「おやすみ」 「……おやすみ」
眠そうな、とろんとした声で返ってきた返事に少し笑いながら彼女……名前の肩まで布団をかけて身体の距離を詰めた。 先程まで情事に耽って、火照った身体を冷やして風邪をひいてしまわないように。
「ん……暑い、」
「風邪引くっての、大人しく被っとけ」
「そうじゃなくて、アルヴィン邪魔……」
「おたく、それ酷くない?」
「寝苦しいんだもん」
ごろんと寝返りを打って背を向けた彼女は掛け布団を抱くようにして本格的に眠ろうとする。これ、俺の分まで布団が足りないんじゃないの?とか思いつつも尚も諦めずまた距離を詰める。
「おやすみって言ったじゃない」
「離れて寝るのって寂しいだろうが」
「そんなことないよ……」
眠そうに彼女は言う。もういつ落ちてもおかしくはない。これ以上構うと名前の機嫌を損ねてしまうだけなので、仕方なくぽんと頭を撫でるように優しく叩いた。うっすらと豆電球しか点いていないのでよく名前の顔は見えなかったが、もう一度小さくおやすみと囁いた。
「ったく、可愛い顔して寝やがって」
つい少し前は俺の下で俺の与える快感に喘いでいたくせに、そんな感じは微塵も感じなかった。不思議なもんだ。あどけない寝顔はあんなに妖艶としたまさに女!という姿ととても似つかない。 そういうギャップに惹かれたのもあるが。
「あーあ」
ごろんと仰向けになり、彼女のための枕にしようと考えていた腕は自分の頭の後ろに預けた。
「でもま、いいか」
枕ひとつぶんの距離は少し物足りないと思ったが、朝方になればまた状況は一変するだろう。気温が一気に下がったとき寒いと言ってくっついてくるのは彼女からだ。今夜もまた同じだろう。 少しだけ深呼吸したあとに目を閉じて、自分もまたすぐに眠りへと落ちた。
冷たい足が自分のそれと絡みあう。ヒヤッとした感覚で少しだけ意識を現実へと戻す。本当に少しだけ。
「アルぅ……」
手探りで俺を探す名前の声。ああ、やっぱりきた。
「んー」
いつの間にか寝返りを打ってこちらに身体を預けてくる彼女に喉の奥から笑いそうになったが、俺はおれで睡魔には勝てない。名前も同じくそうだろう。
「さむい」
その言葉に返事はせず、身体で行動に移す。腕を彼女に回して抱き締める。お互いの体温を分かちあうように。
意外とこの瞬間が好きかもしんない、一番彼女のかわいいところだ。と思う。 眠くて思考があんまりまわっていないが、とにかく、可愛い。うん。
そうわけのわからないまま一人で納得し解決したらまた意識が飛んでしまいそうなくらいの眠気。彼女の頭の天辺に顎を置くようにして本当の意味で眠りについた。
彼女を抱きしめて寝ないと眠った気がしない。
131212
title たしかに恋だった さま
眠くて頭働いてないのは自分……
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