「だがら…っ!むり、だっで、言ったじゃないスがぁっ…!!」
「わかったから泣くなよ…ほら手繋いでやっから…」
「ゔん゙……」


ごちゃごちゃの段ボールを掻き分け、7人はなんとか食料以外の物資を引っ張り出して倉庫の外へ脱出した。
黄瀬はさっきから泣いている。見かねた@@が差し出した手を握りしめているのだがちゃっかり恋人繋ぎで握る辺りボロボロでも黄瀬は黄瀬だ。その様子が不服でないといえば嘘になるがあまりにも怖がるので全員が黄瀬にちょっぴり同情していた。




「しっかし…面倒なことになったぞこれ」




そこにいる誰もが@@の言葉の意味を理解していた。倉庫の外は中に入る前とまるで別次元のような感覚がする。四方八方から気配がするし、大勢がボソボソ囁くような声も聞こえてくる。


「大分呼んだな」


赤司が呟きながら廊下の角を睨む。黒いものが蠢いていたが向こうもこの赤鬼は怖いらしくさっと暗闇へ隠れていった。黄瀬がより一層震え上がる。


「@@っち絶対手離さないで!ずっと握ってて!この先一生!!」
「いやなげーよ」
「これは紫原君のせい…ってことでいいんでしょうか」
「えー俺のせいなの」
「平たく言えばな。敦はまだ自分の力の強さを理解していない」


元々色々と呼び寄せやすい紫原。先の貘の一件を受け彼は自身のリミッターを取っ払ったのだが、如何せんまだ使い方がわかっていない。
感情が昂れば昂るほど暴走してしまうので、出来れば避けたいと@@は前もって赤司と緑間には話しておいたのだ。だからこそ二人も紫原の奔放さを許し、今日だけは敢えて黙っていた。


「あ、だから@@っち紫原っちに優しかったの?」
「そーいうことー。そもそも学校っつーのはさ、集まりやすいんだよ。人多いし」
「集まりやすいって…何がだよ」
「え?ここまでいってわかんないの青峰。歌でもあるだろ。あいつら墓場で運動会すんだぞ。学校でだって運動会するわ」


青峰の脳裏で某妖怪アニメのワンフレーズが流れた。青ざめた青峰を見て、横にいた黒子がボソッと呟く。父さん妖気です。

「やめろや!!」


「夜は殊更集まりやすい。紫原がしたことは例えるなら猛獣だらけの密林のど真ん中で叫びながらシンバルを打ち鳴らすのと同等の行為なのだよ」
「そして今僕らはその猛獣に狙われる獲物、ということになるね」


赤司が獲物なんていうタマか。全員の思考が一致したが口に出す勇気がある者はいない。そうこうしている間に、辺りの声の音量がどんどん大きくなってきている。
笑い声、啜り泣き、唸り声。誰がどう聞いても異常だった。


「とにかく、今は上に戻ろう。固まっていては格好の的だ」


その場は赤司の意見に満場一致となった。





「黄瀬ェ、お前いつまで@@の手握ってんだよ。ビビりすぎなんじゃねーの」
「言っとくけど!!これは@@っちのほうからさせてくれてんスよ!青峰っちにとやかく言われる筋合いないッス!」
「個人的に気にくわないのでそろそろ離してほしいです」
「ちょ…!やめて!@@っちー!!黒子っちがぁー!!」
「イテェ!!手引っ張んな取れる!!」
「取れたら俺にちょうだいねー」


バスケ部の我慢は教室に戻るまで続かなかった。押し合いへし合いながら@@の手を黄瀬からはずそうと引っ張るのだが黄瀬が粘る粘る。

「ちょ、赤司!おい!なんとかしろこれ!」
「僕も参加するから少し待て」
「お前もやれとは言ってな…!!え、何?」


赤司が少々深刻そうな顔でこちらを見て、一人一人順々に指を指している。

「テツヤ」
「はい、僕です」
「大輝」
「あんだよ、今忙しいんだよ」
「涼太」
「なんスか!取り込み中ッス!あだだ!」
「敦」
「赤ちんでも@@の手はあげないからね」
「@@」
「だから何!」



1、2、3、4、5、…自分を入れて6。何度数えてみても6。おかしいぞ。
今度は1人足りないではないか。



「真太郎がいない」






緑間はいつもの癖で鼻梁にあるはずの眼鏡のブリッジをあげる動作をしたが当然そこには何もない。視界は最悪の一言に尽きる。
目の前にいたいつもの集団についてきたつもりだったが、あまりにも見えないのでいつの間にか「別の集団」についてきてしまったらしい。
自分を取り囲む何かに呪符を投げつけ黙らせるのはいいが、

「俺としたことが……」


しくじったのだよ。
4
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