酒には強い方だと思うたぶん。それこそ、アルヴィンとがぶがぶ飲んだり、ミラと飲み比べをしたり……、ローエンと静かに飲んだり、と色んな飲み方をして交流するのが好きなのだ。
記憶が飛ぶくらいに飲むことはなかった、はずなのだが。
「……っ、なんで?」
気が付いたら宿の部屋で。目の前にはーーー
「痛……」
頭が割れるくらい痛い。同時に吐き気を催して、急いで洗面所に向かう。蛇口を捻って、吐いて、顔を洗って意識をはっきりさせる。気持ちが悪い、これが二日酔いというものなのか。
いや、先ずは状況確認。 さっきまで寝てた場所には見覚えのある、どころか旅の仲間も隣にいた。恋人未満友達以上である、アルヴィンだった。
「服、着てなかったよね……?」
ハッとした。今自分が身に付けているのはブカブカすぎるシャツだけ。顔が熱くなる。
まさか、そんなまさか、
いやでも寝ていた彼は上半身しか見てないが裸だった。
パニックに陥って洗面台の前で蹲る。 昨日の記憶を辿ってみても、思い出せない。確か皆で食事して、そのあと飲んで……
「おい、ばたばたうるせえ、って大丈夫か?」
いきなり背後から声かけられてびくっとなる身体。さっきまで眠ってた相手が起きたようだ。 しかも心配されてしまった。蹲っていたからだろうか。
「ア、ルヴィン」
「おはよ。二日酔いか?全く飲みすぎなんだよ。ちょっと待ってろ、水取ってくる」
いつもより低い声。 怒っているわけではないので、寝起き特有のものだろう。アルヴィンがすぐに水を持ってきてくれて快く受けとった。
「ア、アルヴィン?昨日のことなんだけど」
水を一気に飲み少し落ち着いた後、恐る恐る昨夜のことを聞く。ああ、と彼は返事をしてニヤニヤと笑う。 再び顔に熱が集まる。
「〜〜〜〜〜!」
「おたく、ほんっと弄りやすいな。酔っ払いの介抱のお代くらい頂いていいだろうが」
「な、なっ、なんでっうそ、」
「……冗談に決まってるだろが……ほんとにおたくは……」
混乱する私の手からグラスをとって、洗面所を後にする。慌てて追い掛ける。
「アルヴィン、ちょっと待って」
「ほら、水」
「あ、ありがとう、じゃなくて」
「わーってるよ。昨日なにがあったか聞きたいんだろ?」
頭をがしがしと掻き、アルヴィンは話始めた。
昨日は食事のあと、ジュード、エリーゼ、レイアは先に休み、残ったミラ、ローエン、アルヴィン、私と飲んでいた。そこまでは私も思い出してきた。
「可愛い名前とかいいながら、アルコール度数きっついの飲みまくってよ、へべれけ状態だわ俺の服離さねぇわ、仕方ねぇから部屋につれてきたっつの」
呆れ返ったようにアルヴィンは言った。
「部屋つれてけば、暑いとか言っていきなり服を脱がれた俺の気持ちわかる?」
「えっ、そうなの?」
聞けば聞くほど頭痛が酷くなる。ということは今朝の状況は全部自分で引き起こした、ということだ。……流石に嘘はついてないよね。
「慌てて俺がシャツを着せれば満足そうな顔して寝やがって……一応言っとくけど嘘じゃねえからな」
「ううう……ごめんね」
「まあ、役得ってモンだな。さて名前」
「っきゃっ、」
「寝てる女に手を出せるわけじゃないし、今責任とってくれればいいわけよ」
「……はぁ?!」
「横で無防備に寝られて俺がどんだけ辛かったかわかるかよ?」
壁に押し付けられた私の耳元でアルヴィンは熱を帯びたような声色で私に囁く。ぞくり、と不思議な感覚が身体に走る。
「名前」
「ちょっ……っん、」
首筋に舌が這う。
ああ、もう彼を止められない。
「頼むから、おたく、俺の居ないところで飲むなよ」
くらくら、二日酔いか、恥ずかしさかそれとも両方か、目眩がしてぎゅっとこれから予想される行為に目を閉じた。
めまい
130912 裏、かけない、笑
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