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「お邪魔するぜよ」 「お邪魔しまーす」 「邪魔するぜぃ」 「お邪魔します」 「おう」 赤也が俺が一人暮らしだと雅治達に言ったので今日は遊びに来られました。 「適当にそこら辺座ってー」 適当に告げて俺は台所に入る。数分のコップを用意してお茶を注ぐ。雅治、赤也、ブン太、ジャッカル。最後に俺の分。コップを持って行けば、案の定、現在進行形で部屋が荒らされている。 「……涼汰」 ジャッカルが同情するような瞳で見てくる。同情なんていらねぇから止めてくれよ、と口から言葉を溢せば「あんなの無理だって」と即答された。 そう言われればそうなのだが。散乱する雑誌や本や教科書。引き出しや押し入れの中まで見られている。 「…はぁ」 こうなると思って見られてはいけない物はちゃんと片付けてあるが…酷い有り様だ。まるで空き巣に遭ったような悲惨な現場。 「面白い物が何もないのぅ」 「何を期待してたんだ、お前は」 「プリッ」 どうせエロ本だのAVだの期待していたに違いないだろう。雅治も思春期だな、と心の中で呟くと溜め息を一つ吐いた。 「な、何スか、これ!」 ドタドタと走って来た赤也は手に持っていた紙切れをを俺に差し出した。 「あぁ…今回のテスト」 「あぁ、じゃないっスよ?何スか、この点数!?」 出されたテストには厘財涼汰と名前が書かれていて、97点。教科は英語。 「赤也って英語苦手だっけ?」 「どうやったらこんな点数が取れるのか不思議ですよ!」 他の点数も全部90点以上だったし、と叫ぶ赤也に口に手を添えて黙らせた。テンションが上がるのは構わないのだけれど、此処は他の人も住んでいるマンションで。 「静かにしようか、赤也君?此処、マンションだからな」 手を離せばシュンとした赤也がすみません、と呟く。まるで飼い主に怒られた子犬みたいで可愛かった。 「涼汰って何気に頭いいよな」 「何気に、は余計だ」 「だってそうだろぃ?いつも授業サボってんのに」 「ちゃんと予習とかしてんだよ」 散らかした3人に片付けをさせて俺とジャッカルはお茶を飲む。 「…なんか無駄に体力使った気がする」 「あー…解るぞ、それ」 「何かお茶が上手く感じるなぁ」 「だなぁ…」 「じいさんか、お前等」 「ブン太、片付け終わった?」 「おぅ」 「お疲れー、じゃ、休憩していいよ」 茶菓子を出せば直ぐに輝くブン太の瞳。それから雅治と赤也も片付けが終わったらしいが茶菓子はブン太によってなくなっていた。 「丸井先輩食べ過ぎっスよ!」 俺達のないじゃないですか、と抗議する赤也と、早く終わらせないのが悪いんだよぃ、と自分を正当化するブン太。賑やかすぎて五月蝿い。 「晩飯何がいいー?」 話題を変える事にした。 「作れるのか?」 「一人暮らしをナメんなよ、ブン太」 「じゃ、ケーキがいい」 「馬鹿野郎、晩飯って言っただろうが」 ブン太の馬鹿な提案は無視する。 「和食がいいっス!」 「そうじゃのぅ」 「俺も賛成」 「じゃ、和食な」 「ケーキ」 「却下、多数決で決まったの」 「少数意見を無視するのかよぃ」 「少数ってブン太だけじゃねぇか」 ジャッカルなんて呆れた目でブン太を見ている。何とかしろ、お前の仕事だろ、と目で訴えても無理だ、と返された。 「丸井諦めんしゃい」 「そうっスよ」 「い・や・だ」 「あ゛ー、解ったよ、明日のおやつに作ってやるから和食な」 「ケーキなんて作れるのか?」 「本見て作るから平気」 「やった、流石涼汰」 余程嬉しかったのかブン太が俺に突っ込んで来る。どんだけ甘い物好きなんだよ、と言う暇もなく。 「ちょっ…!」 いきなりの事に対処が取れなくてブン太に床に倒れた。まるで、今の状態は床にブン太が俺を押し倒している様に見える。…男に押し倒されるなんて趣味はないんだけど、と心中で悪態を吐くと言葉を紡いだ。 「…お返し」 俺が上にいるブン太を下に入れ換えれば、俺がブン太を押し倒している様に見える状態。ちらり、と横を見れば赤い顔で口をパクパクさせている赤也がいた。下にいるブン太は余程ケーキが嬉しいらしく現在何をされているのか解っていない。 「いい加減にしんしゃい」 買い物行くんじゃろ、と言われてブン太の上から退いた。 ジャッカルの提案で買い物に行く人を決める為にじゃんけんをすると俺と赤也とジャッカルに決まった。 「言い出しっぺが決まってやんのー」 「五月蝿ぇ、涼汰」 「赤也、見た?ジャッカルが叩いたー」 「そんな事せんと早く行きんしゃい」 「あーい、んじゃ留守番頼んだ」 (さぁ買い物に行こうか)(で、早く帰ろう)(部屋が再び荒らされる前に) |
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