組織の2である"ラム"と思しき人は女性だった。警察庁のサーバールームに不法侵入しNOCリストを奪われたものの風見さんたち公安の部下が押し入った。
だけど、すぐに伸されてしまい、彼女は私と降谷さんが待機していた廊下へとすぐに走り寄ってきたので、まずは私が先陣として彼女に攻撃を仕掛ける。
こう見えても武道は警察学校時代、女子の中では主席だ。降谷さんには敵わないけど、風見さんなら勝てる、そう自負している。
「ちっーー!!」
さっきまで目の前にいた彼女の舌打ちが頭上で聞こえてくる。早い。
隠し持っていた私の特殊な警棒……というより棍棒にも近いその武器を素早く彼女の脇腹に当てる。
私専用で作られた公安お得意の違法な武器だけど、銃をぶっ放すよりかはこれを使うほうが気が楽だった。
私の攻撃でヨタついた彼女はそれでも走るのをやめなかった。だけどさっきよりも格段にスピードは落ちた。
すぐに彼女を追うと、降谷さんが曲がり角からひょっこりと姿を現す。
ボクシングを嗜む……いややりこんでいる降谷さんと格闘している。流石だ。回し蹴りすら美しく見えた。
最後の1発は額へ。その衝撃で左目からコンタクトレンズが落ちる。
「降谷さん、みょうじさん!!大丈夫ですか!?」
風見さんの声でハッとする。月夜に照らされたその女性は銀髪で右目が黒で左目は青のオッドアイを持つ、綺麗な女性で息を呑んだが、降谷さんは一瞬たじろいた。
「その目…まさか!」
「!!」
思うより行動は早かった。私は警棒にあるスイッチを入れて、彼女にぶん投げる。予想外だったのか彼女は反応が遅く、それは上手く足に当たり、電流が走って呻き声が聞こえて、私は彼女を確保しようと動く。降谷さんもハッとしたもののすぐに風見さんから「ズレて!!」と声がかかる。
「みょうじさんも早く!」
「っ!」
あともう少しなのに。脇にずれると、彼女はふっと笑い、窓の方に向かい走り出す。
「ちょ、嘘でしょ?!」
その言葉を言い終わる前に彼女は窓ガラスをぶち破り、警察庁の外に出た。
「みょうじ追うぞ!」
外を確認しようとする私に降谷さんはついて来いという。え、と思ったらもう降谷さんは走り出していて、風見さんからタブレットPCを投げられる。
「みょうじさん、そっちのサポート任せましたよ!」
風見さんからも行け、との言葉にタブレットPCを抱きかかえ後を追う。すぐに後に追いついて、置いてある彼の愛車にすぐに乗り込んだ。
「私を連れて行っても大丈夫なんですか?!」
私のことを気に掛けるよりも、いつもみたいに降谷さん個人で動くほうが早いのでは、という正直な疑問はすぐに解消された。
「お前が言ったんだろ、現場に出るって。…掴まってろよ!」
「っ、はい!」
初めて、置いてけぼりにされない嬉しさが込み上げてきた。でも、その前に私は彼のサポートを務めなくては。
タブレットPCを起動させ、風見さんと連絡を取り入れた。