「んで?ネタばらししたんだし、出すもん出せよ」
「出すもの?」
「いなくなった奴等だよ。お前が隠してんだろ、四人」
「ええ」


認めてしまえば黒子は素直なもので@@の質問に従順に答えた。
また風もないのに窓が鳴っている。
がたがたと音が強くなればなるほど、黒子の顔には笑みが浮かんでいった。


「でもダメです」
「何で」
「彼らは僕に負けました」
「負け…?」
「僕は失踪、という扱いになった人達にかくれんぼの相手をしてもらったんです」


最初は同じクラスの男子生徒だった。何度か声をかけられて自分の存在を知ってくれていると思った。
次は部活のマネージャー。桃井についで部員によくしてくれる存在。彼女なら見つけてくれるかと思った。
三人目は廊下でぶつかった生徒。礼儀正しく、自分の存在に驚かなかった。今度こそ大丈夫かと思った。
最後は桃井さつき。彼女は自分に好意的だった。なるべく身近な人間は狙いたくなかったが、何人も続けているうちに黒子の感覚は鈍っていたのだ。

誰を隠してもいい。見つけてさえくれれば



「でもみんなダメでした」
「かくれんぼって…する意味あんの?」
「ありますよ。僕は見つけてほしいんです」


僕を


「誰も僕を見つけてくれない。今度こそと思ってもみんな恐怖に顔を歪めて探してくれない」



「ただ一度、見つけてくれればそれでいいのに」


ぎり、と黒子が歯噛みしたのが聞こえた。


「でも、大丈夫ですよ。時間が立ったら全員解放するつもりですし」
「いやそういう問題でもねえだろ」


@@はあっけらかんと言い放つ黒子に不満があるらしく、渋い顔で考え込んだあと、よし!と手を叩いた。

「じゃ次は俺がやってやるよ」
「**くんが?」
「おう、ただし条件がある」
「…言ってみてください」


「俺が勝ったら隠してるやつ全部出せ。んでこういうことはもうやめろ」
「負けたら?」
「とりあえず隠してるやつは全部出せ」
「…それ、僕にメリットないんですけど」
「まあ最後まで聞けよ」


黒子は何言ってんだこいつ、という顔で@@を睨む。
対して@@はそれをまあまあと宥めつつ言葉を続けた。


「俺が負けたら、俺は一生解放しなくていい」
「一生…?」
「そしたら俺はお前の手中にずっといるわけだろ?そしたら流石に見失わなねえと思うし」


負けたらずっと一緒にいてやるよ。

@@の顔に迷いはなく、笑顔で言い切った。
黒子は若干目を見開き少し考える。






「わかりました」


出た答えはイエスだった。








「制限時間は日没までです」


日が沈みきり、学校が影に飲まれた瞬間ゲームオーバー。
晴れて@@は闇の世界の住人となり、一生出てくることは叶わないだろう。しかし@@は物怖じせず、ただわかった、とうなずくだけ。


「じゃあ」


黒子が背後に広がる影に一歩足を踏み入れた瞬間、その体は跡形もなく消えた。おおーと@@が称賛の拍手を送るがとくに返事はない。


「じゃーやりますか。もーいいかい!!」


もういいよ、とどこからか声がした。

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