しぃ、っと人差し指を当てて、彼はウィンクをした。久しぶりに見た彼はなんだか前に会ったときよりも随分ボロボロだった。
「アル……?」
「わり、ちょっと余裕ないんだわ」
土埃が舞って、私の視界はさっきまで背を向けていた部屋の向こう側へと移る。いつの間にか玄関の扉を背に、彼は悠々と私の首筋に舌を這わせた。
「ひゃ、っ……」
ごつごつした手が服の中に滑り込み忙しなく身体を撫で回す。ブラのホックを慣れた手付きで外し、胸の頂きをぎゅっと摘む。久しぶりの感覚に何だか興奮してしまう。
「あ、アルっ……」
「おっと、そういえばただいまのキスはまだだっけ?」
荒々しいアルのキスを受けながらも目一杯に舌を絡めて、彼の首に緩く腕を回す。熱くなってきた身体を押し付け、アルがくれる快感をねだる。だけどちょっぴり意地悪な彼は焦らしながら私を攻める。
「ぐっちゃぐちゃだよ、ほんと」
「ん、だっ、てぇ……」
「俺以外の奴とシてないってか。嬉しい話だねぇ」
嬉しい話だなんて、本当に思ってないくせに。嘘つきだってこと知ってるんだから。……なんて言えるわけないし、今はただ身体を預けたい。 私の中に入る指はバラバラに動かされ、甘い水音が耳まで犯す。立っていられなくなりそうだけど、アルが当たり前のように私を支えている。やがて意味のなくなった下着が引き抜かれ、片足を持ち上げた。些か、早いペースで事に及んでいるが、さっき余裕がないとか言っていたし、溜まっていたのは彼も同様みたいだ。
「いくぜ……っ」
「んんっ、ぁあっ」
下腹部に圧迫感を覚えつつ、揺れる身体。こんな体勢も初めて、こんな彼を見るのも初めてだ。余裕がないだなんて言いながらも、しっかりと私の感じる場所を執拗に突き、支えているほうの足がガクガクしてきた。
「ぁ……っん!そこ、だめぇ……」
「あーなに?イく?」
こくこくと彼の言葉に頷き、ありったけの力を込めて、しがみつく。頬に軽くキスをして、腰を落として、膣のぎりぎりまで性器を引き抜いた。
「や、あっ、あああああっ!!」
のは一瞬で、深く子宮に届きそうなくらい私を貫く。何度も何度もやられて脳が麻痺してきそう。もう、本当にだめ。
と、今までで一番強く突かれて呆気なく私は達した。アルもまたすぐに、達して、欲を中に吐き出した。
「はぁ……はぁ……ばか、さいてー!」
「そんなこと言うなって、これでも俺だって我慢してたんだぜ?」
「うそ」
「ほんと」
「ほんとに?」
「あーら、信用できない?んじゃ、そろそろ移動しますか」
「どこ、に?」
口角をあげてニヤリと笑うアル。嫌な予感しかしない。
「1回だけじゃ満足できねーの。なんたってずっと我慢してたんだからよ、ま、今夜は眠らせねぇってことで」
未だに身体が繋がったままの私の足を抱えて、寝室に向かうアルの顔はまるでいたずらっ子のようだった。
「ちょ、アル……」
「はいはいそんな締め付けなくても、ちゃんとイかしてやるって」
「ち、違うってばっ。……おかえり」
「……ただいま」
ベッドに降ろされて、仕切り直しにただいまのキスをひとつ。
title/√Aさま
111020
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