@@の嫌な予感は的中した。
次の日、通学路で@@は紫原から衝撃の新事実を聞かされたのだ。


「はあ!?学校辞めた!?赤司がァ!?」
「うん、メールきた」
「何でまた…」
「俺も気になったからメールしたけど赤ちんから返事こない」


心配なのか紫原のまいう棒をかじるペースはいつもより格段に遅い。
昨晩バスケ部に連絡網という形でメールがきたらしい。
内容は簡素で簡潔。バスケ部、ひいては学校を辞める。詳しいことは後程話す申し開きの言葉もない。と。それだけ。



十中八九昨日のあれが原因だろう



赤司の影響力とは凄まじいもので二人が学校についた頃にはバスケ部以外の一般生徒にもその噂が広まっていた。
まことしやかに囁かれる噂に@@は冷や汗を流す。


紫原と別れ、自分のクラスへやってくれば黄瀬、緑間、黒子が暗い顔で話し込んでいた。

「あ@@っち…」
「赤司、学校辞めたって」
「実際にはまだ辞めてはいないのだよ。…手続きの段階だろう」
「俺のせいかしら…」
「@@くんが責任を感じることはないと思います」



だって殺されかけたんだから。
黒子の言うことはもっともだが、@@の胸に蟠りがつっかえてとれない。言うだけ言って、赤司一人を敵にしてしまった。


(これでよかったのか?)


境遇は違えど赤司と@@の悩みは似かよっていた。
我が身の保身のために、突き放してしまった。


(もういい、って言ったあいつの目ガキみたいだったな)


いつか自分もしていた目だ。

おいてかないで、ひとりにしないで


「なあ、赤司いなくてバスケ部は成り立つのか」

皆が口をつぐむ。赤司あってこそのバスケ部であることは中高一貫して苦楽を共にしてきたチームメイトたちが一番よく知っているはず。

「赤司くんが@@くんにした仕打ちは許せません。…でも、いなくなってほしいとは思ってないです」
「俺だってそうッスよ。赤司っちも、なんか悩んでだからあんな風になっちゃったんスよね」
「赤司が弱さを見せることなど一度もなかったからな」
「ほらーお前らだって思うとこあるじゃん?」


「…俺はやられっぱなしってのは性にあわねえなあ」

鼻明かしてやりたくねえか、あいつの。
と言った@@の顔はどうしてか笑っていて、三人は首を傾げる。
どうするつもりだ、緑間の問いに@@は淀みなくこう答えた。




「早退しまーす!!」










赤司はだだっ広い和室で父と向かい合っていた。

学校を辞めます、そう伝えたとき父は一瞬笑った。
せっかく作った居場所は昨日自分で壊した。もう戻れない。
たとえ言いなりであっても、もう自分を否定しないのはこの世界で父だけだ。


「ようやく決心したか。それでこそ赤司家の男だ」
「…はい」
「これからは私のためにも一層尽力しろ」
「…はい」


なぜこんな家に生まれた。ここに生まれ落ちなければ、こんな血筋なければ、

あの男とも、もっとましに付き合えたかもしれない。



(なぜ、こんな奴が俺の父なんだ)


ふつふつと赤司の中で疑問が生まれていく。ただ血をわけた者になぜこの俺が指図されなければならない。劣るくせに、力も知識ももう叶わないくせに。周りの下等種と一緒のくせに。

こんなの、おかしい



「なんだ、征十郎」


赤司はゆっくり立ち上がった。


「もう充分でしょう、父さん」
「なんの話だ」
「もう随分長くあなたは赤司の頂点に立って好き勝手やってきた。俺は従順だったでしょう?よくやったと思いませんか」
「だからなんの話だ!座れ!」
「俺に指図するな」


見下した体は小さく見えた。今まで素直に従ってきたのがバカのように。
こんな小さい男にこれ以上従うなんてプライドが許さない。
汚点を消そう。すべて白紙に戻すのだ。この世に自分を理解するものなど誰一人としていない!

(俺が正しい)



一歩赤司が歩み寄れば父は後ずさる。恐怖に顔が歪んでいるのを見て赤司は理解した。なんだ、この男も結局自分を理解していないじゃないか。


ならもう


「俺に逆らうなら親でも殺す」



今生に、別れを告げろ。そう父に言った赤司の顔はまさしく鬼だった。





スッパァアアアアアン!!!
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