@@は勝訴、という紙を両手で広げて駆けずり回りたい気分だった。
最初は紫原に一緒にバスケ部いこ?と誘われる程度だったのだが「@@っちと一緒にバスケできたら最高ッス!」といつの間にか黄瀬が加わり「クラスも違うし…@@くんともっといられる時間がほしいです」と黒子に言われてはぐらつき「あいつらがうるさいだけから誘っているだけで別にお前と一緒にいたいわけではないのだよ!」とがなる緑間をいなし続け…苦節一ヶ月。
入部希望届けが忽然と消えたりもした。再び現れたかと思えば希望の欄にはバスケットボール部の文字。ああ、陥れられている。それでも@@は戦い続けた。その結果、




ようやく念願のサッカー部に入部がかなったのである。


「(長かった…!!)」


@@は昔からバスケより野球よりサッカーだった。キセキの世代の前では霞むものの中学のときから大会での記録も持っているくらいで、サッカー界では有名な人物だった。
入部を希望したらぜひ!と主将に両手を握られたほど。

興奮のあまり入部初日から目立ってしまい、二年生に生意気なんだよ!と突っかかってこられたがそこは鉄拳制裁。ちゃーんと実力も見せつけ異例の早さでレギュラー昇格。


華々しいサッカー生活が幕を開けるぜ!と意気揚々だったとき事件は起こった。


練習用のTシャツとハーフパンツに着替え履きなれたスパイクの靴紐をしっかり結びサッカー部伝いで知り合った田中と言う男とグラウンドに向かう。

早くにやってきた他の部員たちはすでに練習を始めている…のかと思えばなんだかチームメイトたちが騒がしい。
一点の方向を見てひそひそと話し合っていた。視線の先、少し離れた場所で主将とやたら目立つ真っ赤な髪の少年が話している。

「誰だあれ、あんなんサッカー部いたか?」
「え、うっわ!あれ赤司じゃねえ?」
「誰それ」
「お前知らないのかよ!赤司って…」


「**!」


田中が耳打ちするように顔を寄せてきたのだが、離れた場所からでもよく通る主将の声に掻き消される。主将はこいこい、と@@を手招きしていた。赤司、とやらも@@を見ている。


「なんか呼んでんぞ〜何したんだよ**」
「しらねーよ。大体俺はアカシすら知らん」
「気ぃつけろよ!相手はあのキセキの世代なんだからな!」



キセキの世代


「しかも主将」


……嫌な予感。





「君が**@@か」
「そうだけど、何か用」


あれ、こいつよく見るとかわいいな…
近くで見据えてつい@@可愛いものセンサーが反応した。
背は@@と頭ひとつぶん違って、赤司は自然と上目遣いで@@を見上げる形になっている。黒子とは違う雰囲気のぱっちりした両目は陽光を浴びてきらきら光って見えた。つい撫で回したくなる衝動をおさえ@@はあえて表情を険しいものにした。


「単刀直入に言おう。バスケ部に来てくれないか」
「単刀直入に返そう。だが断る」


くそ、やつらの回し者か!!と@@はちょっと赤司にぐらついた自分を恥じた。


「うちのレギュラーたちがどうしてもとせがむんだよ。サッカー部に入ってしまったからだめだと悲しむ者もいればサッカー部なんて潰してやると怒る者もいる。まるで部活にならない。一人の人間のために、レギュラーたちの集中が欠けていっているんだよ。わかるかな?それをまとめなければならない僕の気持ちが」
「お、おう…」


赤司は笑顔で一度も息継ぎをせず噛むこともなくつらつらと並べ立てた。
一言一言が呪詛のように重たくのしかかり笑顔にとんでもないプレッシャーを感じた。たらり、@@背を冷や汗が伝う。



「じゃあやることはわかるね?来てもらおうか」
「……やなこった。もう俺はサッカー部だ。あいつらにもそう言っとけ」
「へえ……多々良部長」


赤司は横目で隣の大男、サッカー部主将多々良をみやる。
多々良はがっしりした腕を使い、突然@@を引っ張ってきた。


「ってえ!何すんすか!」
「頼むよ**、今は赤司についてってくれんか」
「いやだっつの…!俺サッカー部!向こうバスケ部!関係ないでしょーが!」
「あるんだってこれがー赤司に@@出さないとサッカー部の部費全面カットって言われてんの!」
「ただの生徒風情にんなこと…」

「顧問にもコーチにも話は通してある。言う通りにしないなら今すぐにでも部費カットを申請してこよう」


赤司の指がハサミのように開いて、閉じ、カットを表してくる。音なんて聞こえようはずもないのしゃきん、と金属音がしたような気がした。


「て言うわけで頼むよ〜**〜」
「俺は生け贄かァ…!!」
「まあそんなとこかなハハハ!」
「このくそキャプテン!!!もう俺あんた信用しねえからな!」
「では行こうか**」
「イダダダ!引っ張んな!」



こんな細身から出るとは考えにくい力で@@は赤司に引っ張られていった。


体育館とグラウンドはさほど離れていないので目的地に着くのはすぐ。
仕方なくスパイクを脱ぎまさか来るとは思わなかった体育館、それも一軍の練習用のコートに足をふみいれた。


入ってすぐ目についたのはだるそうにゴール下にいる幼馴染み。
大きくあくびをしている瞬間目が合い、小さく手をあげると大口をあけたまま固まっていた彼はものすごい速さでこちらに駆けてきた。まるで戦車だ。


「@@っ」
「あせくさっ」
「どしたの?やっとバスケやる気になった?」
「ちげーよあいつに連れてこられた」


しがみついてきた紫原を押し退けながら@@は赤司を指差す。


「さすが赤ちん〜」
「敦、まだ練習中だ。彼には僕が入部交渉をしておくから戻れ」
「うんっ」
「おい俺入らねえっつってんだろ!」
「まあゆっくり話そう」



何かが空を切って@@の眼前につきだされた。
体育館の電気に照らされ鈍色に光る鋏を見て@@は口許をひきつらせる。


「ベンチに行こうか」



赤、強襲
(こいつに逆らっちゃいけない気がするのは何故だ)


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