黄瀬と青峰の雄叫びに黒子がうんざりしながらなんとか倉庫にたどり着く。
倉庫の中のうず高く積まれた段ボールには非常用物資のラベル。これで紫原もまともになるし、空腹も満たせると@@は胸を撫で下ろす。

「敦、お菓子って乾パンじゃダメか」
「甘いのそれ……………」
「さあ…………………ん?」


「うえーっ、寝袋埃っぽくないスかこれ〜」
「寝れりゃなんでもいいだろ」
「真太郎、水はそっちにあるか」
「いや、見当たらん」
「水ならこっちにありますよ」


「あーーーーーーっ!!!!」


各々必要なものをかき集めていたところで、@@が大声を上げた。黄瀬と青峰が地面から数センチ浮いた。弾かれたように赤司と緑間と黒子が段ボールを飛び越えていく。
行った先では紫原に凭れかかられている@@が乾パンの缶片手に青い顔。


「どうした!」
「やばい」
「何がなのだよ」


「食うやつ………全部賞味期限3年過ぎてる……」







大問題が起きた。
安泰かと思っていた食料がもののみごとに期限を3年もオーバーしていたのである。段ボールを粗方ひっくり返してみたが全滅であった。

「これは…予想外だったな」
「さすがに3年は無理なのだよ」
「青峰っちは平気そうッスけどね」
「どういう意味だてめー」


これ食って腹壊されても……。@@は無情にもしかと刻まれた3年前の日付を見おろし、隣の紫原を見た。下を向いている。


「………@@」
「…なに」
「ご飯は」
「えーーーと………」
「おなかすいた」
「わかってる……」

下を向いたままの紫原は拳を握り締め、ぶるぶると震えだしている。
やばい、@@は直感した。


「あ、敦!待っ…!!」
「もーーーーーやだーー!!お腹空いたーーーーー!!!お菓子食べたいーーーーー!!!!」


ついに紫原の我慢が限界に達した。
大怪獣の咆哮のような大声とともに、頭上の蛍光灯が激しく点滅し始め地震でもないのに辺りの段ボールがガタガタ音を立て左右に揺れ床へ落ちていく。
紫原が声を張り上げれば張り上げるほどどこからか風が入ってきて、おかしな耳鳴りがする。


「えっ!?えっ!何スかこれ!怖!!無理!やだーーー!!」
「黒子!ドアを閉めろ!入ってくるのだよ!」
「入ってくるって…!」


訳はわからないが、ここは緑間に従っておくのが最良の選択と判断し黒子は急いで倉庫のドアへ駆け寄る。
しかしそれをさせまいとでもするように段ボールが揺れ、黒子の頭上に影を落とした。


「テツ!!」
「だ、大丈夫です……」


驚きはしたが黒子は背後から伸びる黒い手で段ボールたちを抑え、また別の手がドアを閉めたことで風がふっと止んだ。しかし耳鳴りは収まらないし揺れも続いている。

「おなかすいたああああ!!!!」
「落ち着け敦!いい子だから!頼むからァー!」
「お菓子食べたいいいいいい!!」


何かないか何かないかと、@@は自分のポケットの中身をひっくり返す。ティッシュ、レシート、何故かビー玉、ピンクのビニールの包み……

これだ!!

「敦!」
「もごっ」


即座にそのビニールの封を破り、紫原の口めがけ突っ込んだ瞬間、蛍光灯が破裂し辺りが完全な暗闇に包まれた。


「全員動くな!!」




赤司の言葉を最後に全ての音が止んだ。









「飴だ〜やった〜」


イチゴ味〜などと紫原ののんびりした声が聞こえてきて@@は安堵と疲れをどっと感じがっくりと肩を落とした。


「もう敦は平気のようだね。全員無事か?」
「眼鏡を落としたのだよ……」
「もう無理……無理っす…立てない……」
「大丈夫」
「青峰くん。しがみつかないでください」
「なんだよこれテツかよ!@@はどこだ!」
「@@飴持ってんなら早くくれればよかったのに」
「……………おい待て」



「8人いる」



黄瀬のあと喋った奴誰だ。





「………え?この横にいるの@@っちじゃないの…?」
「俺多分黄瀬の前あたりにいる」
「じゃあ赤司っち…?」
「いや、僕でもないな」


じゃあこの…横に確かにある存在感は一体誰のものなの。
黄瀬は恐る恐る手のひらにぽっと青白い狐火を灯す。
目の前には@@、紫原、赤司、緑間、黒子、青峰が並んでいる。全員目の前にいる。
しかしすぐ隣から確かに息遣いを感じるのだ。
ゆっくり、ゆっくりと黄瀬は隣へ首を向ける。

見知らぬ誰かがそこにいた。鼻より上を闇に覆われたそれは半月状に口元を歪め、


消えた。


「▲■└&◎*※*◎└%■ーーーー!!」
「オブゥッ!!」


そういう類いのものは一番怖がる者のところへ寄っていくものだ。
真っ向から見てしまった黄瀬は声にならない悲鳴をあげて、@@に死に物狂いで突っ込んでめちゃめちゃにしがみついた。

「ちょっと、何黄瀬ちん」
「%└◎◎▲!?◎▲&%!!??!?」
「日本語喋ってほしいんだけど」
「み、みぞっ…みぞおちっ……!入っ…!!」


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