《次のニュースです。昨夜未明、**市内で同一犯の犯行と思われる通り魔の事件が発生しました。人通りの少ない道で背後から腕、首などを噛まれ中には所持品を奪われた、という事例もあるため地元の警察は傷害と強盗で捜査を進めるとともに付近住民に注意を呼び掛けています》

「ええー…地元ォーゥ…」
「ほんとだー」


紫原を交えて登校前の朝食をとっている最中であった。たまたまつけていたおは朝のニュースキャスターがそんなニュースを流し始めたのは。
画面には生々しく道に残る血痕を鑑識らが撮影している場面が写っている。野次馬がちらほら見えるその現場は@@もよく使っている道。
ご飯に盛られた明太子と血の色が被って胸くそ悪くなるが、食欲は偉大である。おいしい。


「あんたらも気を付けなさいよねー」
「母ちゃんこそ気いつけろよ」
「バカ言うんじゃないよ。パンピーにこの母ちゃんが背後取らせると思うてか」
「だよねー。敦も気を付けろよ」
「んーやられる前にやるしー」
「だよねー」


その時はまるで他人事だった。暗いニュースをぶち破るむちゃくちゃなおは朝占いが流れたことで全て記憶の彼方に吹き飛んでいくくらいに興味がなかったのだ。


「@@今日最下位じゃん」
「くそ…また蟹座一位かよ…」


あの瞬間までは。




殺意が沸くというのは唐突だ。何気ない瞬間に放たれた言葉に触発されたり、許容範囲外の行動に不信感を覚えたときライターの火がぽっと点るように最初は小さく、あとから次第に大きく膨れ上がる。
@@はまず自分の状況を理解した。部活の後片付けの当番が自分にまわってきてブツクサ言いながら終わらせて、すっかり暗くなった道を一人で歩いていたはず。バスケ部は適当に撒いた。一人で帰りたい気分だった。
電球がきれかけてバチバチ音を鳴らす街頭に照らされる十字路に差し掛かったとき、すぐ側の曲がり角から人影が突然出てきて接触しかけた。
彼にしては珍しく「あ、さーせん」とあまり感情はこもっていなかったが詫びは入れたつもりだった。だというのに、


ガブッ



通りすぎようとした@@の首に突き刺さる痛みが走った。
あまりの唐突さに痛いとも声が出せず、@@は無言のまま瞳をしばたいた。
つう、と首を伝う液体の感触でようやく現実に引き戻される。

ゆっくりと痛みの根元に顔を向ければ確かに、噛まれている。
白く鋭い歯が己の首に刺さっているのだろうが、角度が角度なのでよく見えない。だが首にかかる生温い息と荒い鼻息でわかってしまうのだ、噛まれてるなあ、と。


その瞬間、@@の中で殺意の炎が爆発炎上。



「な、に、を、…してんだオラァアアアアアアア!!!!!」


十人中十人が竦み上がるような声と顔で@@は吠えた。
フードを目深に被った影も例に漏れずひっと小さく声をあげて@@からすぐさま距離を取る。ぬめる首筋を荒々しく拭いながらズン!と足音を響かせて影へ@@はにじりよる。


「誰に、何を、したのか、わかってんだろうなァァ…!」
「…っ!」
「待てやゴラァアア!!逃がさねえぞぉおお!!!」


弾かれたように影は走り出した。捕まったら死ぬ、影の脳裏にはすでに走馬灯が走っていた。
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