甘い罠にはご用心!

いかがわしいです







うっすらと湯気の立ち込めるバスルームで自分の名付け親兼護衛兼恋人である男に背後から抱き込まれ有利は脚を広げていた。
ぐるりと剣を扱う硬い指先が胎内を掻き回す感覚に眉を寄せた有利はごり、と浅い場所を抉られ噛み締めていた唇の隙間から甘い声をもらした。

「あ、あああ………!」

がくがくと体を震わせてのけぞった有利の頭がコンラッドの胸板に当たる。
露になった有利の額にひとつキスを落とし、目尻に唇を寄せて浮かぶ涙を吸い取るとコンラッドはぱしぱしとごく軽いちからで有利の頬を叩いた。。
ぽっかり開いた有利の瞳は茫洋と宙をさ迷いどこか遠くにいってしまっている。


「ユーリ、ユーリ…大丈夫ですか?」
「コ、コンラッド…もう、もうやだっ」
「やだ?でもまだ終わってませんよ、………ほら」


コンラッドは二本の指を有利の中でひろげてみせた。
入り口を開かれなかからとろとろと先程の行為の残滓が流れ落ちてくる感覚に有利は真っ赤になってぎゅっと目をつぶる。
こんなことならとっとと気絶なり失神なりしておくんだった!
いつも有利が意識を失って目が覚めると、きれいさっぱり身体が清められシーツは新しいものに変えられていて、後片付けをしてもらった申し訳なさと気だるさと羞恥が有利を苛むのだが…。
後始末がこんなに恥ずかしいものだったとは!
確かに自分の身体はけして女の子のように出来てはいない。
胎内に精液をいれていても妊娠するということはないのだけれどいつまでもこのままというわけにはいかないしきちんと掻き出して処理してしまわないと身体を壊すのだそうた。
しかし手付きが必要以上にねちっこい。
この男はこの状況を楽しんでいるに違いないのだ。
馬鹿!この変態!むっつり!!
有利が内心饒舌に自分を罵っているとは考えもしないコンラッドは有利の胎内から精液を掻き出す行為に夢中だ。



恋愛初心者、そして大事な大事なそれこそ目にいれても痛くないほど大事な名付け子だ。
有利が怖がるようなことは極力避けたい。
有利がいやがるようなことはしたくない。
コンラッドは常にそう思っていた。
それこそセックス…上王陛下いわく愛の営み…は、夜、明かりを落としてベッドの上で、だ。
けれどコンラッドとて限界だった。
アブノーマルとまではいかないが、場所で、シチュエーションで、もう少し際どいことがしたい。
不安そうに揺れる瞳をみたい、羞恥で赤らむ頬がみたい、抑えこんだ口からそれでもこぼれる甘い声が聞きたい。
長兄に聞かれたら一ヶ月の接触禁止を言い渡されそうな思考を涼しげな表情の下に押し込めて日々悶々と過ごしてきたコンラッド。
ちなみに有利が毎回行為中に気絶してしまうのはこのコンラッドの抑えこんだ欲求不満の反動だったりする。
しかし今日、コンラッドはなけなしの自制心を精一杯働かせ、有利が意識を失ってしまう前に行為を切りあげそして、

「すみませんずいぶんと汚してしまいました。後始末しちゃいますから、有利は寝ていていいですよ」

と、有利に向かって眉を下げてみせた。
後処理をコンラッドに任せっきりにしてしまうことに申し訳なさを感じている有利。
自分の意識があるのにコンラッドだけに後始末を任せるなんてとんでもないと妙な責任感を働かせるのだろう。
コンラッドはその有利の性格を利用することに決めた。


「じゃあまず身体を綺麗にしちゃいましょうか」

大物を釣り上げた釣り師の気分でコンラッドは、初!ベッドの上以外での愛の営みを迎えることとなった。



後処理なんて言い訳でいわばこれはコンラッドにとって前戯だが、有利は純粋に後処理だと信じている訳で。
後処理に感じてしまっていることが相当恥ずかしいのだろう。
コンラッドが有利の性感を高めるために知り尽くした感じるところを偶然を装って刺激を与える度に顔を赤くして唇を噛んでふるふると身悶える恋人の姿はコンラッドの嗜虐心を煽るばかりだ。
もう一押し。
あと一歩で有利が陥落すると確信したコンラッドは奥の方の精液を掻き出すふりで爪の先を有利が一番感じる所に引っかけた。

「ひ、ああああ………!」




ふと視線を感じて有利を見ると彼は上半身をひねってこちらを見上げていた。
きっ、と涙で濡れた瞳がこちらを睨み付けている。

「う、嘘つき!」

そういえば有利はわりと理性的というか我慢強かった。
快楽に溺れそうな瞳はそれでもコンラッドを責める光を宿していて、有利がまだ理性のぎりぎりのところで踏みとどまっていることを示している。


