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いつもの練習試合の日なら。学校に到着してレギュラーだけのミーティングがあって解散となる。其れがいつものパターン。多分今日もそのパターンは変わらないだろう。 「…赤也、起き、ろ」 「…んー…?」 目は覚ましたが若干寝ぼけている赤也。そんなのを見たら普段の俺は何か言うけれど、今はそんな余裕が全くない。苦しくて仕方がない。整列をして部長の幸村が簡単に挨拶をして、レギュラーはミーティングの為に部室に歩き出す。他の部員達は解散。当然のように俺は部室に行かなくてはならない。 「、っ……、…はっ」 やばい。本気でやばい。心臓が破裂しそうだ。肺だって正常に機能しているのかさえ解らない。喉が潰れてしまったみたいに肺に僅かしか空気が入らない。 「…涼汰先輩…?」 俺の呼吸の変化にいち早く気付いたらしい赤也が不安そうに俺の名前を呼ぶ。けれど其れに答える余裕は全くなくて赤也に返事が出来ない。早くこの場から離れたい、という思いだけが俺の中で強くなる。 「、っ幸村、俺さ、最近、便秘で、トイレ、行ってくる」 ただ言葉を発するのも辛くて途切れ途切れになってしまう。今の俺には咳き込まないようにする事だけで精一杯だ。 「…涼汰?」 流石におかしいと思ったのか、不審そうに幸村が俺を見ている。お願いだから気付かないで。何も知らなくていいんだ。何も知らないで。 「体調管理がなっとらんからだ!」 今では真田に軽口を叩く余裕さえない。もう限界なんだ。早く、俺が倒れる前にこの場から逃げ出したい。 「溜めたら体に毒っスよ!行ってきた方がいいっス!」 発作を知っていて一番に俺の異変に気づいた赤也が助けてくれた。多分赤也も俺が限界だという事にも気付いているのかもしれない。情けないな、俺。後輩にこんなに気を使わせて。 「赤也の言う通りじゃ、涼汰、行ってきんしゃい」 同じく知っている雅治も赤也に賛成してそれに続く。雅治も気づいたに違いない。心の中で感謝の言葉を発しつつも、俺は必死に言葉を紡ぐ。 「先に、ミーティング、始めといて、いい、から」 急ぎ足でその場から、幸村達から逃げるように立ち去る。バレたくないから。知られたくないから。早く、早く、早く。 「当分は帰って来ないだろぃ」 「便秘をバカにするなよ」 ブン太がケタケタと笑って其れを注意するジャッカル。 「涼汰が嘘を「さ、行きましょう、柳先輩!」 涼汰にとって余計な事を言おうとした柳の言葉を赤也が遮って部室へと引っ張って行く。幸村は涼汰が行った方向を何か考えている表情で見つめていた。 ガタンッ、と大きな音が響く。校舎裏の壁に体を打ち付けたから。壁に背中を押し付けて、ズルズルと座り込んだ。 「はっ、はっ…っ…はっ、」 速くなる呼吸。心臓はこれでもか、という程に大きく鳴っている。鞄から荒々しく薬を探し出す。震える手で蓋を取って勢いよく、吸う。 「げほっ、はっ、はっ…はっ、…」 今回は我慢し過ぎたからか知らないが、呼吸の戻りが遅い。くそ、戻れよ、戻れ。早く部室に行かないとみんなに不審がられるじゃないか。 「…はぁ、はぁ…はぁ……は」 段々と薬が浸透している感覚が解る。何で。夢を見たから?昔の懐かしい夢を。あの頃は何も解らなかったんだ。何も知らなかったんだ。何も、何かも。 「はぁ………はぁ…」 ゆっくりに戻る呼吸に比例して眠気が襲う。どさり、と地面に倒れた。座っているのもしんどい程に限界だったから。今寝たらきっと俺は当分は帰れないだろうな、と頭の片隅で思う。でも眠気に支配された頭は其れに従って俺の瞼を下げてしまった。 (最近、発作の回数が増えている)(何かがあるんだ)(そして、)(何かが起こるんだ) |
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