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避けられている、と俺が気付いたのは井田との出来事があった日の午後練だった。 「…?」 赤也の様子がおかしい。いつも俺が話し掛ければちゃんと笑って答えてくれたのに。今日は体調が悪いのかもしれない、と思っても腑に落ちない。 「赤也、体調悪いのか?」 「あ…いえ、大丈夫っス」 ほら、まただ。俺と目を合わせる事なく赤也は練習に戻って行く。体調が悪い訳ではないらしい。現に赤也はいつも通りにプレーをしている。 次の日も、その次の日も、赤也は俺を避けた。帰りは一緒に帰る。だけど目は勿論合わせてくれない。それに何処か虚ろで考え事をしているみたいだ。何を考えているのかと聞いても何も教えてくれない。最初は心配していたけど次第に何故避けられないといけないのかと疑問が浮上して段々とそれは苛立ちに変わった。言ってくれてもいいじゃないか、と思う反面、赤也が言うまでまてばいい、と考えが入れ替わる。 「…どうすればいいんだよ」 ぼそりと呟いた言葉は夜空に消えた。現在家のベランダに寄りかかり考え事。勿論赤也の事について。 「もう解んねぇーよ…」 どうして避けるのだろうか。聞いても話をはぐらかされる。赤也が言ってくれるまで待とうと思ったけど、俺はそんなに心が広くはない。でも無理矢理に聞いて赤也を傷付けたくない。 「…すき」 ぽつりと呟いた声でさえも夜空に消えた。まるで今の俺の気持ちみたいに。今の声みたいに赤也を好きだという気持ちは消えてしまうのだろうか。 「…」 これ以上考えたくなくて目を閉じた。今日はもう考える事を止めよう。頭がぐちゃぐちゃだ。夜空の風は俺の頬を撫でた。飛行機が飛んでいるのだろうか。空からは飛行音が聞こえる。何も考えないように、と飛行音に耳を傾けた。 「涼汰…朝練に来なかった理由を聞かせてもらおうかな?」 「え、っと…寝坊しました」 「朝からミーティングするって俺は言ったよね?」 「…はい」 「馬鹿だろぃ、涼汰のやつ」 「よりによって寝坊するなんてのぅ…」 「練習、潰れそうですね」 「…午後練が潰れる確率76%」 「現に今で30分以上経ってるしな…」 「…俺が行こう」 「え、真田…?」 「…幸村、練習の時間なんだが」 「真田、今何してるのか解らないの?」 「う…しかしだな…」 「五月蝿いって言ってるんだけど」 「だ、だが練習の時間が…」 この時ばかりは真田が可哀想に思えてしまった。不機嫌な幸村にボロクソ言われている真田。同情するよ、いや俺のせいなんだけど。不意に赤也と目が合った。けど直ぐに反らされる。…正直言えばムカついた。赤也の事で散々悩んで寝坊までしてしまったのに。こんなの、まるで俺だけが好きみたいじゃねぇかよ。 「赤也」 「…涼汰せんぱ「何で避けんの?」 幸村の説教がやっと終わり、午後練もなんとか終わった部室裏。部室に入ろうとした赤也の手を掴んで裏に連れて来た。ブン太達の視線が痛かったけど、赤也に聞く事が優先だった。 「…なぁ」 「そ、それは…」 なかなか口を開こうとしない赤也。俺だって元々気が長い方じゃない。好きな人の為に我慢していたけれど限界だった。 「…赤也」 「…な…か」 「…聞こえねぇんだけど」 「涼汰先輩には関係ないじゃないっスか…!!」 赤也の口から出た言葉は俺を否定する物だった。ぐらりと足場が崩れてく気がする。赤也は何て言った?関係ない?俺達は付き合ってんじゃねぇのかよ。 「…ああ、そーかよ。勝手にしろ!」 気が付けば俺の口からも否定的な言葉が出ていて。部室裏だから中にいる人達に聞こえてるんじゃねぇかって疑問と不安も一瞬で頭から消えた。 (崩れた気がした) (もう解んねぇよ)(何もかも)(落ち着いて考えるなんて)(出来なかった) |
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