「後処理なんて嘘だろ」
「嘘じゃありませんって」

どうしてそんなことを言われるのかわからないという声音でコンラッドは指を動かした。
とぷりと内から精液がこぼれておちて有利は背筋を震わせた。
コンラッドによってもたらされた刺激によってすっかり勃ちあがってしまった有利自身は先走りが浮かび上がりぱたぱたと滴が伝い落ちる。

「ああ、すみません」

コンラッドはわさとらしく初めて気がついたというように有利自身に手を伸ばしてつつつ、と指先を下から滑らせる。

「有利は感じちゃったんですね」
「ッ!!」

とたん有利が真っ赤になって視線をそらした。
狼狽えているのかそのまま視線がうろうろと困ったようにさ迷う。
有利にそんな顔をされるなんて、こちらが困ってしまう。
ぼんやり考えながらコンラッドは指を動かした。
そんな顔をされると、もっと、もっといじめてしまいたくなるというのに。




「あっ…ぅ、んんん!」

後処理なんて嘘だ、と指摘したそのあとから中を探るコンラッドの指の動きが大胆になった気がする。

「んっん、ん、」

とぷりとコンラッドの残滓が掻き出されることにすら快感をおぼえて心底嫌になる。

「こ、の…っああああ!」

罵倒しようと開いた口は後からのびてきた手が胸の尖りをつまみ上げたことで中途半端なまま嬌声に変わった。
じんじんとした痛みがしだいに快感になっていくのが気持ちわるい。
理性はそう叫ぶのに火照ってしまった有利の身体はお構いなしに感度をあげる。
頭が沸騰しておかしくなりそうだ。
追い撃ちをかけるように、先程引っかかれたっきりそのままほったらかしにしてその回りを弱い力でなぞっていたコンラッドの指が有利のよいところを抉りあげた。


「ひ!ああああ………!」








脳内回路がショートしてしまったような衝撃のせいで、頭に霞がかかったような意識のままくったりとコンラッドに凭れていた有利は身体に触れた熱い雨に再び身体をビクつかせた。
温水のシャワー。

イッたばかりの身体に熱いシャワーの刺激きついというのに近距離で有利の身体に当てている。
先程吐き出した有利自身の精液を流してくれているらしく時折手を使って身体を擦られたりするのだが敏感になってしまった有利の肌は触れられるだけでそれを快楽に変換してしまう。

「はっ!あぅ、」

入り口を開かれそこにもシャワーの湯を注がれる。
コンラッド以外の熱いものが胎内に入り込んでいる状況に有利は目に涙を浮かべて頭をふった。
ビリビリと熱い奔流が有利を苛む。
コンラッド以外のものが入ってきているのがおそろしい。
でも気持ちいい。


「やっ、あ、あ、あ、あ、」

嫌悪感と気持ちよさ。
不安定に揺れていた天秤が快感に傾いたころ唐突にシャワーが止まった。

「んんっ」

内からお湯がこぼれ落ちてくる感覚にもぞくぞくと身体を震わせ有利はコンラッドを見上げる。

「終わりましたよ」

そういえば後処理をしていたのだった。
身体がすっかり綺麗になったというのにもう一度身体を洗わなきゃいけなくなる行為をしたくてたまらない。
疼く身体をもてあまして有利はコンラッドを見上げた。

「ユーリ…?」

とろん、と蕩けた瞳で有利は己の恋人にくっついて唇を開いた。
赤い舌が唇の隙間からちろりとのぞく。

「………コンラッド…を、ちょうだい………?」



恋人の唇が三日月のかたちにつり上がっていたことに有利はついぞ気づかなかった。







「……………」

いつものようにきれいさっぱり身体が清められ、シーツは新しいものに変えられたベッドの上。
さらに詳しくいうと恋人の腕の中で有利は目を覚ました。

喉がヒリヒリする。
腰がだるい。

もぞもぞと窮屈な腕の中で寝返りをうってコンラッドと向き合うかたちに移動した有利は眠っている男の頬っぺたをむにゅっとつまみ上げた。

「…もうコンラッド…中にだすの禁止…!」
「えっ!?」


ぐらりと視界が揺れる。
起き上がったコンラッドにそのまま押し倒され覆い被されて有利は眉を釣り上げた。


「え、じゃない!やっぱり起きてやがったなこの変態!!」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいユーリ!」



この有利の発言によってもう一騒動…一攻防あるのだがそれはまた別の話。



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初裏小説。

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