「やーーだぁーーーーおれも@@といぐぅーーー」
「だめだよ。敦インフルエンザなんだから」
「おいてかないでよぉやだやだやだぁーーー!!!」


小学5年生の冬休みのことだった。
@@の父は海外で仕事をしており母は冬休みを利用して年末はそちらで過ごしていた。@@はその際毎年紫原家に預けられていたのだが今年は紫原がインフルエンザにかかってしまった為急遽母とともに海外へいくことになったのだ。


「お土産買ってきてやるから」
「やだ@@がいい!俺すぐ治すし!だからいっちゃやだ!」


寒い玄関先で紫原は鼻水をすすりながら駄々をこねる。
見かねた紫原母がやってきて小5にしては大きい身体を家に押し込めた。


「ごめんね@@くん、あのおバカはおばちゃんがなんとかしとくから…うつっちゃうといけないからもう行って?お母さんによろしくね」
「うん。敦治してやってね」
「ありがとう。ほんとに@@くんが敦の友達でよかったわ…」


しみじみ言う紫原母に手を振り、@@は紫原家をあとにする。
背後から紫原の泣き声がこだましたが、一度振り返って@@は自宅へ戻っていった。



初めての海外旅行で@@は期待することも多かったが逆に苦労はそれを上回った。まず言葉が通じない。こちらの子供はやたらフランクで積極的。たくさん話しかけられたが@@は頭の上にクエスチョンマークを浮かべるばかりだった。
挙げ句言葉が通じないとわかった近所の悪ガキが@@に対しイエローモンキーとスラングを吐いた。意味がわからず両親に意味を聞いたところ
「バカにされてる。ぶん殴れ」「なめられては我が家の恥」とのお達しが出た。次の日に殴った。

@@が殴った子供は近所で有名なガキ大将だったらしく称賛されたのだがやはり言葉がわからない。
時間がたつにつれ興味本意で近づいてくる子供もいなくなりガキ大将すら一発でKOするジャパニーズラストサムライというあだ名までついたおかげで畏怖され@@はどんどん孤立していった。



「敦インフルエンザ治ったかな」


祖国の幼馴染みを思いながら@@は壁に向けてサッカーボール蹴った。壁に当たって跳ね返ってきたそれをまた蹴り、跳ね返り繰り返し。

こちらではサッカーよりもバスケをしている子供が目立ち@@は余計輪に入りづらかった。



「あっ」


力加減を誤りあさっての方向にとんでいくボール。
慌ててそれを拾いに言った先に、白い毛玉がいるのを@@は見つけた。


「猫だ!」



その頃から可愛いものは正義精神が芽生えていた@@は瞳を輝かせて猫に向かって手を伸ばす。ちっち、と舌を鳴らして指を動かしても猫は興味なさげにそっぽを向いてしまう。しかしなんとしてもふわふわの毛並みに触れたい@@は身を乗り出して猫に寄っていくのだが



「ふしゃー!」
「イッデエエエエ!!」



引っ掛かれた。


ひりひりする手を押さえながら@@は猫を睨むのだが猫は相変わらず毛を逆立てて@@威嚇している。



「come」



そのとき脇から見知らぬ手がにゅっと伸びてきて猫に手招きをした。
途端に猫は威嚇をやめとことこ手に寄っていくと甘えた声を出しながらその手に擦り寄っていったではないか。


「She is fussy.」
「……英語わかんねーし」
「彼女はちょっと気むずかしいんだ。無理に寄ってくとひっかかれるよ」
「!」

むっとした顔で文句を垂れたのだが、返ってきたのは聞きなれた祖国の言葉だった。
驚いて顔をあげると綺麗な笑顔の少年が猫を抱えて@@を見ている。



「に、日本語…」
「俺はわかるよ。きみ、ライアンを倒した子でしょ」
「誰それ」


少年はくすくす笑って最近誰かと喧嘩しなかった?と聞いてくる。
記憶にあるのは喧嘩というより一方的にのしてやったあのガキ大将だ。


「あのデブか」
「多分そうだね。君のおかげでライアンがおとなしくなってね。コートを独り占めしなくなったんだ」
「ふーん」
「ラストサムライにいいつけるぞ!っていうとすごく怖がるんだよ」



だから一回お礼が言いたかったんだ。と笑みを深くする少年に@@はしばし見とれた。きれいなかおだなあ、と子供ながらの正直な気持ちで。



「きみ名前なんていうの?」
「@@…」
「@@かあ。俺は氷室辰也だよ。よかったら一緒に遊ばない?」


初めてのお誘いに@@の顔が輝いた。しかしバスケなんだけど、と付け足されてがっくりと肩が落ちる。


「バスケできねえ」
「教えてあげるよ?」
「……無理。バスケは、どうしてもできない」


頑なに@@は氷室の誘いを断り足元のサッカーボールを拾い上げる。
氷室の悲しそうな顔を見ていたくなくて必死にボールを見つめた。
じゃあもういいよ、とでもなんでも言ってどこかへ行ってほしい。どうせ一緒に遊べないのだから。と@@は俯いた。


「@@は猫、好き?」
「え、う、うん…ぜんぜんなつかれないけど…」
「じゃあ練習しよう」
「えっ?」


ずい、と目の前に差し出される猫。@@に近づいた途端激しく威嚇し始める。



「バスケ以外でも遊び方なんてたくさんあるよ」



@@はこういう人間をいいやつ、以外でなんと形容するのかそのときはわからなかった。後々イケメンと呼ばれるそれを、己のトラウマとなるものを知らず@@は笑顔で頷いた。
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