大胆な逃亡作戦に成功した二人は肩を組んで大声で笑いながら大通りを闊歩していた。テスト期間が被っているのか、昼間のこの時間帯でも学生が目立つ。


「お前やるじゃねえか!赤司まできょとーんってしてやがった!」
「あの一言で気づいてくれるとは思わなかったよ。マジでやべえ」
「でもぶっちゃけ俺さっきまでお前嫌いだったわ。桃井さんと仲いいから」
「俺もなんだけど」
「今は〜?」
「ふっ…言わせんなよ」


二人とすれ違ったサラリーマンがよくわからない茶番に思わず二度見しながら首を傾げて通りすぎる

二人はすでに長く苦楽を共にしたかのように意気投合していた。ここまで波長があうとは二人も予想外であった。
ああだこうだと話す何気ない会話も無駄に盛り上がって二人のテンションは上がるばかり。しかしだ。青峰の様子がどうにもおかしい。
昇り調子のテンションのまま大声で話そうとするとあいでで、と頭を押さえて少し青い顔。それが二度続いたところで@@が聞く。


「なんだ、具合でも悪いのか?」
「いや、具合は悪くねえんだって。たまーにな、」
「ちょっと頭下げてみ」
「あ?」


下げてみろという割りに@@は青峰の腕を引いて無理矢理数センチの身長差を埋めた。ごち、と額がぶつかり合う。
たまたま近くにいたマダム二人組があらあらまあまあと囁きながら通りすぎていった。

「うわばっ!」
「あ、わり。敦にやるみたいにやっちった。まあ熱はなさそう」
「べべべっ別にいいけど…」

無駄にドギマギしてしまった。あいつらが妙に@@を気にする理由の片鱗を垣間見た気がする。と青峰は心の中で一人ごちる。

妙に意識し始めてしまった青峰は青くなったり赤くなったりで忙しく先程より口数が少なくなってしまった。
それを見てそんなに具合が悪いのか、と
当たってはいないが事実に近い答えを導きだした@@は数十メートル先にあったマジバの看板を指差した。


「よし飯でも食おう。食ったら元気になる。俺は」
「お前がかよ」






マジバで早めの夕食をとりながらごちゃごちゃしゃべっているといつのまにか日はとっぷりと暮れていた。会話に夢中になりすぎたことをネタに笑いあいながら退店する。

満ちた腹を二人してさすりしばらく歩いていたのだが@@は来たときより青峰の顔色が悪いことに気づく。
青峰の足取りは重く、額にはうっすら汗も浮かんでいた。

「どうした、食い過ぎか?」
「いやまだ食えるくらいなんだけどよ…頭いてえ」
「しっかりしろよな」
「最近ずっとなんだよ。でも絶対病院なんかいかねえ」
「あーそんなキャラだなお前」
「まあ…あいででで」
「おい…マジで大丈夫か」



夜道を歩く青峰の足が止まる。頭の中で金属でも叩いているように頭が痛んだ。いつもなら収まるのに、今日はその気配がない。痛みはひどくなる一方で青峰は頭を抱えて踞ってしまう。


「いっ…!!!」
「おい!ちょ、救急車ァアアア!」
「さけ、ぶな…ひびくっ…!!」
「あ、わり」


踞った青峰に視線を合わせられるよう@@もかがみこんで青峰の顔をのぞきこんだ。顔は真っ青でひどい汗をかいている。しかもやけに目が充血していた。恐る恐る青峰の背を擦ると異様に鼓動が早いのがわかった。全身が心臓のように脈打っている。

(なんだ、これ)


手のひらから伝う違和感。


それを探れるかと青峰との距離を縮めたのだが、がくん、と青峰が項垂れて急ぎ@@はその体を支えた。


「おい青み、」


聞こえた。確かに。

支えた彼の喉の奥からおおよそ人間の声帯から発することはできない声。



獣の唸り声だ。



グルッ、と獰猛な唸り声がした次の瞬間には目の前に規則的に並んだ鋭い牙が見えた。



ガッ!!!!
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