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空はどこまでも澄んで
陽はやわらかく暖かく
身体の全てで受ける風は
限りのない勇気を与えてくれる

飛ぶのが好き

どこまでも自由に飛んでいけたら
どれだけ幸せだろう

いつの日か
この世界の脅威を絶やすことができたら
世界の果てまで飛んで行きたい

空にいる瞬間が一番輝いていた
穢れを知らない無垢な鳥のような彼女

私もいつか
そんなふうに







































「おいリーナ。朝任せた書類どこだ」

「っ、ごめんなさい・・・まだ、いま」

「はあ?おいおい言っただろ?俺が昼飯食べに行く前に終わらせろって」

「すみません・・・」

「鈍臭えなぁ!
お前、上に気に入られてるからって雑務は出来なくても良いとか思ってんじゃねえだろうな!?
ふざけんじゃねえぞ!」

「っ、そんなことは決して」



「ああもうどうしたんですか?そんな声張り上げちゃって」

「大方、リーナがまた使えなかったんでしょ。ほんと、うざったいわ・・・」

「訓練兵団を首席で卒業して、雑務なんてと調子に乗ってるんだろ」

「どうせ実力の首席じゃねぇんだろ。女ってのは楽なもんだよなぁ」







一体どこまで頑張ったら認めてもらえるのだろう。どんなに時間が無くても難しくても、出来る限りのことをして少しでも役に立てるようにしてるつもりだ。けれど、まだ足りない。迷惑ばかりかけて、場の雰囲気を悪くして。

早く、出来るだけ早く、あの輪に入りたい。早く信頼関係を築いて、先輩方と一緒に、壁外調査で連携の取れた討伐が出来るようになって。みんなで生きて帰ってきて、何度でも。巨人がいなくなって、この世界が住みやすくなるのなら。


「おい、聞いてんのか!」

「っ、はい!申し訳ありませんっ」

「これ。俺らが昼飯から帰ってくるまでには終わらせろよ。
上に叱られるのは俺なんだからな?今度こそやっておけよ?分かってるな!?」

「はい!」

「よし。おーいお前らー!飯行くぞー!」

「おー。もう腹ぺこっすよー」

「班長、あの書類って?」

「いつもの。班長の訓練報告書だよ。
昨日の訓練ちょっと規模がでかかったからよ、書くの大変なんだよ」

「昨日の訓練の?ってことはまだそんな急がないんじゃ?」

「ばかかお前は。他の班よりも出来るだけ早く出した方が評価も印象もいいに決まってんだろ?
それにあいつが書いたやつ出すと、上からの評価もなかなか良いしな」

「ああなるほど!
まあ、奴も雑務だけはなんとかこの班の役に立ててるわけですし、嬉しいでしょう」

「当たり前だ。それはそれは光栄なこった!」



楽しそうな声と足音が段々と遠ざかり廊下に消えていく。

そう、いま私が役に立てる事はこれくらいしかないんだ。
壁外調査に出ても荷馬車かその護衛しか担当したことがない。幸か不幸か、本物の巨人を見ることはあっても実際に壁外で立体起動装置を使うことは一度も無かった。訓練で先輩方と綺麗な連携を取れたこともない。何回か、口頭で説明してもらえた事もあったけれど、いざ訓練で実践しようとしても強固な信頼関係の前では私の力は到底及ばず、私が予想出来なかった動きには全くついていくことが出来なかった。
そうやって今まで何度も何度も、認めてもらうチャンスを逃してきてしまった。




「・・・お腹、空いたな」



呟いても同意してくれる人もいなければ、聞いてくれる人も誰もいない。晴れて爽やかな昼下がりだけれど少し、虚しくなった。



「飛びたいな・・・」







190522 修正


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