夢を見る。






「「さいっしょはグー!じゃんけん!!」」
「ポォン!!」
「おぐぅお!?」


@@がおもいっきし峰ちんの顔をグーで殴った。
よろけた峰ちんの体がカウンターにぶつかって購買に残った最後の焼きそばパンがくるくると宙で回って@@の手の上に落ちる。ナイスキャッチ。

「きったねーぞ@@!!」
「誰がじゃんけんだけで決めるっつったァ?俺は真剣勝負だっつったんだ。武力行使なしなんて言ってなぁい」
「上等だオラァアア!!」
「わーわー!やめるっスよ二人とも!」

掴みあう二人を黄瀬ちんが止めに割り込んで逆に殴られて、黒ちんが@@をなだめてミドチンが峰ちんを押さえる。でもなんで赤ちんは@@に抱きついてんの。意味わかんないんだけど。コアラみてーだし。


「赤司くんは一人で何悦ってるんですか」
「気にしないでいい、テツヤ」
「うぉらああああ喧嘩なら買うぞ@@ーー!!」
「売り切れでーーーーっす!!」
「煽るんじゃないのだよ@@!」


ここ最近、@@はみんなと仲良くなった。前は誰が近寄ってもすぐに遠ざけたのに。
俺だけだったのに。
みんなもみんなで、俺に何か隠し事して五人でヒソヒソヒソヒソ。


なんで、俺だけ。


「あれ、紫原っちは?」
「あん?どこいった?おい敦ー」


ムカつく





俺の一番は@@だけ。昔からずーっと。@@が一番。@@とお菓子なら@@を取るし、もし@@がお菓子やめろっていうなら……考えるし。



生まれた病院が一緒、親のベッドが隣同士。俺たちの幼馴染みのカンケーはそこから始まってた。家も近所だったし俺は@@とあんまり離れてた記憶がない。

小学生くらいのとき。昔から体がでかかった俺はでかいことをからかわれることはしょっちゅうで、そのたんびに怒るのは俺じゃなくて@@。
いいって言っても@@はよくない!って言ってそいつらを俺に謝らせるよう仕向ける。
バレないわけなくて、親にも先生にも@@はいつも怒られてた。
俺は怒られたことない。だって@@が『敦はカンケーねえ』って言うから。

ガキ大将とかボークンとか言われて@@は嫌そうにしてたときもあった。悩んでたのも知ってる。学校を休んでばっかなのが心配で家に行ったとき誰にも会いたくない、って言われたときは。泣いた。

『俺にも会いたくないの』
『俺が触るとみんな怪我する。敦だって痛いのいやだろ』
『俺は大丈夫だし』
『そんなことない』
『あるよ、だって、俺は体がおおきいから』

@@のパンチもキックもいたくないよ。
顔が怖くても俺は誰より@@がやさしいの知ってるよ、ほんとは乱暴なんてしたくないこともしってるよ

周りがわからず屋なだけ。ほんとの@@を知ったら誰だって好きになる。


『@@がどんなにこわくても、おれは@@がだいすきだよ』


そう言ったとき泣いた@@の顔を俺は一生忘れないと思う。


その時決めた。俺のことは@@が守ってくれる。だから@@のことは俺が守ってあげなくちゃって。
@@がいればなんにもいらない。
@@も、俺がいればいいって言ってくれるから。だから誰もほんとの@@のこと知らなくたっていいって、思ってた、なのに


なんでみんなと一緒にいるんだよ




あめ玉の紙を破って中身を口に放りこむ。ガリッ
一個だけじゃ足りなくて二個、三個、どんどん口に入れて全部ぐしゃぐしゃに噛み砕く。
次から次にお菓子を食べた。すぐになくなった。

「たんない…」

俺が食いたいのは、これじゃない。



破裂しかけの心の臓
(苦しいよ)
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