最強なんちゃら計画(伏せ字)

よくあるN番煎じ





主人を起こそうと魔王専用プライベートルームの扉を開けたコンラッドは思わず目を丸くした。
なにしろ自分の弟がユーリに対して寝技をかけていたのだから。


「こんの尻軽!」
「ギブギブギブキブ!!!」

何やら憤慨しながら腕ひしぎを決めているヴォルフラム。
そして腕ひしぎを決められ、ばんばんと布団を叩き降参を叫んでいるユーリ。
さてどうしようかと視線を彷徨わせたコンラッドは後ろ手に扉を閉め(こんなところを人にみられたらまた騒ぎになる)にっこりと笑みを浮かべた。

「・・・・・・ひょっとしてお楽しみ中だったかな?」
「だったらよかったのだがな!」
「んなわけあるかっ!助けてコンラッドー」
鼻をならしたヴォルフラムと痛みにあえぐユーリから間髪入れずに返事がかえってきた。




「それで?」

弟の腕から主人を救出しながらこっそりとコンラッドは訊ねた。

「うちの末っ子は何であんなに怒っているんです?」

腕をふって痛みを散らそうとしていたユーリはその問いに多少げんなりしながらベッドの真ん中辺りを示す。

「あれ」
朝起きたらいたんだ。

ベッドの真ん中。
ブランケットの塊。
その柔らかいブランケットにくるまってすやすやと幼い寝息がきこえる。
すでに嫌な予感しかしない。

「えーと・・・?」

コンラッドが慎重な手付きでブランケットを捲るとあらわれたのはふくふくとした柔らかい頬と小さな紅葉のような手。
閉じたまぶたの下はともかく、毛髪は夜の闇の色。
小さな手を握って、すよすよと幸せそうに眠っているのはユーリによく似た緑子だった

「いつ産んだんですかユーリ!?」

勢いよくユーリを振り返りつかみかからんばかりに驚いた声をあげたコンラッドに向けてユーリは髪の毛を引っ掻き回しながら叫んだ。

「お前もかブルータス!!」
「ブルータス!?それでわかった!それが相手の男の名だな!」
「ヴォルフラムはちょっと黙ってて!」

ローマの独裁官もシェイクスピアも眞魔国にいるはずもなく話が混乱を極める前にストップ!とユーリは両手を胸の高さまで持上げた。
ヴォルフラムとコンラッドがピタリと大人しくなる。

「俺は産んでもいないし作ってもいーまーせーんー。悪阻も陣痛もなければ鼻から西瓜もだしてませんー!」

妊婦だって鼻から西瓜は出せない。

「まず第一に俺は男だろ!」


「つわり、じんつう・・・?何をいっている?」


何をいっているのかわからない、と言わんばかりにヴォルフラムが頭をふった。
エメラルドの瞳が瞬きをする。

「子供は鳥が運んでくるのだろう?」
「うわー純粋な瞳!」
雄しべと雌しべ云々以前の問題だー!!






自分の婚約者(自称)のまさかの発言に混乱しながらユーリはその兄を振り返った。
コンラッドは自分の額を手で覆っていた。
字幕をつけるならあちゃー、といった様子だ。
思わぬところで発覚した弟の純粋さに戸惑っているのだろう。



「えっ、じ、じゃあキャベツ畑は!?」

ユーリが好奇心でおそるおそる訊ねると眉間にシワを寄せながらもヴォルフラムは律儀に答えてくれた。

「人間の国の子供はキャベツ畑からもいでくると聞いたが」
「へ、へぇー」

泉番組のボタンのような相槌をうってユーリは背後の護衛にこっそり訊ねた。
もしかしたらそれがこの世界の常識なのかも知れない。
この知識がいずれ眞魔国が少子化を迎えたときに役に立つのかもしれない。

「こっちの世界はマジでこうのとりが赤ちゃん運んでくるわけ?」
「いえ、」

そんなわけないじゃないですか、といいかけたコンラッドはふいに口をつぐんだ。
ちらりと視線をやったのはベッドの上で眠る赤子の姿。
そしてコンラッドは、するりとユーリの頬に手を這わせ耳元に口を寄せた。

「試してみます・・・?」
「・・・」

・・・・・・!!?
何を試すのだナニを!?
清々しい朝から桃色オーラを垂れ流しはじめた護衛に、ユーリは悲鳴をのみこんで大きく頭をふりかぶった。



ごつん、と鈍い音が響いた。
自分もダメージを追うことを承知でユーリが繰り出した頭突きは予想以上の痛みを双方にあたえたらしい。
あれはコンラートが全面的に悪い。
頭を抱えて悶絶している二人を尻目にヴォルフラムはうなずいた。
しかしユーリまでダメージを受ける必要などなかったのだが・・・。

それからベッドの中央でぐずぐずとむずがり始めた赤子をのぞきこんだ。

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next・・・?

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