「ん……!」
どろり、と胎内から排泄される感覚が気持ち悪くて目が覚めた。薄い毛布が掛けられていても肌寒いのは一糸纏わぬ姿だからだろうか。
「おはよ、お嬢さん」
「んー……おはよう、アル」
鏡を見ながらスカーフを結んでいる恋人……アルヴィンを見た。もう朝か……。身体を起こすとさっきの排泄された……きっとアルヴィンの精液なのだろう……ものがシーツへと垂れる。それすらも気分の良いものではないし、なにより、いつも処理をしてくれるのに。……まあ故意なんだろうけど。
「仕事……?」
「そ。名前にも来てたぜ」
ベッドの横に置かれたサイドボードに丸まった紙が目に入る。
「その前にお風呂。……気持ち悪い」
「じゃあ俺は先に行くわ」
「アルの馬鹿」
「おいおい、なんだって言うんだ」
ようやくアルヴィンが私のほうを向いてベッドに腰掛ける。ぐっと肩を掴んで抱きつく私に驚いたようにアルヴィンもまた抱きしめてくれた。
「シーツぐちゃぐちゃ、中に出したくせにそのまま……もー最悪」
「シーツは俺だけのせいじゃないだろー。おたくがあんあん鳴いて締め付けっから悪い。んで俺も疲れたからつい寝た。って感じだなこりゃ」
「……馬鹿」
「……名前」
、と私を抱きしめる力が強くなって耳元で囁かれる言葉。
「なに?」
「……マクスウェルの監視役になった。暫くはまた戻ってこれない」
「うん」
「わかってるだろ?次に会うときは」
「他人のフリ、でしょ。わかってるよ」
アルヴィンの目を見て笑う。頬に口づけをし、いってらっしゃいと声を掛ければ、ああ、と立ち上がり部屋を出て行った。
「……」
綺麗に畳まれた私の服の上にはオレンジ色のスカーフ。それを見て、私を縛るアルクノアの組織がまた憎くなる。
「帰りたい、なあ」
ずっと遠い故郷を思い出して涙が流れた。精液が流れていく感覚をも消し去れるくらい、哀愁に駆られる。
群青の空、瞬く時 (……さよなら、アル)
title/√Aさま
111020
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