朝起きると、見知らぬ天井ではなく、
見たことあるような無いような…そんな感じの天井だった。
ゆっくりと体を起こすと、体にある異変を感じた。
肌に滑る掛け布団が、妙にリアルに感じる。
ゆっくり目線を下げると、自分は生まれたままの状態になっていた。
恐る恐る手を布団の中に居れ、自分の股を触る。
布の感触が手になかった。
ゆっくりと手を引っ込める。そして、左隣をゆっくり見ると...
「・・・え?」

「どうした?」

見知ってる男がタバコを吸っていた。

「・・・・・・えーっと、」

「?」

なまえの頭に色々な記憶がよぎる…

「えっと、昨日、黒服と一緒に飲んで、それから…途中で遠藤さんに会ったんですよね、」

「そうだな」

「それから、一緒に飲んで黒服が……あーだめだ、思い出せない。」

「思い出せないか。ならいいんじゃないか?」

「え、待ってください。そんなの嫌です。」


遠藤の言葉に抵抗しようとなまえが身を乗り出す。
すると、掛け布団がするりと下に落ち、遠藤に上半身丸見えの状態になってしまった。


「Σ!うわぁあっ!えっと、これはどういうことですか!」

「なんだ、今更恥ずかしがってるのか?そんなの、昨日の夜には吹き飛んだと思ったよ」

「Σえ!?や、やっぱり昨日…私は貴方と…あやまちを。。。うそ、まじ。。。いやぁぁあああああ!!!!」


記憶も何もない。
ただ、昨日の記憶の少しだけしか覚えていない。


「ってか、此処は…遠藤さん家…うん?…」

「・・・ふぅー」

「なんで、私が遠藤さん家にいるのよ!!」

「あぁ?お前さんが言ったんだろ?…ほんとーに覚えてないのか?お?」


と、遠藤の顔が近づく。
慌ててなまえは顔を隠すように毛布にくるまる。
そして、昨日の出来事をもう一度思い出す。




昨日の夜。
借金の取立てが長引き、本当は昼までに終るはずだったが、夕方までかかってしまった。
そのため、一緒に取り立てに言った黒服と一緒に居酒屋へ足を運んでいた。
その時から、同行していた黒服たちは嫌な汗をかいていた。


『ちょーっとはぁ〜のみらさいろ〜!(ちょっとは見習いなさいよ)』

「だいぶ荒れてるな」
「そうだな」
もう何件梯子したか覚えていないくらい梯子している。
普通に行けば、8時辺りには解散できていた。
が、なまえはお酒が入ると絡み癖があった。
それはまた酷いものだった。
『なぁ〜にぃ、ふたりでしゃべってるのらぁ〜おー?もしかして…ぐっふっふ、あんたらふたり〜で〜きてたりぃ〜』

「ほんと、なまえに構うとめんどくさいな」
「あはは、言えてる言えてる。」

『ちょっとーなぁ〜にふたりでしゃべってのらぁ〜おー?』

「おんなじ事言ってるし...」
「なまえ!大丈夫か?立てるか?帰るぞ、お前そんなフラフラだったら遠藤さんに笑われちゃうぞ!」
もうどうしよもなくなってしまう時はなまえの先輩の遠藤さんの名前を出す。
『Σ!!起きてまっす!!たいちょー!いけるであります!』
すると、一瞬シャキッとするが、結局ダメっ。

「あーあ、変なスイッチ入っちゃった…、どーすんだよこれー」
「遠藤さん呼びます?」
「そうだな、おいちょっと、呼べ」
「はい」

『あれ〜どこいくの、今田君』
「あいつは今田じゃねぇよ、ほらなまえしっかりしろ!」
『えへへ〜しっかりしてるよ!ほら!ビシッ!ね?』
「ね?じゃないから…今遠藤さん呼んだからな」
『えぇ〜まじでぇ〜あはっはーやったぁーじゃぁ、えんどーさんに、だかれる〜』
乙女の「お」の字もないのか…と、黒服は大きなため息をつく。
『あれぇ〜?なんで、そんな深いしんこきゅーしてるんですかぁ〜?』
「(深い深呼吸ってなんだよ…)あ?遠藤さんまだかって思ってよ」
『Σえ!?えんどーさん呼んだの!?』
後、そうそう...記憶というかすぐに忘れる悪い癖がある。
今さっき言った言葉、今さっき自分から発した話をすぐに忘れる。
「(早く遠藤さん来てくれよ…)」

深いため息を何回かついていると、ものの5分で遠藤が現れた。

「大丈夫か?」
「あ、遠藤さん!見てください、寝ちゃいましたよ…」
「…ιはぁ、わかった。後は俺が何とかするから。悪かったな」
「いえ、それじゃぁまた明日!」
「あぁ。……はぁ。」




「…思い出せません」

「フッ、そりゃないぜ。思い出してくれなきゃー俺が困るってもんだ」

「だって、…なんも思い出せないんだもん…取り立ててそれで、終って黒服たちと飲んだのは最初だけ思い出せるけど…それからは…」

「とんだあまちゃんだな。」

「あまちゃんっていうか...あのーなんもないですよね…それに、ここって遠藤さんの家?ですよね、さっきも言ったけど…」

「お!思い出したか?」

「違います。…ホテルだったらこんなに汚いわけないし…」

「あ゛ぁ?」


遠藤がなまえの包まっている毛布を引っ張る。
すると、毛布は何の抵抗もしず遠藤のほうへひきずられ何も着ていないなまえが現れる。

「ちょ、あっ!遠藤さん!!毛布返してください!!」

一応大事な所を左腕で隠し、右手で毛布を返してもらおうと手を伸ばし足は重ね見せないようにしている。
遠藤側からなんとエロイ格好なんだろうか…
そのため、遠藤が少し見入ってしまう。


