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「ね、れーくん、ゲームしない?」

「ん、?」


愛しい彼女との久しぶりの逢瀬。たくさん愛して愛された夜が明けて微睡みの昼前。
ようやくベッドから起きた彼女はテレビとゲーム機を起動させた。
もぞりと彼女をベッドから視線を向ければキャミソールの紐が肩からずれている。
そんな彼女は根っからのゲーマーで引きこもり気味。僕としてはあまり外に出られない身なので、家で過ごせるのは有り難い。しかし、彼女の手に持っているのはレースゲームを思わせるパッケージのゲーム。


「…そういうのもやるのか」


パズルゲームだったり、レースゲームといえば某なんちゃらカートだったり、王道RPGだとかそういうので、本格的なスポーツゲームが出てくるとは誰が思っただろうか。しかも彼女は車の免許も持っておらず、車にも興味がない。僕の愛車もすごいねーという感じでさらりと流された覚えもある。


「なんか痛車とか作れるらしいし、結構楽しいらしいよ」


起動させたゲーム機にディスクを入れ、コントローラーを2個取り出した彼女は画面に映し出されたそれらを片手でピコピコと操作すれば、いつの間にやら、車を選択する場面。


「れーくんはRX-7でいい?」


否定も肯定もしなければ彼女は僕と同じ愛車を選び、カラーもホワイトにしてようやくコントローラーを僕に渡した。


「私はどれにしよーかな。っても車に詳しくないんだよね…あ、これかっこいい」


コントローラーのスティックをカチャカチャ鳴らしたのが止めば映し出されたのはシェルビー・マスタング。


「おい」

「ん?」

「それは止めろ」

「なんで?かっこよくない?カラーは…赤にしようかな」


ピキッとこめかみに筋が立ったような音がする。よりによって宿敵でもあるアイツが乗っていた車に同じだと。さらに色まで同じと来た。


「ホォー……」

「?操作方法はね」

「いい。勝てるから」

「え、れーくんこれ初見でしょ?!」

「お前がその車を選ぶとはな…」


彼女は一般人だ。アイツの存在なんて知らないはずなのに、まさかこの大事なプライベート空間で思い出させるとは、いい度胸だ。…重ねていうが彼女はわざとではない。わかっているが他の男を彷彿とさせる行動に対するお仕置きだ。


「僕が勝ったら」

「勝ったら?」

「今日はもうベッドから出してやれない」

「は、?」

「お前は何度かやってるんだろ?そして僕は所謂初見プレイ。なに、お前が勝てばなんでも言うこときいてあげるよ。簡単だろ?」

「さっき勝てるから、って言ったじゃない…初見とか嘘でしょ!」

「やってみないとわからないだろ。ほらはじめてくれ」


初見というのは嘘ではない。だけど負けられないな。


「ゲームは得意なんだ」

「知ってるよ……」


このあと僕は勝って、彼女は負けた。今日の休みは全力で彼女にお仕置きという名で宣言通りベッドから出してやらなかった。


「ひゃ、あ……!!ふ、普段はれーく、んの…使ってるのに…っ!」


僕に溶かされ息も絶え絶えにそう言う彼女はさらに僕を煽ったのは気づいていない。




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