、やべあおみ、」


ズン!!


腹部に流星でも突っ込んできたのかという衝撃。
ひでぶ!と瞬殺された雑魚敵のような声をあげて@@がすっ飛んでいったが、壁を@@と思っている緑間は気づいていない。


「ぶほっ…いでぇ…!わ、忘れてた!落ち着け青峰!わかるか!?俺だってば!」
「……ゥゥウ……」


廊下を滑りながら押し倒され、上にのし掛かってくる青峰の肩を押すが突っ込まれた腹部が猛烈に痛くて中々押し戻すほどの力が出ない。



「ちょ…緑間ァーーーーーッ!!!!」


噛まれたら穴だらけになるだろう牙がどんどん迫ってくる。顔面傷だらけにされる!!





べろり


@@の唇より舌3センチほど少しそれた場所から、目元まで何かなまあたたかーい物がぬるりと滑った。はっは、と犬のような短い呼吸がすぐそばから聞こえてくる。



……ええ?


「な、なんなのだよ!何事…!痛ッ!」


緑間が壁にぶつかっているのはこの際置いておく。
しかし……なんだ、この…まるで犬のように舌を出して目をキラキラさせている上の男は…。




「わん!!!」
「………はあ…?」



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覚醒はロマンだと思います

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