結局、いい打開策は浮かんでこなかった。失うものは色々あったが、得たものがないと@@は肩を落としながら帰路についていた。
隣には青峰がいる。他の面子は道が違うので別れたばかりだった。


「やっぱ青峰はその頭の方がいいな…」
「やりたくてやったわけじゃねえよ」
「なんか考えんのだるくなってきたわ…」


ここまで紫原のことで悩んだことはなかった。
今までそばにいるのが当たり前で、喧嘩らしい喧嘩はしたことがなかっただけに余計思考がこんがらがってしまう。
お互いの意見をNOと言ったことはなかったのだ。


「俺はさつきと喧嘩なんてしょっちゅうだったけどな」
「幼馴染み自慢かてめえしばくぞ」
「ちっげーーよ!!」
「あーいいよなあ、喧嘩しても桃井サンに謝られたら俺が土下座して謝ってもらったことを謝り倒す」
「俺あいつから謝られたことねえぞ」
「嘘つくな」
「嘘じゃねえよ」


あいつあれで強情っぱりだから、と青峰は付け加えた。
@@はなんだか想像が出来ない。


「まあ相手が青峰じゃしょうがないよねー」
「そういうことじゃねえよ!あいつは自分が悪くたって俺が謝るの待ってんだよ」
「桃井サンが正しい」
「お前…自分曲げねえよな…」


青峰が言うには、桃井は自分から謝っても青峰は何も理解してくれないから嫌なのだと言っていたらしい。
二人の喧嘩には必ずお互い反省しなくてはならない点があったから、それがわかるまで桃井は絶対に謝らなかったのだと。
だから腑に落ちなくても、青峰はとりあえずいつも謝っていた。


「でもあいつ俺がちょっと謝るとすぐ泣いて謝りながら怒ってた理由言うんだよ」
「泣かすなてめえマジでしばく」
「昔のことだっつの!だから!お前も理由云々の前に謝ってみろよ!」
「俺が悪いところがわかんねーよ!」
「それがよくねえっつってんだよ!謝ってみなきゃわかんねーだろ!」


掴みかかりかけていた手を@@は下ろした。


「想像が、できない」
「なんの」
「謝って、敦がどんな顔するのか」


謝ったら紫原は桃井のように泣いて理由を話してくれるんだろうか。
笑って許してくれるんだろうか。それともわかってないと怒るんだろうか。開いた距離の埋め方がわからない。


ふいに@@の姿勢が傾いた。胸が軽く圧迫されて、顎のしたに青峰の肩がある。乾いた外のにおいに混じって青峰の制服から安っぽい洗剤のにおいが鼻孔を掠めた。


「お前も人間だったんだな、@@」
「どういう意味だてめえあと暑苦しい」
「俺お前のこと超人かサイヤ人かと思ってた」
「さすがにカメハメ波は出ねえな……」


抱き締めたまま青峰は@@の頭をぐしゃぐしゃかき混ぜた。
やめろと@@が暴れても青峰は強く@@の背を押さえるだけで放そうとしない。


「@@に弱点なんかねえと思ってたんだよ」
「実際ねえ(……氷室は別問題…)うん…」
「あんだろ@@チャン。じたばたしてるお前見てんのはおもしれえけどよ」
「面白がってんじゃねえぞ」
「面白がってて言えるかバカ。弱点見せつけてくんのはいいけど、それが紫原ってのが腹立つから」


早くいつもの@@に戻れよ。青峰は低い声で囁いた。
ばしん!強く背中を叩かれてぶっほ!と@@が吹き出した。
ぶん殴ってやろうとしたのに青峰はそれをひょいとかわして走っていく。



「待てオラァアア!!げほっごほっ」
「やーなこった。じゃーな@@、さっさと仲直りしちまえよ」
「言われなくてもするよ!」




「それでいいんだよ!」



青峰は振り向き様に歯を見せて笑った。




幼馴染みと!
(あいつたまにはまともなこと言うんだな…)



(抱き締めてたら勃った…バレてねえだろうな…)
8
/ /
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -