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ただ、ひたすらに彼を追いかけていた。
彼の呪いも気にせず。
それでも彼は私を邪険にするし、何度も怖い目付きで睨まれたけど、本当に嫌われてないっていうのはわかっているから付いてきてしまう。
そして私は海賊の仲間入りをした。
こういうのって男の人だけで、女の人っていちゃいけないのかと少し愚痴になってしまったら、アイフリードに笑われた。

ーーーーーーそんなもの気にするほど、海賊の懐は狭くねえよ、それがお前の決めたことならな。

アイフリードはこういう人。降臨の日が来て、私たちは普通の人にも見えるようになったけど、それでも海賊のみんなは私たちを受け入れてくれた。


「ありがとう、アイフリード」

「#name名前#」

「……アイフリードがいなかったら、私はあなたの側に居られなかったから。いっぱい感謝してる。……まだ恩も返せてないよ」


バンエルティアのみんなが弔いをしている間、岸にしゃがんで水面を見ていた。ただ、小さく、誰にも聞こえるように言ってなかったけど、彼は……アイゼンは私の名前を呼んだ。


「ヤツはそんなこと思っていない」

「わかってる。でも、私にとっては友達とかじゃなく、恩人だったよ」


アイゼンを追いかけて数百年。一緒に居られることになって、本当に幸せだった。
前の生活も嫌ではなかったけど。
でも、アイフリードという私とアイゼンの間にいた繋がりは物理的に消えてしまった。
また、彼は、色んな所に行くのだろうか、私はまた追いかけるのだろうか。


立ち上がって振り返る。アイゼンの視線が文字通り痛い。ほんと、目付き悪いなあ。


「……なに?」

「俺はこれからもアイフリード海賊団の副長だ」

「アイゼン」

「……この身がドラゴンになればわからんが」

「……それは私もでしょ?」


私たちはたくさん穢れに塗れている。それが嫌だと思わないのは何故だろう。
ドラゴンになれば終わりなのに。


「今からでも遅くはない。#name名前#、エドナの元に戻れ」


きっと彼といるから。充実した日々を今、過ごせているから。きっとエドナに怒られるわね、私たち。


「……傍にいるのはエドナの頼みでもあるから、そうやすやすと戻るわけにはいかない。そんなに私が、きらい?」

「そういうわけじゃない、ただ俺は……」

「アイゼン。私がドラゴンになったら、ちゃんと殺してね」

「いい加減にしろ#name名前#。そろそろ本気で怒るぞ」

「うん、怒って。それでも、貴方から離れたくないし、守りたいよ」



手を伸ばして彼の頬に触れる。身長の差が大きすぎて昔のように頭を撫でることができない。



「エドナもアイゼンも守るよ。だって私の可愛い弟と妹だものね」

「……#name名前#」

「行こう、アイゼン。全部終わってから、ね?」



船の航行準備は整った。ベルベットが船の上で苛立ちながらも待ってくれている姿が見える。



「流石にもう逃げられないな」

「この私から逃げようとするのが間違ってるのよ。これからもたくさん追いかけてやるから」



やれやれといような溜息。それでいて嫌そうじゃないそれは漸く本当に落ち着ける場所ができたんだと確信した。



「ほら、アイゼン。そろそろベルベットに喰べられそうな勢いよ」

「む、」




空を一瞥して、アイゼンの手を取って船のほうに走り出す。あと数百年は泣かないから、今日だけ、今だけ、泣かせて。







161011

title/自慰さま






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