「遠藤さん!返してください!」

「……誘っているのか?」

「はぁ!?違います!!と、とりあえず思い出しますから、返してください!!」

「本当に思い出せるのか?一人で思い出すより誰かに思い出してもらったほうが早いんじゃないのか?」


布を床に捨てる。なまえがあぁっ!と、声を上げる。
そんなのお構い無しに遠藤はさらになまえに近づく。
後ずさりするが、後ずさりできないくらいに下がっていた。
どんどん遠藤が近寄ってくる。


「(あわわ。。。ヤバイ。ヤバイ。コレはヤバイ…一線越えてしまうのか!!だめだよ、だめだめだめっ!!!)え、遠藤さん!!」

「なんだ?」

「お風呂!!ほら、昨日ヤっちゃったんだから…ほらほら、ね?キレイにして、もう一回リセット!!って感じで・・・だめでしょうか…」

「昨日ヤったのか」

「え?あ、ヤってないけど、ヤったかもしれないし…」


曖昧な言葉が交差するが、少しずつなまえにも希望が見えてきた。
お風呂へ入るといい、一人になり冷静になる。
そうすれば、少しは思い出せると思ったからだ。
が、そんな事遠藤には丸わかりで逆に

「じゃぁ、一緒に風呂はいるか。ヤったかわかんねぇけどな。きたねぇのは嫌だしな」

「いっ、一緒!?いやいや、こ、これは一緒じゃないほうがいいと思う…」

「なんだよ、一緒に入ったら風呂でヤっちまいそうなのか?安心しろ、俺はベッドでしかヤらねぇから」

「いや、だからそういうんじゃなくて…」

遠藤を見ると明らかに遊んでいるように見える。口角は上がり、目も笑っている。
人を莫迦にするような目、そして人をおちょくるような目。

「(あーもーどうしたらいいのー!!!)」
「…なまえ」
「え・・・あ、(うわっ、ち、ちかいっ!!!)」

キスするまで5秒前じゃないが、それくらい近かった。
どうする事も出来ないなまえはもう目をつぶる事しかできなかった。

「・・・・・(・・・あり?)」

目をつぶっても何もない。ゆっくりと目を開けると目の前には遠藤は居なかった

「あれ・・・、遠藤さん?」

目で見える範囲には居なかった。もしや、と思い下へと目をやると遠藤がなまえの隣で寝転んでいた。

「遠藤さん?」
「…気がうせた。そんなに嫌かよっ」

ふて腐れて寝ていた。

「(…え?…え?ええええええ?)」

なまえの頭には「?」がいっぱい出る。
どうなってるか訳がわからなかった。
なぜ、すねた。なぜ、ふて腐れた…

「え、えんどう、さん?」
「んだよ」
「なんか、ありました?」
恐る恐る聞く。
「……うるせぇ」
「(あー怒らせてしまった…)」

ツンデレというか、なんと言うのだろうか…
先ほどまで、詰め寄ってきたものが急におくてになり、何もしなくなってしまう。
そうなると何故か物足りなくなってしまい、逆にかまって欲しくなってしまう…

「…遠藤さん」

なまえも遠藤のように体制を寝る形にし、背中にぴったりとくっつく。
優しい声で呼ぶ。

「んだよ、風呂はいりてぇなら行ってこいよ」
「…キス、しないんですか?」
「してほしくねぇんだろ?風呂行ってこいよ」
「お風呂、行って欲しいんですか?」
「お前が行くっつったんだろ?」
「…プッ。(行って欲しくないなら、言えばいいのに…)」

なまえの手が遠藤の腰へとのび自ら抱きしめる形になる。
そのなまえの行為に遠藤は一人吃驚する。
お互いの心臓の音が聞こえそうなくらい密着していた。

「…誘ってるのか?」
「誘ってます」
「嫌じゃねぇのかよ」
「嫌じゃないですよ。昨日の事教えてください」
「……結局それかよ」
「思い出せないんです。だから教えてください。そしたらもっといっぱい誘いますよ」
「そうかい。」

ぐりんっ、っと遠藤が体を返しなまえの顔を見る。
ニコニコしてるなまえが可愛く見えた。

「フッ、なんもなかったよ。ばーか」
「え?」
「さ、教えたんだ。ほら誘え。さぁ誘え。誘え!」
「…(なんだ、なかったんだ…)へいへい」



後から気がついた。
遠藤さんが私にキスしないでふて腐れて寝てしまった理由が。
のせられてしまったんだ…
奴の。奴の悪徳商法の手口が…
奴自信がノリノリにならなくても、相手をノリノリにさせてしまえばいいのだから…

また、次に起きた時に同じ手口で負けてしまうんだろう…


「(…莫迦だな。)」




悪徳商法 END



遠藤さんって書いてて面白いな。
なんか、コロッコロ性格が変わるというか、なんか全て読めている遠藤さん。ステキじゃん…
好きだわー。コレだから好きなんだよー!ばかぁー!
事情中に自分で自分を「莫迦だな。」って言っちゃう自分ってどんなんだろ。
自虐なんでしょうか?それとも、遠藤さんに全てさらしちゃえ〜あげちゃえ〜
っていう行為なんだろうか…
書いてて不思議になった事は黙っておきましょう(←こら)




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