ふと、明け方の寒さで目が覚める。最近では秋が過ぎて一層寒くなってしまった。気温の変化に誘われる様にして、俺が眠りから覚める事も多くなった様に感じられる。窓の外から見える空はまだ薄暗かった。もぞり、と布団の中で身体を少しだけ丸めると、隣で眠っていた春樹が小さく唸る。

「…、ぅー…ぎん…?」
「悪ィ、起こしたか?」

んーん、と舌足らずな否定の言葉を紡ぎながら春樹が目を擦る。普段はツンデレのツンの部分が多いが、不意に現れる彼の子供みたいな面を見ると柄にもなく心臓がきゅんとしてしまう。

「……さむい」

もぞもぞと布団の奥へと潜って行く春樹を自身の方へ引き寄せる。寝惚けている所為か、春樹は抵抗する事なく銀時の腕の中に納まった。

「…銀時の身体、あったかい」

眠たそうに瞳を閉じたまま、幸せそうに春樹は呟いた。温かさを求めて擦り寄る姿はまるで猫みたいだと思った。彼の髪に手を滑らせると、さらさらとそれは指から溢れる。

「……ぎん、」
「んァ?」
「………」

不意に名前を呼ばれて言葉を返してみたものの、彼から返事はない。不思議に思い春樹の顔を覗き込んでみると彼は既に夢の中だった。あどけない寝顔を曝す春樹に、銀時は思わず柔らかい笑みが溢れた。

「…ほんと、猫みてェだな」

普段は無駄に大人びている所為か滅多に甘えては来ない。だが、銀時にしてみれば平生の彼も、現在の子供じみた春樹も愛しかった。少し痩型な身体も、自分と正反対な黒くて真っ直ぐな髪も、俺の名前を呼ぶあの声も、笑う表情も、総べてが愛しい。

「…春樹」

そっと春樹の額に銀時は唇を触れ合わせた。朝にはまだ早い。あと三時間も経てば新八がやって来るだろう、そしていつもの日常が始まる。それまではこの幸せな雰囲気の中で眠っていよう、と銀時は瞼を閉じた。




浅い眠りのなかで深く君を愛した