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(twtr/あくまで降谷夢/ネームレス)







扉が開いて数年ぶりに会う幼馴染は目が腫れて消えてしまうんじゃないかというくらいの儚さで。
僕は久しぶり、となんとか声を振り絞った。
幼馴染はきょとんとしたあと驚いて残念そうな顔をした。
僕はもう一度久しぶりと言って心の中で謝った。君が待っている"あいつ"じゃなくて、と。

彼女が待っていたのは僕じゃない。
だがなんと言えば良いのかわからなかった。彼女の待ち人はもうこの世にいないと言えそうにもなかった。
突然現れた僕を彼女は腕を引いて家に入れた。土砂降りの雨は僕の全身をびしょびしょに濡らして、慌ててタオルで拭いてくれて更にはバスルームへと放り込まれた。


「着替え、ここに置いておくね」

と彼女が言っていたものを見る。
よく寝泊まりしていたあいつの服だろう。服から香る柔軟剤の匂いがあいつの匂いだ、と泣きそうになった。
だけど僕はまだ泣いてはいけない、此処で泣けば彼女が不安がるのは目に見えてわかっていた。

ほかほかと蒸気を発しながらリビングであろう部屋に入ると荒れた部屋だった。つい「これは」と口に出る言葉に頭をかきながら「忙しくて」と誤魔化された。
あいつが死んでから1週間程。その前から連絡を取っていなかったようだし心細くなりーーとなったのだろう。座る場所は確保したからと座らされる。

それからは無言だった。なにを、どう伝えればいいのか戸惑った。
やはり来るんじゃなかったと後悔さえする。巻き込みたくはないから、とあいつは言っていた。
だけど組織の潜入をしていたあいつの恋人となればいずれ見つかり狙われる危険性もあった。暫くはこの幼馴染を保護をしなければいけない。

意を決して言葉を発しようとする前にした彼女は立ち上がった。

「お茶淹れてくるね」
「いや、いい」

キッチンに歩き出す彼女の手首を思わず強い力で引っ張ってしまった。バランスを崩して背中から倒れる彼女を大事に抱き抱えた。細い手首に軽い身体。窶れが見えた。

「ちゃんと飯食ってるのか?」

しまった、となる僕に彼女は体勢を整えて僕と向き合った。この部屋の有様から食事も食べる気にはならない。昔から勘は鋭いので嫌な予感もうすうすしていたのだろう。そっと彼女が指先で僕の目の下をなぞる。隈が酷いのはさっき鏡で見て知っている。

「零こそ寝てないでしょ」

息を呑んだ。

「ねぇ、あの人は?」

とうとう切り出された質問に俯いた。肩の震えが止まらない。

「あいつ……しば…らく忙しいから…って…連絡取れない……」

視界ががぐにゃりと歪む。声が震えて掠れて嘘が吐けない。ふわり、と柔軟剤の匂いと共に僕は包まれた。

「もう言わなくていから…零」

ぽたぽたと涙をこぼした。泣いてしまった。泣かないと決めたのに。幼馴染のぬくもりが痛くて優しい。
膝立ちになって僕を抱きしめる彼女の背に手を回した。
ごめん、ごめん、ごめん。
たくさんの謝罪の言葉を唱えるように彼女に縋りついてしまった。
それは彼女にも、彼女の恋人であり僕の幼馴染に対して。





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