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「ゲホ…っ…ゴホッ!」 くそったれ。心中で悪態を吐いても何も変化はない。それどころか心臓は大きく鳴り響くばかりだ。ここが家だったから良かったものの、学校で発作が出ていたらどうなっていた事だろう。テニス部の奴等に知られるのは嫌だ。赤也と雅治にはバレてしまったけど。 「っ…くそっ…ゲホッ!」 薬を何処に置いたっけ。酸欠でくらくらする頭で必死に考えを巡らせる。あぁ、そういえば最近は発作が頻繁に出るから鞄の内ポケットに入れたんだ。ほぼ体を引きずるようにして洗面所から移動する。その間にも肺が大きく伸縮して酸素が上手く取り込めない。喉がひゅーひゅーと音をたてて鳴るのさえ耳障りだ。 「う、あっ……はっ…はっ」 やっとの思いで鞄の内ポケットからカプセル状の薬を取り出すと、口に添えて中に入っている気体状の薬を思い切り吸い込んだ。 涼汰――――… 「っ!?」 振り返っても誰もいない。部屋には俺の荒い息遣いだけが響いている。いるはずがないんだ。だってアイツはもう―――… 曇り空。 「……くそ、」 湿った空気。 「…っ…いやだ」 …ねぇ、涼汰。 「嫌だっ…!」 約束だよ? いつか試合しよう。 「止めろ!!」 バンッ、と俺が薬を壁に向かって投げた音が部屋を支配して響き渡った。嫌だ、嫌だ、嫌だ。何で何で何で。ぐるぐると視界が回って、頭の中がぐちゃぐちゃになる。 なかないで。わらって。ごめんね。ねぇ、涼汰。涼汰ならできるよ。だいじょうぶ。 頭の中で声が鳴る。エコーがかかっていて声が脳内に響き渡る。心臓が有り得ない程に音をたてて鳴っている。息が上手く出来ない。 「…っ…いや…だ…」 (声、静寂、息遣い、無音)(声が出ない)(誰でもいいから)(俺を助けてよ) |
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