「はっくし!!」
「やだなに風邪?うつすなよマジで」
「心配とかねえわけお前」
「俺が心配」
「死ね」
「死なない。えーと、チョコバナナ生クリームひとつ」


かしこまりましたーという男の店員が車のなかでクレープを焼き出す。
香ばしいにおいのもとを涎を垂らす勢いで眺める@@の頭を花宮が殴った。今日も女装である。むしろ、今日こそ女装でなければならない。


「480円…あ、カップル割りで400円ですー」
「わーい。やったねカノジョー」
「くそが……」
「(変なカップルだなー…)ありがとうございましたー」



カップルとはお得である。
映画館、携帯料金、世の中は結ばれている二人を暖かく見守り色々尽くしてくれる。@@も今、その恩恵にあやかっていた。まやかしではあるが。


「いらねーの?」
「そんな甘いのいらねえよ」
「残念だなカカオ百パーとか人間の食いもんじゃねえのは置いてねえってさ」
「つかなんだよこれ!遊ぶために俺はこんなカッコしてるわけじゃねえんだぞバァカ!!」
「腹が減っては戦は出来ぬとかなんとか」
「戦する気あんの?なあ」
「カリカリすんなよ、糖分取れ糖分」


@@は花宮の口許に生クリームがふんだんに使われたクレープを押し付けた。唇にべちゃりと当たるまで押し付けられては食わないわけにもいかず、無遠慮に大きな一口でクレープをむしりとっていった。

「うぉげ、あま…」
「うわーーーー!!てめ、食いすぎなんだよ!」
「ふはっ、その顔マジ受ける」
「くっそうまかったかオイ俺のクレープはうまかっただろ畜生」
「くそ甘い」

一つのクレープを二人で分け合う若いカップル。
端から見た二人はその一言に尽きるだろう。


ズガン!!!


「な、なんだ!!」
「…地震か?」


ーーーーーと、その二人の空気をぶち壊すように響いた轟音。
二人以外にも歩行者たちが何事かと辺りを見渡しているが、別段地面が断続的に揺れているわけでも何か大きなものが落下したような形跡もない。





ただ、壁を殴っただけだ。



「誰か大輝と敦を押さえてくれ」
「止めんな赤司ィイイ!!あの野郎ォオオ!!」
「@@にお菓子あーんされていいの俺だけだし!なんなわけ!!」


青峰と紫原が。

急遽編成されたデバガメ隊は満月が近いということで五感が冴え渡っている青峰の鼻を使い、恐ろしい早さで@@の居場所を突き止めていた。
建物の影からその様子をこっそりと見張っていれば、畜生!うらやましい!妬ましい!!そう思わざるを得ないやり取りを見せつけられる。


「何年何組の女子ッスかあれはァ…!!」
「遠くてよく見えないのだよ」
「赤司くん殴り込みましょう。今すぐ。今すぐにです」
「焦るなテツヤ。今あの女をどう完膚なきまでに叩きのめすか考えてる」


不幸中の幸いと呼ぶべきか、6人がいる位置から花宮は背を向けているので顔までは確認出来ていないようだった。しかし花宮の肩越しに楽しそうな@@の顔は見えるもんだから何故隣にいるのが自分じゃない…!と怒りは上昇の一途を辿っている。



「!…移動するみたいです」
「追うぞ…あ、おい大輝!敦!」
「しゃらくせえ!あいつの頭ぶん殴って目覚まさせてやる!」
「どーせ目的は@@連れ戻すことだし。やり方なんかどうでもいいじゃん」


一旦頭に血が昇ると手がつけられない二人は大股で移動を始めた二人目掛け走っていく。それに触発され、黄瀬も黒子も走り出してしまった。これでは見つかるのも時間の問題である。
赤司は額に手を当て、小さくため息をつくと緑間と共に四人を足早に追いかけていった。
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