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――――信じたい



嘘だとわかっていることでも、みんなが信じなくても、あたしだけは信じたい。あたしだけは貴方にとって安心出来る場所で居たい。




「居たかった、の」

「……悪い」




俺に押し倒された彼女は、キスにも応えず、黙って涙を流した。俺は手のひらを力強く握って爪が食い込む痛みを甘んじて受け入れた。




「アルはなにも悪くないの、私の、心が狭いから」




手を伸ばしても届かない。ただ名前は笑う。




それが、……元恋人の最期を彷彿とさせる。




「……あの人が死んで嬉しいとは思ってない。でもアルを、あたしは支えられる存在じゃないって」




無力でごめんね、と呟く彼女に再びキスをする。大切な彼女に予想以上に辛い思いをさせているなんて思ってもいなかった。
――――だって彼女はいつだって笑っていたから。
唇を離すと彼女は瞬きを一つして、俺の下を潜り抜けて後ろを向いた。




「名前」

「ごめん、ごめんね……あたし、最低だね」



「……そんなことねぇ」



名前を後ろから抱きしめ肩に顎を乗せた。震えているのは彼女か俺か、それとも両方か。力強く抱きしめて次は逃げられないようにする。



「最低なのは俺の方だ。お前の辛さをわかってやることも出来なかった。挙げ句、お前を泣かせるなんて、な」

「ア……ル」

「俺はもう……お前のことしか見てねぇよ」



それだけ、信じてくれればいいから、絞り出すように言った小さな小さなその言葉に彼女は何度も頷いた。






ぼくはきみのものなのに



(お前とやっと、繋がった気がするよ)








title/家出さま





111027





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