俺が一番好きな食べ物はマシュマロだったりする。食べ過ぎたら気持ち悪くなるんだけど、それでも好きなんだ。マシュマロが。
「はー…らー…へっ…たぁー…」
今にも死にそうな声で空腹を訴えるのは後ろの席の丸井ブン太。当然前の席に座っている俺はにその訴えが聞こえるわけで。またか、と思いつつ後ろを振り返った。
「まだ二時間目だぞ?」
後ろを振り返った先にいるブン太は机に突っ伏せた状態で俺の問いかけに答える。放っていたら机でも食べそうな雰囲気だ。
「真田、が…俺の…お菓子を…」
没収されたのか、と頭の中で勝手に解釈すると溜め息を一つ吐いた。真田君は余計な事をしないでほしい。こうなったブン太に誰が餌をやると思っているんだ。
「あと二時間待ったら昼御飯だから、我慢しろよ」
前を向こうとしたけど、食べ物に飢えた瞳をした丸井ブン太に阻まれた。どうやら腹が減って限界らしい。
「春樹ー…助けてくれよぃ…」
「そんなんだからブン太は仁王よりも体重が重くなるんだよ」
「アイツが細すぎるんだよぃ!」
反論を叫ぶとブン太はパタリと再び机に顔を突っ伏せた。赤い髪の間から呻き声が聞こえる。もう何がしたいんだか解らない。
「駄目だ…大声出したら…余計に…」
多分このまま放置したら先程想像出来たように机にかじりつきそうだ。いや、その前にブン太の腹が盛大に鳴きそうだな。本当に、仕方ない。
「はぁ…ブン太、口開けろ」
俺の声に頭を机から上げたブン太が俺の手にある白い固まりを見た途端、先程までの飢えた瞳が輝いた。もう怖いくらいにギラギラと。
「マシュマロ!」
「やるから、口開けろって――…」
言ってんだろ、と発したかった言葉は俺の口から出る事はなかった。気づいたら俺のマシュマロを持った指先に柔らかい感触があった。
「……、」
余程飢えていたらしいブン太は俺の言葉に従う事はせずにマシュマロに食いついた。先程からの柔らかい感触はブン太の唇が指に触れている感触で。自分でも情けない程に体温が上昇するのが解った。
「春樹!春樹!もっと!」
にこにこと上機嫌な笑顔でマシュマロをねだるブン太に流されてもう一つ袋からマシュマロを取り出した。その途端に先程と同じように指先に柔らかい感触。
「んー…おいひいー」
「ちょっ…くわえたまま喋んなって…!」
ブン太の歯が俺の指先に軽く当たる。それだけでも俺の心臓は有り得ない程に鳴り響いた。何だか俺だけがドキドキしてるのが悔しくてマシュマロを一つ口に含むと勢いよくブン太に口づけた。
「…ん…!」
俺の舌でブン太の口の中にマシュマロを押し込むと唇を離した。当然ブン太の顔は真っ赤で、俺の顔も負けてないくらい真っ赤だった。
「…ざまぁみろ、バーカ」
マシュマロ
(白い固まりと真っ赤な顔の俺達)
「…教室で何やっとるんぜよ」