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氷帝学園テニス部部長の跡部景吾。生徒会長も同時に務める氷帝学園では超有名人です。成績優秀、容姿端麗、才色兼備、有言実行、等々。あ、それと俺様ナルシストです。


「あとべー」
「語尾を伸ばすんじゃねぇよ」

はいはい、と解ったように返事を返しつつも直す気なんて更々ない。だって呼びやすいんだもん。場所は生徒会室。この部屋には俺と跡部の二人きり。

「はい、判子よろしく」

目を通した書類の一部を跡部に手渡す。跡部はそれを見る事なく受けとる。先程からこのやり取りの繰り返し。俺が目を通した書類を跡部に渡してそれを跡部が再確認して判子を押す。いい加減に疲れてきた。

「飽きたー」

俺が机に突っ伏せれば、バサリと書類が音を立てて机の上に広がった。もう飽きたよ。横目で時計を確認すると現在5時47分。生徒会の仕事を始めて1時間と17分経過。

「まだ半分も終わってねぇじゃねぇか」
「…とにかく飽きたー」
「全く…副会長のくせに」

それとこれとは別々でしょうが。確かに生徒会に入って副会長と言う立派な立場を貰ったが、あくまでそれは跡部に近付く為で、実を言えば副会長なんてどうでもいい。ただ跡部と一緒の時間を過ごせるのなら何でもいい。

実際、生徒会長の跡部と副会長の俺以外の生徒会役員は既に下校してしまった。それも俺が言い出したのだけど。後は俺達がやるから帰ってもいいよ、と極上の営業スマイルもセットで。

「あとべー、休憩しよー」
「ったく…春樹は相変わらず仕方ねぇな」
「やったー、流石あとべー」

跡部は呆れているのか知らないが、俺が使う呼び方にはもう何も言わないみたいだ。何だ、つまんないのー。まぁそれは置いといて、俺は奥の給湯室に行って紅茶を入れる。

「いつものでいいよねー?」
「あぁ」

生徒会に入会した最初の頃では生徒会室に給湯室があるなんて驚いたが、今ではもう慣れてしまった。慣れって恐ろしいね、本当に。慣れた手付きでティーカップに紅茶を注ぐ。んー、いい香り。

ちらりと横目で生徒会室にいる跡部を視界に入れれば、当の本人は机に向かって書類に目を通している。全く、真面目なんだから。まぁこの仕事が終わらなければ跡部も俺も部活に出る事が出来ないから跡部が頑張るのも当たり前なんだけど。

スラリとした目、サラサラの髪、妙に色っぽい泣き黒子。男である跡部に可愛いなんて感情を抱いてしまった俺は変態なのだろうか。でも考えたって仕方ない。だって跡部が好きなんだから。

ま、そんな事を思っても当の本人は全く俺なんて眼中になし。悲しい。いや、虚しい。俺はこんなに好きなのに気持ちに気付いてくれる事は恐らくないだろう。でも諦める気なんて更々ない。

出来れば俺だって跡部と恋人同士になりたい。その為にはまずはお互いの距離を縮めなければ。それから告白して、手繋いで、キスして…。ヤバイ。考えるだけで恥ずかしい。

「あっつ!!」
「どうした、春樹!?」
「あ、いや、別に」

跡部を見つめ過ぎて火傷してしました、なんて言えるわけがない。しっかりしろよ、俺。自分に渇を入れると入れたばかりの紅茶を持って跡部の元に足を進める。

「ほい」
「あぁ…すまねぇ」

跡部は俺から紅茶を受け取るとやっと書類から目を離した。本当に跡部は真面目だね。いや、俺が飽き性なだけか。不意に跡部が判を押した書類見ると一つの誤字が俺の目に入った。

「あ、ここ、間違えてる」
「あーん?どこ――」

俺の声に振り返った跡部。俺は跡部の直ぐ後ろから覗き込んでいたので、当然のように跡部と至近距離で見つめ合う事になるわけで…。

ちゅっと軽いリップ音が耳に届いた。

「――…!?」
「な、ななななな!?」

目の前には跡部の綺麗な顔がドアップで広がっていた。キスという物を跡部と俺がしていた。跡部の唇柔らかいなんて思う隙もなく、当然のように俺の顔は真っ赤。




(えーっと、何だったけ?)
(距離を縮めて、告白して、手を繋いで?)
(告白するどころか通り過ごしてしまった)
(どうやら、俺は順番を間違えたようです)