バスケ部部室の扉を閉め、鉄製のそこに緑間が呪符を貼った。
青峰を閉じ込めて。


「どーいうことよ!まだ満月じゃねーぞ!」
「押さえ付けすぎたのだよ…!青峰の力がここまで強いとは思わなかった!」

@@が押さえ付けるように扉につけた背中に鉄製の扉越しにガン!!と衝撃が走った。中から力任せに殴ってこじ開けようとしているが、緑間の呪符がそれを許さない。

青峰はすでに自我を失っていた。


図書室で兆候が見え始めたのに危機を感じた五人は唸る青峰を押さえながら部室までやってきた。まだ校内には生徒が残っている。ここで暴れてもらっては都合が悪すぎた。


「押さえ付けすぎたって…」
「簡単に言えば欲求不満ってことだよ、今の大輝は」
「やぁだエロティカル…うお!すっげ暴れてんなおい…!」


部室全体がまるでそこだけ地震が起きているように揺れている。


「呪符で押さえたのはいいが、押さえる力が強すぎて不満が爆発したってところかな…桃井の血で箍が外れたんだ」
「どうするんスかこれ…」
「すごい妖気ですよ」


黒子が思わず身震いするほどに、部室から漏れる妖気は凄まじい。
早すぎる暴走に@@は舌打ちした。


「今のまんまじゃまずいだろ。とりあえず学校から誰もいなくなるまで青峰押さえ付けて…なんとかする」
「策はあるのか」
「…なんとなく考えてるのはあるけど、うまくいくかはわかんねえ」


でも賭けるしかねえだろ、と@@は苦々しく言った。
しなる部室を見て、黄瀬が一言。

「青峰っち押さえてる間に部室ぶっ壊れそうッス…」
「僕のロッカーぐしゃぐしゃですよねこれ」
「備品壊したら全部大輝に弁償させよう」
「いやあ呑気だなーお前ら」


ガン!!また青峰が扉を叩いた。
弾き飛ばされそうになりながら@@はくっと喉を鳴らす。


「でもそれくらいじゃねえとな…!!」








ふと一瞬、青峰は我に返った。荒く息を繰り返して辺りを見渡す。
赤くなった視界に映るのは見慣れた部室の成れの果て。何もかもひっくり返ってめちゃくちゃになっている。泥棒だってこんな荒し方はしないだろう。己が両手を見てみれば、鋭く伸びた爪が在った。

きい、と寂れた音をたてて壊れたロッカーの扉が開く。

裏側に取り付けられた鏡に映った自分を見て、足が竦んだ。




聞いた通りの化け物だ。真っ赤に充血した目は意思とは関係なく獲物を探して世話しなく動き回り、伸びた牙の奥から漏れるのは獰猛な唸り声。
こんなの俺じゃない、わずかに残った自我が猛烈にその姿を拒絶する。
だが拒めば拒むほど自分が失われていくような気がして、怖かった。

『出来んだろ、お前なら』

薄れる意識の中で@@の声がリフレインした。
勝ちたい、自分に。あいつの言った通り、でも、


「@@…!@@……っ!!」


懇願するように呼んだ名前の主を、食い散らかしてやりたくてたまらない。その本能に青峰は勝てなかった。







「こんだけあればいいか…秘密兵器〜」
「むしろもう残っていないのだよ」
「バレたら大目玉だな、ほいよ緑間」


校内のとある部屋で集めに集めたそれをごみ袋に詰めてしっかり口を縛り@@は緑間に手渡す。
思ったより重量のある袋はしっかり担いでいないと肩からずり落ちそうだ。

「上手く出来るか保証はないのだよ」
「俺は端から無理だけどな」
「全く…」
「でも引き受けてくれる真ちゃんさっすがぁ〜@@くん惚れちゃーう」
「ほ、本当か…?」
「え、冗談だけど…お、電話…赤司だはいもしもしー」


期待なんかしてない!と壁に頭を打ち付けている緑間はこの際放っておく。通話口の向こうで赤司はもしもし、より早く「真太郎と何もないだろうね」と@@にはよくわからない質問をしてきたのでいやまさか、と返しておいた。更に緑間にダメージ。


《校内の人間は全て帰したよ。教師含めて》
「荒っぽいやり方してねえだろうな」
《それは@@の想像に任せよう》


ふふ、なんて妖艶な微笑が聞こえて@@は赤司に出くわした人間に心中合掌した。
しかしこれで邪魔物はいなくなった。ここからが正念場である。


《大輝はどうする?いいと言うなら僕が押さえるが》
「お前やると大変なことになりそうだからもうちょっと待ってくれる…緑間に今準備させて、」
「@@っち!!」


どたばたと荒い足音を立てて部屋に黄瀬がやってきた。遅れて黒子も。慌ただしい様子に赤司に一言言って一旦通話を切る。

黄瀬は額から血を流しているし、黒子も頬に傷ができていた。
赤司が校内を見回り、@@と緑間は秘密兵器の調達をしている間二人には青峰を見張っておくように頼んでおいた。しかしこの二人がこの状態でここにいるということは
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