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カリッと、小さく音が鳴って、口の中でゆっくりと広がる甘さがなんだか足りなくて、もう一粒金平糖を口に放り込んだ。



『全部食うなよ、』



そう言って彼が置いていった金平糖。以前、彼の糖分補給はいちご牛乳かチョコレートパフェなら、私の糖分補給はなに?とじゃれあいながら話したことがあった。その時は俺がいるだろ、なんて返されたけど、それ以降、何故か金平糖を自分が食べると前提した上で、持ってくることがあった。



『銀ちゃんがいない間の糖分補給だね』

『おー、でも俺も食うんだからな忘れんなよ』

『はいはい』



静かな部屋にまたカリッと鳴った。


金平糖が入った瓶を大事に抱えて、一粒一粒、ゆっくりと噛み締める。



「早く来ないと、なくなっちゃうよ」



瓶の中身はあんなにも色とりどりで綺麗だったのに、量が減り、桃色や黄緑色がなくなり、ほとんど白い金平糖だけが残ってしまった。


全部なくなってしまう。

それでも彼はもうこの部屋に来ることはないかもしれない。
一緒にじゃれあうこともない。
彼がいない間の糖分補給のはずなのに、私は彼と会って彼で糖分を満たすこともできない。


『うそ、だって、銀ちゃんが、なんで』



銀ちゃんがいなくなった。
ある日突然、普通に消えた。
今は生きてるのか死んでるのかわからない。みんなはもう死んでしまったんだと言う。だけど私は死んでいないと思ってる。
だってこのかぶき町のヒーローがそんな簡単にいなくなるなんて信じたくない。




塞ぎこんで引きこもってしまった私を心配しながらも神楽ちゃんに新八くんはばらばらになってしまった。地球は一気に荒廃し始め、わけのわからない病原菌に周りは倒れていった。



「銀ちゃん、」



寂しい、会いたい。貴方はどこにいったの。



「金平糖、もうなくなるね」



今、戻ってきたら、きっとたくさん怒られるね。でも、もうこの町に金平糖なんて売ってないんだよ。



「なんでもいいから、会いたいなあ」


枯れゆく自分の身体に苦笑いしつつ、目を閉じた。ただ、銀ちゃんに会いたいと思いながら。次に目を開けたら、きっと銀ちゃんは傍にいてそっと頭を撫でて私が起きてるのを待ってくれていたらと夢を見て。








「おー、おはよ」

「おはよー銀ちゃん。来てたの?」



頭の上に置かれた暖かくて大きな手の上に自分のそれを乗せた。なんだかよくわからない夢を見たような気がする。



「どうしたよ?」

「……んー、なんもないよ、あ、また金平糖買ってきたの?」

「名前ちゃんのことだから全部食ったのかと思ってよ、やっぱりねぇしな」

「ごめんね、寂しかったの」

「まぁ、銀さんの代わりだし?これ」

「んー」

「なにまた寝んの?」

「寝ない」

「うそこけ、あと3秒で落ちんだろォがァァァ」



ぐいぐいと頬を引っ張ったと思ったら、銀ちゃんが私の上に覆い被さってきた。甘い砂糖がふんわり香ってこれから降ってくるであろうキスを待つ。










131209


title √Aさま


銀魂連載10周年おめでとう

完結編DVD発売記念(まだ発売してませんが)

映画の内容うろ覚えすぎて……








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