「う、んんんー……」 カーテンの隙間から溢れている陽の光があまりにも眩しすぎて、瞼をゆっくりゆっくりと開く。 陽が高い。朝というよりはお昼前かな、とか考えていたら、後ろから声をかけられた。 「名前」 「とっしー、酒臭い」 「お前が飲ませたんだろーが!」 頭痛ぇし、お前はなかなか起きないしと言葉を吐いた彼の腕はしっかりと私を捕まえていて、このまま離さないでくれたらいいのにと、思った。 でも、するりと、彼の腕は放たれて背中で感じてた彼のぬくもりもまた、昨日の銀時との別れのような気がして、慌てて彼の方を向いた。 「あ?」 「ねー、とっしー、足りない」 「昨日さんざん飲んだだろーが」 「酒じゃなくて!」 両手を彼の首に回してしがみついた。その首に顔を近づけ、まるで吸血鬼のように歯を立て噛み付いた。私の言葉の意図を漸く理解したとっしーは私を組み敷いてニヤリと笑った。 「昨日も散々やったのに足りないってか?ほんと、名前は好き者だな」 「だって、ねえ?好きなんだもん、繋がるのは」 私も、ニヤリと笑えただろうか。そんなことを考えていたら、私の首も噛み付かれて、余計なことなんて頭から吹っ飛んだ。 ーーーーーーー 「あ、ひゃ、んっ、ああ、!」 呼吸が間に合わない、苦しい。 でもきもちいい。もっと、ほしい。 枕に顔を突っ伏しシーツを握りしめる。後ろからくる快感はきもちよすぎて、ぶっ飛びそう。 「っ、と、っし、」 「んだよ、もう限界か?」 息も絶え絶えに、私を突く彼の名を読んだ。余裕そうな声がすぐに返ってきて、私はまだイカせてくれないのかと、少し残念なような気がして、でももっとほしい気持ちもあって。 「ん、っ、あ、はぁ、」 律動が深く、早く。 ぐっと私の片手は引っ張られて少し起き上がるような形になる。 さっきまで当たっていたところが、ずれてしまったけど、そこがピンポイントで、気持ちよくて、身体がびくびくと震える。 とっしーの指によって邪魔されながらも、声は漏れ出て、なんだか支配されてる。それすらも私の興奮剤。 昨日足りなかった分がかなり補われていく。あー‥気持ちいい。 ーーーーーーー 「名前、離せよ」 「やだやだ、もういっかい」 「あのなぁ……俺がもう無理なんだけど」 「えー、けち」 さっきまでは明るい陽の光が差し込んでいたのに、既に夕焼け。 そんなにどっぷり行為に勤しんでいたわけでもないけど、数えきれないくらいイッてしまった。 帰りたそうなとっしーの片腕を抱きしめながら、もう一回とせがむ。 「それ以上やると、明日立てなくなるぞ」 「え、ほんと?」 「嬉しそうな顔してんじゃねーよ」 「けーちけち」 「そんなに満足したいなら、アイツ呼べばいいだろ?お前の頼みなら喜んで来るだろ」 と言ってとっしーは空いているもう片方の腕で煙草をとって咥えて火につける。 甘ったるい空気が煙草の煙で苦くなる。 「会議だって帰ったんだもんー」 「あー、呼び出されたのはアイツの代わりなわけ」 「代わりっちゃ代わりだけど、とっしーとこうやってちゅーしたり、したかったし?」 「ああそうかい。じゃあ今晩ならくるだろ」 「別にいいや、今はとっしーがいい」 その言葉に嘘偽りはない。「今」は。 銀時とも、とっしーとも別に恋人じゃないし、ヤりたい時に呼び出すいいお友達。 お友達はまだいるけど、よく遊ぶのはこの二人。 「もっと大事にしろよ、自分のこと」 「……そうだねー」 「俺は……こうやって名前を慰めることしかできねぇけど、お前が、本当に求めてるのは「とっしー」 彼の言葉を遮るように名を呼ぶと、悪いと呟いた。別に怒ってはないけど。それ以上その事はなにも言って欲しくなかった。 私は腕を離すと、床に転がったビールの空き缶を拾って、彼に差し出した。この家には置いていない灰皿の代わりに。 160222 |