青空から始まる恋 | ナノ


01




俺は面倒事が大嫌いだ。


「涼汰先輩、試合して下さいっス」
「嫌だ」

今まで何度申し込まれたのか解らない試合。それと同じ数だけ俺は断ってきた。立海大付属2年生、切原赤也。正直しつこい。部活の最中でも学校内で会った時も毎回同じ事を言われる。移動教室の時も、朝に登校した時も、休憩時間にも。だから俺はその度に逃げる。




「…あの野郎」
「また言われたんか?」

不運じゃな、と面白そうに俺を見る仁王雅治。今は六限目が終わってこれからHRが始まる時間帯で。

「絶対にそんな事思ってねぇだろ…目が笑ってんだよ」
「余程疲れとるんじゃな、お前さんがまともに俺に話し掛けるなんての」
「うっせー…」

たしかに珍しいのかもしれない。俺がまともに人と会話するなんて。あぁ、今から放課後。という事は部活。となると赤也がいる。はぁ、と溜め息を一つ溢すと鞄を持って廊下を歩き始めた。




「涼汰先輩、試合「嫌だ」
「先輩、試「嫌」
「せ「黙れ」

正直うっとおしい。しかもブン太や雅治は完全に面白がってやがる。笑いを堪えてんのバレバレなんだよ。蓮二と柳生はまたか、と呆れた様に苦笑いを溢している。

「大体さ、何で俺な訳?」
「まだ試合した事ないからっスよ」
「はぁ?それならブン太とかだって…」
「もう試合しました!」

ランキング戦で、と嬉しそうに言い切る赤也に呆れた。何故ランキング戦の試合なんかで瞳をキラキラと輝かせる事が出来るのか不思議に思う。

「じゃ、俺との試合もランキング戦だな」

運が良かったら当たるんじゃねぇの、と言葉を残して赤也から逃げた。全く疲れる奴だ。大体ランキング戦っつっても部員は沢山いる。なので俺と赤也が当たるのは無理に等しいだろう。ま、これで最近の悩みが一つ減ったわけだ。




次の日、

「…なぁブン太、雅治」
「なんじゃ?」
「どうしたんだよぃ?」
「…何コレ」
「ランキング戦の対戦表じゃな」
「その通りだぜぃ」

俺の目線の先には、厘財涼汰VS切原赤也の文字。書かれている文字から判断するに、恐らく部長である幸村が書いたに違いないだろう。

「……あのドS魔王」

絶対にわざとだ。絶対に楽しんでやがる。

「涼汰先輩!」

待ってました、と言わんばかりに俺の悩みの種が走って来た。相変わらずのように瞳はキラキラと輝いている。

「やっと試合出来ますよ!」

頼むからそんなに嬉しそうに話さないでくれ。頭が痛くなる。どうして試合くらいで嬉しそうに笑うのか本当に理解出来ない。

「…帰る」
「涼汰、試合するよね?」

後ろから音もなく現れたドS魔王。今回の起因でもあり、我が立海を束ねる部長でもある。多少好奇心が強いと思うのは俺だけなのだろうか。

「…帰らせて下さい」
「ん?」

駄目だ。笑ってるけどその幸村の笑顔が怖ぇ。

「…はぁ」

こうなりゃヤケだ。自暴自棄になってやる。こうして始まったランキング戦。



(馬鹿だな)(まだ試合した事のない人が当たる様になってるのに)(あとはあの二人だけだったからな)(流石参謀じゃの)



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