「見つかんねえじゃねえか!!」


@@は夜空に向かって吼え、地団駄を踏んだ。
探せども探せども、花宮を夜道に一人にしたりしてもそれらしき影は見当たりやしない。(命知らずの男に何度かナンパはされていたが)
一番報われないのは花宮だ。恥を偲んでこんな格好までしているというのに振り回されてばかりで結果が出ないのだから。



「こんなやり方で見つかったら警察いらねえよ…!!」
「警察より役立つ男、それが俺」
「見つかってねえんだから役立たずだバカ」
「うるせえ女装男」
「誰のせいだァァァッ!!!」


胸ぐらを掴んで花宮が凄んでみても@@はまったく動じない。
涼しい顔でまあまあとか言うだけだ。これが一般人なら顔を真っ青にして謝り倒してくるというのに。どんな生き方してきたらこんなに肝の座りかたが出来るのか、花宮は甚だ疑問であった。ちょっとプライドが傷つく。

短くため息をついて手を離せば「ありゃもう終わり?」とまで言ってくる始末。もう怒るのも面倒だった。


「解散…もう今日は解散でいいだろ…」
「まだ見つかってねえ」
「どーせ見つかんねえよ」
「諦めるのが早いな現代っ子は!悔しくねえのか!」
「お前も現代っ子だろ。悔しいのなんかてめえだけだっつの」
「犯人扱いされるほうが悔しいと思うんだけど」
「もう慣れた」


素行が危ないから。言動が攻撃的だから。
化け物だから。

そんなことで後ろ指さされて距離を置かれるのなんかしょっちゅうだ。
悔しいとか悲しいとかそのたびに思ってたらキリがない。


「これでも学校じゃ優等生で通ってんだよ。いざとなりゃ教師でも親でも勝手に俺のこと守ってくれる」
「エイプリルフールは終わってるぞ」
「嘘じゃない」


@@の軽口に花宮は万人受けする穏やかな微笑みで返した。
この笑顔で教師をおだてて優秀な成績さえ取っておけば「未来ある誠実な若者」と勝手に解釈してくれる。「花宮がそんなことするわけがない」「うちの真は優秀なんだから」聞きあきた。

だからいいんだ、一部がどう思ってようが。







「キモい!!!!!」
「てめっ…」
「キモい!!!!」
「二回も言うな!!」
「大事なことだから…キモい」
「三回目…!!」


あれだけ脅しても眉ひとつ動かさなかったくせに今の@@は全身に鳥肌を立たせて怯えた顔で花宮を見ている。


「眉毛もキモいし言ってることもキモい…まずその笑った顔がだめだ」
「眉毛関係ねえ!」
「地べたにデコ擦り付けて謝れとか言ってくるやつの顔じゃない…生理的に無理」
「へえ…じゃあこの顔か?てめえはこの顔で地べたに跪いて謝れって言ってほしいのか?謝れ」
「ああうんその顔の方がいい」


@@はあっさりと頷いた。
頷かれたことによって花宮の顔はポカンとしているが、その一瞬前までは猛禽のような鋭い視線と歪んだ笑顔であった。万人受けするはずもないそれ。


「なに…お前マゾなの?」
「女の子にならそういうのもありだけど女装じゃな…」
「離れろ。そこから」
「まあまず無理だから。今更そういう顔すんのやめてね。疲れるでしょ」



「疲れるでしょ?」と@@は言葉に疑問符は付けなかった。


(考えたことなかった)


取り繕うのが当たり前。お膳立てしておけば勝手に進んでいく人生。
気に入らないなら陥れて、本性がバレて騒がれても大衆は自分の味方。
騙すだけの生き方に疲れなんてーーーー



「………疲れた」
「そうか。んじゃ仕方ねえ今日は帰るか!」
「帰んのダリィ」
「じゃ路上で寝ろ。じゃーねー」
「てめえ最低だな!」
「お前と一緒だよ」



振り返った@@の顔は精悍とか誠実とかとはかけ離れた悪ガキのような笑みだったが、安心した理由は同族である花宮しか知らない。



悪ガキ同盟

(朝まで付き合えよ@@。明日学校なんて行かなくていいじゃん)
(花宮と違って僕は優等生じゃないのでサボると怒られますぅ)
(俺が口聞いてやるよ)
(えっマジで?)



女装とか私の趣味すぎてすいません
5
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