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(twtr/プラス/ネームレス)




二人とも家にいるときはなるべく同じ空間に一緒にいること。それが僕らが同棲するときの約束だった。
同じ職に就いている彼女も僕も仕事を家に持ち帰ることも滅多にないので、会話がなくともお互い好きなことをしている。
たとえば僕はPCでニュースを見たり本を読んだり。彼女は僕の横でストレッチをしたり、肌の手入れをしていたり、ベッドに座ってペディキュアを施したり……うん、夏だしな。サンダルを履くこともあるもんな。職務上、マニキュアを付けることはできないし、ペディキュアくらいは見逃してやる。だけど、


「待て、なぜ赤にする」

「へ?」


彼女の手に握られているのは赤のマニキュア。……よりによって僕の嫌いな赤。
それを今から足の爪に塗ろうとしているのを慌てて止める。彼女は頭の上に疑問符を並べて、困惑の声を溢した。が、すぐに理由がわかったのかあぁ、と納得して笑う。


「零は赤が嫌いだもんね」

「怒るぞ流石に」

「ふふ」


赤、といえば連想する人物を今お互いが頭に浮かんでいる。僕は腸が煮えくり返りそうな勢いだが彼女は笑いながら手に持つマニキュアを直す。


「仕方ない恋人さんですねー」


赤じゃなくて何色にしようかなあ、なんていいながら色とりどりのマニキュアのボトルを吟味し始める。笑われたものの素直に赤を塗ろうとしなかったことにホッとした。


「ね、零」

「ん、?」

「零が選んでよ」

「僕が?」

「そう」


がちゃり、とガラスのボトルたちが音を鳴らす。試しに1つ取ってみれば、綺麗なエメラルドグリーンの色のそれ。うん、グリーンもなしだな。ゴールド。ああ、これはいい。僕の髪と同じ色だ。それをじっと見ていると、彼女は僕から奪い取る。


「これ?」

「あぁ」


ふんふんと鼻歌を鳴らしながらキャップをくるくると回す。


「ゴールドには赤のライン引きたくなるね」

「止めてくれよ…」


片手で顔を覆うように拒否の姿勢を露わにしたら冗談だよ、とまた笑った。


「あ、」

「んー?」


今度は僕がマニキュアを奪い取る。あれ、と呟いた彼女の足先を掴む。


「ちょ、零」

「じっとしてろよ」


有無を言わさず、全部の爪に塗り終われば、今度は彼女が頭を抱えた。


「おっそろしい人。ただマニキュア塗るだけで終わらないなんて」


やってみると楽しいもので、ただゴールドを乗せるだけじゃなくフレンチネイルにしたり、ストーンを乗せたりと見様見真似で工夫を凝らしてみれば、女子力負けたな、と嘆きの声を頂いた。

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