※ギル♀



甘く普く世界を抱擁するそらが、今や蒼を失くし、灰色の雨を落とす。ぽつりぽつり。ぎんいろの髪の女はただそらを見ていた。かつて彼女の幾多もの栄光を見下ろしていた青く聡明なそらは、人間の科学だか命だか、そういったものを生み出し発展させた代償に、あおさを失って汚らしく汚れた。すべての罪から逃げようと愚かな人間は無様に足掻き、散散っぱら散らかした挙げ句家畜と一緒に死んでいく。

国は、生きている。マリアは噎せ返るような熱気に吐き気を催しながら、淡々と降る地球の涙を見つめていた。「かなしいな、朋よ−−」大袈裟な身振り手振り。彼女は不安になると、それを隠そうと気を大きく見せる。肩を竦めたマリアの、その手は震えていた。彼女の目はそれに気付かないほど歪んでいた。「ああ、かなしきこと。」

「俺の民が死んでゆく」
「…ああ」
「お前も、死ぬのか」
「ああ、そうかも知れない」

息をするのも苦しいほどに私の体は衰退していた。全ての昨日は玩具みたいにちゃちになってしまっていたし、正直マリアを見つめ続けるのも難いことだったけど、私の命が終わる前に、せめて美しい彼女をじっと見ていたかった。マリアは涙を零した。私の前に膝をつき、懇願するように、果ては−− 祈るように、私の首にゆっくりと腕をまわす。

「なあ 」

しなないで 、


彼女の赤い目は今も曇ることなく、命を光らせていた。「ごめん。ごめんな−−」私は、あなたと生きることができないよ。でもせめて、私がおわるまえに。

幸い私の喉はまだ生きていたので、微かな、忘れかけていた音程を壊れかけた脳が思い出し、雨に濡れたマリアの頬を美しい涙が洗い流す。「ばか、やめろ…」終わらない、うたを。君が生まれたばかりのころに、娯楽も何もない世界で君が必死に歌った、民が必死に歌った愛国歌。なだらかな旋律。強く雄々しい意志。「やめてくれ、それじゃあまるで…」まるで。嗚咽を吐き出すマリアの背をさするだけの力は、もう残っちゃいない。

「お前が本当に、死んでしまうみたいじゃないか」

わらえ。わらえ、マリア−…君が笑ってくれるのなら、私は消えてしまってもかまわない。最後の言葉をほざきかけた唇は、マリアの唇に飲まれた。なるほどおもしろい、わたしは君の吐息のなかで、えいえんに





凡庸さんから強d(ry
くれるって聞いたもので
晴ありがとう




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