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『ふ、あっん……れ、ぃ…』


折れそうなくらい細い腰、揺れる乳房。必死で枕に顔を埋めて、シーツを固く握りしめる名前。

後背位は名前の感じた顔が見れないのが残念だが、これはこれで良い。

名前のだらしなく開いた口内に指を侵入させる。上の口も下の口も自分を受け入れさせ征服感をこの身で味わう。締まる彼女のナカで自分も達しそうになったとき―――




「嘘だろ……」

ハッと目を覚ましたとき、目の前は自室の天井。もう少しで、というよりもこの年になってそのような夢を見ることになるとは思わなかった。
掛け布団を捲り上げると明らかに分厚いスウェットの上からもわかるほどに膨らんでいる己のモノ。

溜め息すら出なかった。







「おはようございます梓さん」

「安室さん、おはようございます。朝から疲れてます?」


シャワーを浴びて自身を落ち着かせてからポアロに出勤した自分を見て梓さんは言った。

正直これが風見や苗字になら素直に疲れたというところだが、生憎此処は降谷零ではなく安室透としていなければならないので、そうですか?と言って誤魔化した。

とりあえず今日はポアロで大人しく働こう。気恥ずかしい夢を見たお陰か今日は公安に寄って苗字と顔を合わせたくはないな……。





――――


降谷さんに伝達をお願いします、と言われ、私は初めて安室透の潜入先のポアロという喫茶店にきた。
あの有名な眠りの小五郎こと、毛利小五郎探偵事務所の1階に構えてあるお店。

先程すれ違った女子高生は多分ここから出てきたのだろう。言葉の端々に安室さん、と名前が出ていた。

女子高生に人気すぎるというのに私が行ったら余計な反感を頂きそう……背中に悪寒が走る。

電話だと盗聴の恐れがあるからって……風見さんもまた面倒なことを私に任せたな…。
遅いランチのつもりで客として入るか。渋々ながら、扉を開いた。

ベルが鳴り、いらっしゃいませとにこやかに出てきた店員は公安では絶対に見ない笑顔な上司。
彼は一瞬固まったが私が笑顔を返すと快く席に案内してくれた。

カウンターに座り、立てかけられたメニューに書かれていたハムサンドと好物のミルクティーをお願いすると、かしこまりましたと普段はふてぶてしく命令する側の人からの返事に内心、面白いと感じた。

表でクスクス笑うと後でどんな目に遭うかわからないので表面上は、普通のつもり。


鞄から手帳を取り出して風見さんからの伝達を書き込む。端から見れば、普通の会社員の素振りをして、ハムサンドを待つ。







――――



よりによってこんな日に名前が此処に来るとは想像していなくて引きつった笑顔がなかなか離れない。
茶葉の入ったポットに、お湯を入れて蒸らす。
そして、ハムサンドを作る手が震えつつも視線は名前に向かう。

今日はアプリコットのルージュを引いて、キラキラとラメが乗った唇。
胸元が大きく空いたシャツは後で叱るか。スーツはぴしっとしてるせいでくびれからのシルエットが綺麗すぎる。

店内には女子高生もいるが、彼女の圧倒的なスタイルと可愛さに文句も言えないようだ。


「お兄さん」

「なんでしょう?」

「お名前、なんていうんですか?」


手帳になにかを書き込んだと思ったら、顔を上げ微笑む名前。
くそ…不覚にもときめいたのは今日はイレギュラーなことが多すぎるからだと思いたい。
そういえば彼女が此処に来るのは初めてだった。……ならば乗らないといけないな。
大方、風見からの伝達だろう。少し冷静になった頭で一気にハムサンドを仕上げる。


「安室といいます、こんな可愛らしい方にはぜひご贔屓にして頂きたいですね」

「あら、お上手ね」


紅茶を注ぎ、彼女の前にカップとミルクを置いた。


「お先にこちらをどうぞ」

「ありがとうございます」





━━━━


上司が料理上手なことは今更なので、ハムサンドも私の好きな料理だ。特にマヨネーズ多めが好きというのもわかっている。まさしく、彼が家で作ってくれるのと同じ味だ。
ミルクティーもまた私好みの濃さで、あっという間に空になってしまった。
お昼を食いっぱぐれたけど、ここで上司の手料理が食べられたから満足した。
"用事"は終わったので、伝票を持ってレジに進むと、彼がすぐにお会計してくれた。



「なかなか板にあってるじゃない」


小声でそう言うと、やや苛々した口調で今夜覚えていろよと入店したときと同じ笑顔で言った。表情と台詞が全く合っていない。



「ねえ、なにもしてないんだけど」

「お会計1600円でございます。…煽ってくるのが悪い」

「じゃあ2000円からお願いします。意味わからないんだけど」

「はい、2000円お預かりしますね。今晩、そっちに寄る」

「はい」

「400円のお返しです。ありがとうございましたー」


会計の途中の合間合間にこんな会話が交ざっているなんて近くで聞かなければわからないだろう。彼とこういうやり取りを交わすなんて思いもよらなかった。

これ以上面白がると怖いので、早々に退散する。あのメモには気付いてくれるかしら?




━━━━


名前が店を出てから後片付けをする。ソーサーの下にメモが挟まっているのに気付く。彼女の本来の用事だ。
メモをポケットに入れて、残りのシフトをこなした。

今晩、夢よりももっと激しく鳴かせてやろうと謎の決意をした。






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