とても穏やかだった。
つい数旬前には色々とあったのに。あの旅が、戦いがまるで遠い昔のように感じられた。
それほどまで、今この瞬間が幸せ。
隣で眠る彼も、同じ気持ちでありますように、なんて少し恥ずかしいことを思ったりして。
旅が終わって一緒に暮らすのはそう時間がかからなかった。ミラとミュゼを見送り、再びリーゼ・マクシアの地に帰ってきた。
これからはさらに忙しくなるよ、とジュードが拳を握って呟いた。
そうだね、と私は返した。
ミラがくれた時間を、私たちはどう過ごそう。否、その答えは皆決まっている。 ……私以外は。
『おまえはなにかやりたいことはないのか?』
『あんまり決めてない。でも、今はミラの力になりたい。精霊が死んでいくのは嫌よ』
『そうか、それもお前が決めたのなら……お前の本心ならば仕方がないな』
『ミラがくれる時間を無駄に過ごさないことだけは約束する』
『なまえ、……ありがとう』
ガイアスとミュゼとの戦いの前日に交わしたミラとの会話を思い出す。
「ごめんね」
ぽつり、ミラに向けて謝った。同時に彼……アルヴィンの眠る顔を眺める。
『これからどうするんだ?』
『アルヴィンは?』
『……アルクノアのメンバーを探して、これ以上テロ行為を辞めさせたいと思ってる。きっとこのまま世界が統合しちまっても、たぶん同じこと繰り返しちまうだろうからな』
『そう、なの』
『だから、もしお前が何をどうするか決めてなかったら、一緒に暮らさないか?』
恋人かそれ未満か微妙な関係だった私たちが大きく前進したのはその日からだ。
「よかった」
貴方についてきて。 でも、
「ごめんね」
ミラ。時間を無駄に過ごさないって言ったのに。
何度も頭をぐるぐるする、ミラとの会話にこれ以上落ち込まないよう目を閉じて、アルヴィンの胸板に顔を埋めた。
これ以上夜が更けるのはよくない、いろんなことを考えてしまうから。
まどろんできた意識の最後にもっとアルヴィンに近付いた。すでに距離なんてものはないのだけど、さらにくっついて、この不安をかき消してほしかった。
ーーーーーー……
なまえが完全に寝入ったのを見て、優しく背中に腕を回した。
「ごめんな」
頼りにならないやつで。それとも俺を信用するのはまだまだってことか、いや、自業自得だな。
苦笑や、嘲笑混ざりのため息を吐きながら、なまえの額に口づけた。
なにがそんなにお前のこころを悩ますのか、理由はわかってる。 でもこれから先のことは誰だって不安なものだ。
だが、焦るなまえにそんな慰めは欲しくないだろう。 なによりもミラを慕い、ミラと過ごしてきたんだからな。
「おやすみ」
それでも、いつか、自分から弱音を吐いて頼ってくれれば、と俺は逃げ腰になりながら思った。
どうか夢のなかでは苦悩しないでくれたら
20130907
中編になるのか、長編になるのかわからない…… X終了〜X2始まる間のお話。捏造多。
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