も う い い か い

まぁ だ だ よ




「はぁ、失踪事件」
「立て続けに二人っスよ、それもどっちもうちの学校」


持参した弁当をかっこんでいたら黄瀬が出してきた話題。それ飯時にする話か。

黄瀬はやたら俺と飯を食いたがるのだが、こいつと一緒に食うと周りに女がたかって飯どころの話じゃないので敦を入れて俺たちの現在位置は屋上である。ちと寒い。


「ただの家出って可能性もあるだろ、あの年頃にはよくあること」
「@@っちもその年頃のはずなんスけど」
「子供の考えることはわからん」
「@@ートマトあげるー」
「自分で食えタコ。食わせるために入れたんだ」
「えー」
「食わせるために入れたって…えっ！もしかして紫原っちの弁当@@っちが作ったんスか！？」
「あげないしー」
「欲しいっス！！ほらトマトいらないんスよね？俺が食べるっスよ！！！」
「ダメったらダメ」


なんか騒いでるがそのトマトは俺作ってないからな。農家の人の努力の賜物であるからして。
弁当に残った最後の卵焼きを咀嚼して購買で買った焼きそばパンの封を切る。


「いっつも思うんスけど@@っち食い過ぎじゃねースか」
「どこが」
「いや全部っスよ。今弁当食ったのにこれから焼きそばパンって…」
「バカ言え！後にコロッケパンとチョコクロワッサンとウィンナーロールとキャラメルプリンも控えている！」
「いや食い過ぎでしょだから！！」
「んなことより失踪がどうのはどうした」


俺は俺の食いたいものを食っているだけなのでこれ以上とやかく言われても面倒、と判断しさっきの黄瀬の話題を掘り返してみた。
すると黄瀬はそうそう！と食いついてくる。切り替えはえーなお前。


「失踪した二人、真面目でとてもそんなことする人じゃなかったらしいっス。いじめられてたわけでもなく」
「そういう奴に限って…？」
「やっちゃうんだよね〜」
「さすが敦わかってるぅー」
「いやそこで意気投合しないでほしいっス！！ずるい！俺も@@っちと連携したいっス！！」
「俺はやだから却下」


「黄瀬くん」


「大体紫っちはずるいんスよお！幼馴染みで弁当作ってもらえてお姫様だっこまでしてもらえるとか欲張りすぎっス！バチ当たるっスよ！」
「黄瀬ちんこそ@@と同じクラスじゃん。それ以上とかワガママすぎだし。捻り潰すよ」
「おい」


「黄瀬くん」


「俺も弁当ほーーしーーいーーっスーー！」
「やだ、無理、絶対だめ」
「別に紫原っちの許可なんかなくても」



「なんか用あるんじゃねえのかそこの人」

「「え？」」





言い合いを続ける二人の丁度後ろを指差す。
二人は動きをぴたりと止め、同時に振り返った。


「どぅわ！黒子っち！！」
「びっくりしたしー何黒ちん」
「いえ、黄瀬くんに借りてた教科書を返そうと」

探しました。と水色の髪と真ん丸な瞳が印象的な少年が礼を述べながら黄瀬に現国の教科書を渡した。そういえば貸してたっスーとすっかり忘れていたらしい黄瀬はそれを受け取りながら後ろ頭をかいてた。


「じゃあ僕は行きます」
「黒子っちお昼は？」
「今日はお弁当がないのでこれから買いに行かないと」
「あ、ごめん購買なら全滅だけど」
「え」
「俺が全部買った」

隣にあるパンの山を指差す俺。あるだけかき集めてきたからもう購買に残ってるのは水か牛乳か…とにかく飲料だけだと思う。
火神くん以外にもいるんですねこんな人…と黒子とかいう少年は呆然としている。

「お昼…どうしましょう」
「あげるよ」
「え？」

ぽい、と少年にウィンナーロールを投げる。
突如空から降り注いだ惣菜パンに驚きながらもちゃんとキャッチしてパンと俺を見比べている。


「一緒に食おうぜ」


俺は最上級の笑顔で言った。




後ろの正面
(やな予感がする…)
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