何故こうなった
菓子折りをもって@@は赤司と共に二度目となる赤司家の敷居を跨いでいた。
結果から言えば事態は好転していた。
赤司は退学を取り止め、バスケ部主将も続投。誰もが喜んでいた。
@@が赤司を連れ去ってからもういいじゃん!と@@が言うものの赤司は家に連絡を取り父と腹を割って話すこととなったのだ。
そりゃいい、と@@は思ったのだが
「何で俺まで来る必要がある」
「父が@@も連れてくるようにと」
「報復される!」
「大丈夫だ、僕がそんなことはさせない」
余計怖い。
すれ違う赤司家の人々はいろんな意味を含めた眼差しを向けてきた。
つい最近ぶち破った障子は綺麗に直されていて、赤司は失礼しますという言葉と共にその障子を開けた。
「……帰る!!」
「待て」
駆け出そうとした襟首を赤司が掴み部屋に引きずり入れられる。
部屋は所せましと怖い顔のおじさんたちが並び、上座には@@が啖呵を切った赤司家当主が静かに座っている。
さすがにこの数を相手にして生きて帰れるかは疑問だ。
無意識のうちに背筋を伸ばしてギクシャクしながら@@は畳の上に正座した。
「いやあのー…先日は大変失礼をですねー…菓子折りで許されますかねこれ」
「**くん、と言ったね」
「無理ですよねええ!俺が持って帰って食べるので帰っていいですか!」
「君が大層気に入った!!!」
「……………………………はい?」
死にさらせゴルアアア!とでも返ってくるかと思えば彼の言葉は@@の予想斜め上をかっ飛んでいった。
赤司父は深く頷きながら手まで叩いている始末だ。
「君のような男、いや人間は初めて見た」
「え、あー…あー?」
「さすが征十郎が見込んだだけのことはある」
「あの、お話が見えない…」
「君になら征十郎も任せられよう!」
「お父さん俺と会話でキャッチボールしよう!?見て俺のグローブ!暴投してますね!?」
「@@、お義父さんだなんて気が早いな」
「ちょおーーっと黙っててくれるかなあーかしくぅーん!!」
先日の一件で、なんと赤司父はいたく@@を気に入ってしまっていた。天下の赤司家に牙を剥いたどころか雄々しい発言までして度肝を抜かれた。そりゃもう息子に殺されかけたのを忘れる程度に。
力が至上主義の赤司家で認められるには力を示すのみ。
そのつもりはなかったが、赤司家に認められるには充分すぎる力量を@@は見せつけてしまったのだ。
「危うく私も惚れるところだった」
「勘弁してください」
「ふふ、息子のいい人を盗りはしない」
「当然です」
「頼む黙ってろ赤司マジで」
赤司父が再び手を強く叩いた。
周りを取り囲むおじさんたちの背が一斉にしゃき!と伸びる。
「……え?」
「征十郎を!!」
「「「「坊っちゃんを!!」」」」
「「「「よろしくお願いします!!」」」
「…………………なんだぁ…これ…」
大の大人が一斉に綺麗な姿勢で頭を下げるのはとても圧巻だった。
「家を無理に継ぐことはないそうだ。好きに生きろと」
「へえー…ヨカッタネ…」
赤司とその父が腹を割って話した結果がそれだった。
繰り広げられる摩訶不思議な会話に耐えきれず@@はばかでかい庭のだだっ広い池の丸々太った鯉を見つつ現実逃避の真っ最中。
「まさかこんなことになるとは思わなかった」
「それ俺の台詞なんだけど…」
「実感がわかないな」
「ねえ会話してよ」
赤司の顔は晴れやかだった。
@@が危惧した、おいていかれた子供のような儚げな色の瞳はもうどこにもない。
そんな満足そうな顔をされてはもう怒る気もどこかへ失せてしまう。
「落とすつもりが逆に落とされたな」
「はあ…」
「さて、これからどうしようか」
「しらねえよとりあえず俺帰るわ」
「今じゃなく今後の話だ@@。父に挨拶までしたんだから」
「!?」
「@@が婿か嫁にくるか…僕が嫁に行くか?」
「ちょちょちょ、待て!待って!」
「赤司@@、**征十郎…どちらも捨てがたいな」
「何で赤司家って話聞かねえんだ!!」
あなたのそばで
(何不自由なく養ってやる)
(わあ、オトコマエー…)
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