じり、と@@を取り巻く炎の輪が距離を狭めてきた。輪は徐々に小さくなり肩を狭めなければ火に触れてしまいそうだ。


「極端すぎだろがおい!」
「だって@@っちモテるんだもん。早く手打っとかないとさっきみたいなやつに何されるか…」
「アホかぁ!俺は生まれてこの方モテた覚えが……言わせんなよ!!!」
「自分の魅力に気づかないのも罪ッスよねえ…」


じりっ、革靴が焦げ付いた。もう余裕はない。


「俺のこと好きになってくれたら殺さないッス」
「………」
「それだけでいいんスから。ね?安いもんでしょ?」


黄瀬は笑顔だった。


「……本当にそれだけでいいんだな?」
「!!もちろん!」
「なら殺せよ」
「え……」



@@の服の袖に炎が触れた。@@は自分の体が燃え初めているにもかかわらず身動きをとらない。


「好きになってほしいくせに無理矢理言わせるわ殺しかけるわでお前ほんとに好きになってもらう気あんのかよ」
「あるッスよ!!だからこうやって……!!」
「天秤にかけて自分の命のが惜しいやつなんか本気で好きにならねえよ!!」
「!」


@@の皮膚が焼けていく。文字通り燃えるような痛みに@@は顔を歪めた。それでも彼は止まらず言葉を続ける。


「どうせ好きになるなら自分の命投げ出せるくらいのやつ選ぶね!」

「努力もしねえで何が好きになってほしいだ!なめんな!周りがいやだとかほざいて自分の術中にはまってんのはてめえだろ!」
「そんなこと、俺は!」
「うるせえ!幻術なんかまどろっこしいことしてる暇があったら真っ向からこいよバカが!!」



「俺はイケメン嫌いなんだよ!外も中も着飾りやがって!みっともないのの何が悪い!ブサイクの何がいけない!少なくとも俺はそういうやつのほうが好感持てるね!無理矢理綺麗な悲劇に持っていこうとしてるてめえよりはな!」


綺麗な自分を見せればなびかない者はいない。同情を誘えば落ちないものもいない。でもやはり@@は思い通りにいかない。


「すがっちまえ不格好に!」
「でも、そんなん……カッコ悪いッス。そんなんじゃ誰も、俺のことなんか」
「いいっつってんだろ!俺は嫌いになりゃしねえよ!」
「@@っち……」
「あっつ!もう無理!!炎止めろ!!……黄瀬!!」


突然名前を呼ばれて黄瀬は反射的に炎を引っ込めた。
幻術は使っていない。だから@@は自分の意思で黄瀬の名前を呼んだということだ。
燃え移った炎をばしばし@@が叩いていると今更ながら頭上にあったスプリンクラーが作動し黄瀬もろともまとめて二人はずぶ濡れに。



「あーもう……」
「@@っち……」
「………何泣いてんだてめえ」


ぶっさいくだなー
@@は笑った。黄瀬の顔は色んな水分でぐしゃぐしゃで、濡れた袖で拭いてもなんの意味もない。


「こんなんで、いいんッスか、ほんとに、こんな…かっこわるくて」
「人間らしくていいじゃねえか」
「…ずびっ、うぐっ、@@っちぃ…」
「おいこっちくんな鼻水つく」
「ひどお!今いいって言ったじゃないッスか!」
「それとこれとは話が別だろ」
「……………ほんと、」





@@っちは思い通りにならない


そう呟いた黄瀬の顔は笑顔だった。



にんげんくさい
(ぶぇーっきし!風邪ひく!)
(引いたら付きっきりで看病するッス!)
(マジいらね)
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