「はーなみーやてぇーんぱぁーい」


イラァッ


やっぱ学校なんか来なきゃよかった、と花宮は猛烈に後悔した。
同じクラスの原がおい、花宮呼ばれてるとくちゃくちゃガムを噛みながらにたにた笑いかけてくる。
二年の教室に一年がいるだけでも注目されるというのに、その人物は学校じゃ有名なキセキの世代を手懐けているとか調教してるだとか専らの噂になっている@@。どんな関係なんだといやでも花宮にちらほら好奇の視線が集まっている。


「知らねえよあんなの」
「めっちゃ呼んでっけど」
「花宮ーおい麿眉ーまろちゃーん」
「…!…!」
「花宮、血管切れそう」
「麿宮せんぱーーーーい!その眉毛毎日セットしてるってほんとですかーーーー!!」
「地毛だよ黙れクソバカヤロウ!!」


我慢しきれず殴りかかった。
結構本気で殴りかかったのだが@@は花宮の拳をあっさり受け止める。やっと来たなあ、と@@は何食わぬ顔で言って盛り上がったブレザーのポケットからブツを取り出す。


「はい昨日のお詫び」
「俺は…!トマトジュース好きじゃねえって…!言ったよな…!」
「それしか思い付かんかった。喜べ天下のバ●リースだぞ。俺はオレンジのほうが好きだけど」
「ならオレンジ持ってこいよ!」
「じゃあオレンジも買ってあげるから俺の話聞かない?」
「ハァ?」


言いながらトマトジュースを押し付けてくる@@の顔はわらっていたのに、浮かぶ青筋のせいで背筋が粟立った。





誰もこないから、で話し合いによく使うのはやっぱり屋上だった。
眼下で行われている体育の授業の準備運動の号令を聞きながら花宮はトマトジュースのプルタブを引き上げた。


「話ってなんだよ」
「結局飲むんだ」
「うるせえな!早く!本題!!」
「カリカリすんなよ〜かわいい眉毛が台無しだぞ〜」
「トマトジュースのかわりにてめえの血飲み干してやろうか」


ぎらりと花宮の吸血歯が光ったところで@@ははいはい、と切り出す。



「花宮さ、大分正体バレてるけど」
「…知ってるよ」
「そうなの?」


普段妖気は隠せても花宮はどうしても生まれつきの長い歯が隠しきれなかった。妖気を抑えることで若干短くはなるのだが、わかるものにはわかってしまうらしく赤司に「目立ったことはしないほうがいい」と言われた覚えもあった。

@@はんーと唸りながらバツの悪そうな顔で頬をかく。



「さっきさあ、同じクラスのやつに花宮って知ってるって聞いたんだけど」






『あいつには近付くな』
『え?なんで』

開口一番の緑間の言葉はそれだった。
花宮の名前を聞いた途端緑間はしかめっ面になり、黄瀬はうげえと舌をみせてきた。

『あの人なんていうか危険なんスよねー…悪童とか言われてるし。っていうかあの人、最近の通り魔事件の犯人って噂ッスよ』
『はあ?んなバカな』
『関わる必要はない。しかし忠告はしておくのだよ。あいつは吸血鬼だ』



それも知ってるけど、と言いかけて@@は口をつぐむ。
そこで今さらだったが@@は思い出したのだ。あのニュースを。
ニュースの内容と自分がやられた行為はまるっきり同じ。もしかしなくてもあれが犯人だったんじゃないか?


『やり口が思いっきり吸血鬼だし、あの人ならやりかねないッス…それより@@っち、その首のやつどうしたんスか?』
『蚊に刺された』
『そんなデカイ蚊がいてたまるか』


隠そうとしたときには時既に遅し。椅子から立ち上がった緑間が@@の首に張ってあった大きい絆創膏を剥がしてしまったのだ。
露になる傷ついた肌。くっきりと残った汚い歯形に勘のよすぎる緑間は即座に気付いてしまった。


『@@お前っ…!まさか噛まれたんじゃ…!』
『違います吸血鬼違いだったんです、彼は潔白ではないかと思い、あれ俺は何が言いたいんだ?』
『もしもし黒子っちッスか、至急赤司っちに言って人集めてほしいッス。@@っちの危機ッス』
《わかりました連絡網まわします》
『うぉあバカやめろ!なんだその迅速な対応!!』






このままでは花宮が危ない、判断した@@は即座に教室を脱し二年の教室まで行って花宮を拉致した。
話を聞くなり花宮はじょじょに青ざめていく。


「ばっ…おま…なんてことを…」

花宮の手から缶が滑り落ちた。
花宮が@@を噛んだなんて濡れ衣を着せられたらもう明日の朝日は拝めそうにない。キセキの世代が総出で花宮をハントしにかかるのは火を見るより明らかだった。


「いやあの、ごめんね?ちゃんと俺も弁明するから…」
「ごめんで済んだらサツいらねえよ…!」
「あのあの!ここで本題なの実は!聞いてマジで!!」


「身の潔白証明するために、俺とお前で犯人捕まえねえか」


@@もある意味必死だった。不可抗力とはいえ花宮を巻き込んでしまい、このままいけば大戦争が起こる…なんとしてもそれは避けたい。


「犯人だァ…?」
「昨日のやつこの辺うろついてるみたいだし、探せばまた出てきそうかなって思うわけよ」
「捕まえられる見込みがねえだろうが」
「でも見つけないと俺もお前も色々ヤバい」


花宮の脳裏に恐怖の赤鬼を筆頭とした化物軍団が群れをなす光景がよぎってきた。身震いする。


「何より俺が腹立ってる。あの野郎この俺を傷物にするとはいい度胸だ…」
「そっちが真の狙いだろ」
「まあな!」




自分の鬱憤を晴らすのでいっぱいな@@と手を組むのは癪すぎたが、@@という盾がいないと弁解する前にキセキの世代にやられそうだ。
藁にでもすがらないとやっていられない、くそ、と毒づきながら花宮は嫌々頷くのであった。



レッツゴー仇討ち

(ここに特別捜査隊を結成する!)
(何でノリノリなんだよ)
(俺隊長な)
(ふざけんな絶対ダメだ)
3
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