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友人から映画のチケットをもらった。
別に興味はなかったが年下の幼馴染みがみたいと言っていたのを思い出して誘ってみたところ間髪いれずに返事が返ってきた。


頭を抱えた腐れ縁はそんな言葉で話をはじめた。




「断られたのか?」
「いや、『行きたい!』って」

じゃあなんでそんなに暗雲漂わせているんだよ、とは言えず(触らぬ神に祟りなしだ)ヨザックは黙ってコーヒーを差し出した。
「すまん」だか「ありがとう」だかをモゴモゴ呟いてコンラッドはマグカップをうけとる。
うわー隊長が俺にお礼をいってるよ。
ソファに座って項垂れている男の旋毛を眺めながらヨザックは明日の天気を確認しそうになった。
雪が降る…いやひょっとすると大嵐かもしれない。
実際のところ、ヨザックの住んでいるマンションに嵐のように飛び込んできたのはコンラッドで、鬼気迫る表情でインターホンを連打した彼はそれこそ雪でも降らせそうな暗雲を背負っていた。
いまだ暗雲を漂わせたままのコンラッドはコーヒーをちびちび啜って、ようよう口を開く。

「あまりにも間髪いれずに返事が返ってきたものだからちょっと心配になって」

五歳下の幼馴染み。
学年も学校も違うけれど家が隣の二人はとても仲が良い。
その日も幼馴染みはコンラッドの家にいてコンラッドは本を読みながら、幼馴染みは学校の課題を開きながらだらだらと、とりとめのない会話をしていた、らしい。

「友人と遊ぶ約束していないのか、とかそもそも友達はいるのか、とか虐められていないだろうか、とか」

コンラッドの問いかけにきょとんと目を瞬かせた年下の幼馴染みは次の瞬間腹を抱えて笑いだし、しまいには目に涙を浮かべながらコンラッドに答えた。
いわく、

「た、偶々予定が開いてただけだって!高校生そんなにスケジュールがつまってる訳じゃないから!」

ひでー勝手に人をボッチにするなよ!
ヒーヒー言いながら笑う幼馴染みに安堵したコンラッドは冗談めかしてもうひとつ質問を投げたのだそうだ。
「彼女はいないの?」
と。
するとどうだろういままで響いていた笑い声がピタリと止めて、幼馴染みは頬を掻きながら困ったように笑っていた。

「うーん…告白されたんだけどさ、なんか違う気がして…断っちゃったんだよなあ」

ここで凄まじい衝撃がコンラッドを襲う。
小さかった、いまだに小さいままだと思っていた幼馴染みが大人の階段を上っている!
自分に一番近かった幼馴染みが知らない間に誰かのものになろうとしている。



「で、結局隊長はどっちに衝撃を受けたわけ?」
「……………………後者」


コンラッドはがっくりと肩をおとして沈みこんだ。


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