あなたにメリークリスマス








湯気のたつココアのマグカップ片手にてこてこと血盟城の廊下を歩いていた有利は目を見開いた。
白のもこもこに赤い布。
有利の幾分か先を歩いているのは

「サンタだ」

どう考えてもサンタクロースコスチュームの人物だった。
見覚えがある気がするサンタの背中に声をかけようとした有利は背後からのびてきた腕に口を塞がれ引っ張られ何処かへ連行された。何となくこの人物に覚えがあるので黙って運ばれていた有利だったが、有利の口をおさえていた手が外されると同時に振り向いて叫び声をあげた。

「この素晴らしい上腕二頭筋は…ヨザッえええええなにそのかっこう!!」

白のもこもこ、赤い布。ふさふさのつけ髭、大きな袋。
驚く有利の前でヨザックはくるりと一回転してみせた。

「うふふー似合うー?陛下と猊下のお話とあとは隊長ですね。おかげていま血盟城はサンタクロースとやらが大流行なんですよ」

なにか世間話の延長だった気がするが有利と村田とコンラッドとクリスマスの話題について盛り上がった記憶があった。
そのなかでサンタクロースの話もしたのだろう。

「……そういえばサンタの話をしたようなしないような…」
「みーんな同じことしてますよ。城のなかサンタクロースだらけ」
「え、じゃあ皆サンタのかっこうしてプレゼント配ってるの?グウェンも?マジで?」
「といいますか、この衣装作ったのは閣下ですし。グリ江スカートがはきたかったのにーん!」
「やめてーミニスカサンタはお願いだからやめてー!」

くねくねとしなをつくるヨザックに有利は必死で懇願した。









「サンタかあ…俺もさっきヴォルフラムとグレタの所にお忍びサンタしてきたよ。サンタがいっぱいいるってことはグレタの枕元にはプライドが山盛りだね」

娘が城中の人に愛されていることを知ってか明日朝起きてプレゼントを見つけた愛娘の喜ぶ顔を想像したのか、嬉しそうににへらと笑う有利にヨザックもニヤリと笑いかけた。

「陛下の枕元にも沢山あるはずですよプレゼント。いまごろサンタが沢山押し掛けてるんじゃないですかね?ヴォルフラム閣下の分も合わせると姫様の分よりも山が大きいんじゃないかと」
「ココアのマグカップ貰いに行ってる間…いや現在進行形か、でおれの寝室にサンタ不法侵入しまくりなの?今行けばサンタに会えるの?」
「はいはいプレゼント確認は明日にしてくださーい。陛下が今日会うサンタは俺で最後ですよー、っと」

言いながらヨザックは有利の頭にくるりと手触りのいいリボンを巻き付けた。

「はちまき?」
「と、いうよりはカチューシャですね」

有利の耳の辺りで綺麗な蝶々結びを作ったヨザックはその出来映えに満足げに頷いた。
可愛いなんて誉められた健全男子の有利は渋面をつくってリボンの結び目に手をかけた。
その手をヨザックが阻む。

「とっちゃダメです」
「え、なんで?」
「皆で相談した結果、最高に贅沢なプレゼントを貧乏性の隊長に贈ろうということになりましてー」

と言いながらヨザックが肩にかついでいたサンタの大袋から取り出したのは大きな大きな靴下だった。
赤と緑のボーダー。
クリスマスカラーの毛糸の靴下を有利に向かって掲げながらヨザックは言った。

「だから陛下ーこの靴下に入ってさらにこの袋にはいってくれません?」

ちなみにそのリボンはツェリ様提供で靴下は編みぐるみ閣下、「そもそもカルガモの親にはカルガモの子供を与えておけばいいでしょう」と提案したのはアニシナちゃんで、プレゼントが陛下なことに今夜限り目をつむることが汁閣下と自称婚約者様からのプレゼントですね。
そんなことをいうヨザックに有利はポカンと口を開けた。
プレゼントの大会議。
血盟城ではどうやら本当にサンタクロースが流行しているらしい。
こんなにサンタが流行しているというのに有利はサンタ役をさせてはもらえないのだ。
大きな靴下の口を開いて今宵のプレゼントは笑う。

「………プレゼントに足がついているもんな、返品不可だよな!」
「そういうことです」

上腕二頭筋の素敵なサンタクロースはサンタらしからぬ悪戯っ子のような笑みを返した。







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クリスマスフリーにしようと思います。
一ヶ月お持ち帰り自由です。
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