『たまには外でデートでもしよう。バイトが15時までだから店で待ち合わせで』
『私、そろそろ女子高生に刺されないかな…』
そんな会話をした昨日。
ライトブルーのシフォンスカートにアイボリーのレイヤード風シャツ、買ったはいいものの、普段着ない組み合わせだからずっと眠らせていた。
今日を逃したらもう着ないような気がしたのでこの機会に着用。
大人ゆるカジってやつだなこれは。鏡の前でスカートをゆらゆらさせて思う。
日差しが強そうだったのでキャップを被って家を出た。
ポアロに着いたのは14時半頃だった。
このまま待ってもよかったのだけど、流石に歩いてきて暑かったので、店内に入る。
女性の店員さんが案内してくれて席に座る。店内にはちらほらお客さんがいて、窓側の席には女子高生二人と小学生くらいの男の子がいた。
「ご注文はお決まりですか?」
店員さんに振られ、即座にアイスミルクティーを1つ、と注文する。
腕時計に付いている日付を見て、今日は土曜日だということに気付いた。
通りで人が多いはずだ、とポアロへ向かっていた際のことを思い出す。
「名前さん、来てくれたんですね」
お冷を持ってきたのは零だった。その台詞に店内は少しざわついた。視線が突き刺さるのを肌で感じつつも微笑んだ。
「ええ。早くお仕事終わらせてね、安室さん」
安室透と会話をするようになったのは最近だけど、このやり取りに慣れる日が来るのかわからない。
そもそもこれはモテても仕方ないな…。降谷零とは似ても似つかない言動は是非とも風見さんに見てもらいたい。
「もう少しだから待っててください。楽しみですねデート」
上目遣いで彼を見るとにっこりと笑顔で返される。
「!!」
ドキドキした。こんなのってないでしょ……。
これは偽りの顔で、本当の彼のことをわかっていても、それはずるい。
視線を反らすと、彼は私にしかわからないように意地悪く笑った。
背後にいる女子高生たちの視線がさらに厳しくなった。
ああもう……私の恋人はほんとによくモテること!!
「悔しい」
「なにが、ですか?」
タイミングを合わせお店の前で落ち合ってから呟いた私の言葉に彼はまだ敬語口調で話し掛けてくる。
「その話し方と笑顔にときめいた私が馬鹿だなあって」
「そうですか?僕は割と気に入ってるんですよ、これ」
「疲れない?」
「全く、とは言えませんけど」
「それにしても女子高生たちに殺されるかと思ったわ」
「ヤキモチですね」
「へっ?!」
「いやぁ、嬉しいです。まさか名前さんに嫉妬してもらえるなんて」
ポアロで待ち合わせした甲斐がありますね。先程のように意地の悪い笑みを浮かべる零。
「……零の馬鹿」
「今は透ですよ?」
しー、と唇に人差し指が当てられる。……身が持たない。
「さて、行きましょうか」
差し出される手に、半ばやけくそになりながら、腕を組んだ。
「ねえ、ここお店の前っていうの忘れてたってことはないよね?すごい視線浴びてるんだけど」
「勿論。わざとですよ、ここで待ち合わせをすることから。今後、僕の仕事もサポートする以上、正々堂々と恋人として知ってもらった方がいいでしょう?」
「……」
本日何度目かの笑顔を振りまかれ、もうくらくらしちゃうわ!
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